6月11日の引けの金は大きく売られる結果になりました。
金が大きく動く中、株式や為替は動かなくなっています。
今回は、なぜそうなっているのかの解説です。
金などの価格構成要因を確認
金の価格構成要因は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)
であり、株価も同様に、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP
で動いています。
それに加えて為替も同じです。
ドル円であれば計算式は「ドル÷円」であり、ドルの価格構成要因は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP
円の場合は、
【1】円
【2】金利
【3】GDP
になります。
金や株は【1】ドルと【2】金利と【3】GDPが相反した動きになっているのですが、為替はドル円ならば「ドル÷円」の計算式によって構成されているため、動きやすくなっているのです。
現状の【1】ドルと【2】金利と【3】GDPがどうなっているのか見ていけば、動かなくなっている理由がわかるでしょう。
ドルの動き
まずはドルの動きを見てみましょう。
ここ最近は、ずっと安値低迷の動きになります。
2021年の年初に安値を打ってから、途中3月に高くなりましたが、5〜6月には再び年初の安値に面を合わせる形です。
ところが、6月11日には1日で0.5%も上昇してしまい、ここ最近では一番大きな動きになりました。
金利の動き
金利は2020年の8月に底を打ってから4月まで上昇し、5〜6月は高値保合いでした。
ところが、6月10日の米国消費者物価指数を境に急落しています。
GDPの状況
GDPは、アメリカが2021年1〜3月期の発表が4月末からスタートし、5月末の修正値、そして6月末の確定値を待つ段階になっています。
4月末の速報値から確定値まで、大きく動くことはないという予測が支配的です。
日本は2021月1〜3月の発表が5月中旬にあり、6月8日の2次発表でGDPが確定しています。
すなわち、日米ともに1〜3月期のGDPは大きくは動かないことになります。
価格構成要因を総合的に見ると…
【3】GDPはもう動きようがありませんが、【1】ドルと【2】金利が大きく動こうとしているのがわかります。
ドルがだんだんと底を打って、金利は去年の8月に底を打ち、米消費者物価指数を境に下落に転じ、頭を打ったのかもしれないという動きです。
ドルの上昇とは、お金の価値の上昇と一致します。
今まで金融緩和によって下がっていた通貨の価値が上昇していけば、金や株式の価値は下がります。
ところが金利は安くなっているので金の価値は上昇、株の価値はコストの低下になるので上昇ということになります。
ドルの価値の上昇によって株価や金の価値は下落しますが、反対に金利の下落は株や金の価値の上昇になり、相反する材料が相対しているので価格がそれほど動かないのです。
インフレ懸念の影響
6月10日に発表された米消費者物価指数を以下に貼り付けます。
年間で物価がいくら上がったか、前月比でいくら上がったかという数字ではなく、価格インデックスというものです。
普段目にする前年比や前月比の数字は、この価格インデックスをもとに出されています。
明らかに物価は上昇しており、特に今年4月と5月の伸びはすごいです。
これをFRB(連邦準備制度理事会)や世界の中銀は、「インフレ懸念」と呼んでいます。
物価の上昇は、私たちの生活コストの上昇を意味しますが、企業にとってもコストの上昇を意味します。
株価は通常、金利が下がればコストの低下を意味しますが、これは借入金に対してのコストが下がる意味です。
物価の上昇は、お客さんにモノやサービスの提供をするコストが上昇することを意味します。
通常は、金利の下落は物価の下落を指すことになりますが、今回の場合、物価は上昇し、金利は低下とわけのわからない現象が起こっているのです。
現状の企業はどうなっているのかといえば、コロナショックによって借入のコストは限りなくゼロになってきました。
なぜならゼロ金利なのですから。
ですから、今さら市場金利が下がっても、借入コストが下がることはありません。
一方で物価は上昇しているのですから、コストは上昇しているのです。
おまけにドルは底を打って、上昇に転じているので株価にとってはマイナス要因です。
株価に起こっている矛盾した現象
こうやって考えていくと、ドルの上昇によって株価は下がりますが、金利の低下によるコスト低減は株価の上昇要因になります。
しかし、実際は物価の上昇によってコストは上昇しているのです。
ドルが下げ要因で金利低下が上昇要因ですから、株価が動かないのは当然です。
これがマーケットの見方です。
しかし、実際は物価の上昇によってもっと株価は下がらなくてはいけないのですが、【1】ドル、【2】金利、【3】GDPによって動いているので、金利が下がっているのだから株価の上昇要因、ドルと相殺して動かないとやっているのです。
この価格構成要因に注目してしまうと、株価は動かないことになりますが、これはマーケットの間違いになります。
物価の上昇は賃金の上昇にもつながり、企業は今まで以上に負担増になるのです。
これで株価が上がるわけがないのに、横ばいという矛盾した現象が起こっているのです。
金の価格構成要因は今や!?
株式の場合は【2】金利だけを見て動いていますが、金の市場は場合は物価も見ています。
なぜなら、金はインフレに強いと昔から言われており、インフレとは金利ではなく物価を指しているのですから、多くのトレーダーが注目しているのです。
株式の場合は、従前なら【2】金利しか見ていなくても対応ができました。
つまり、金利と物価はイコールの関係と見ているので、金利を見ておけば物価もわかるとやっているのでが、これは上記の説明で間違いだとわかります。
つまり金の場合、より正確に価格構成要因を言うと、
【1】ドル
【2】物価
【3】GDP
になっているのです。
金価格と株価についての考察
ドルの上昇は金の下落要因、物価の上昇も下落要因、そしてGDPは動かずですから、計算式にすれば「(-1)+(-1)+0=-2」であり、6月11日の金は急落したのです。
この下落は穏当ですが、怖いのは株価です。
なぜなら金利の市場価格が間違っているのですから、金利が下がっているから企業のコスト減という考え方は間違いですよね。
物価が上昇すれば企業のコストは増えます。
これを避けるのには、この物価コストを価格に転嫁することですが、雇用も大してよくない現状、すぐには物価上昇分を価格には転嫁できないでしょう。
となると株価はどうなるのでしょうか?
この記事のまとめ
今回の記事では、金相場が大きく下落したのに対し、株価や為替が動かなくなっている理由は、金の場合は金利ではなく物価を【2】の価格構成要因として見ており、【1】ドルの上昇、【2】物価の上昇、【3】GDPはママで【1】と【2】がともに下落要因となったから。
株価の場合は、通常のまま【1】ドル上昇、【2】金利下落、【3】GDPはママと見ているため、【1】の下落要因と【2】の上昇要因が拮抗していて相場が動かないということ。
しかし、この【2】金利を株価の上昇要因と捉えるのは誤り。
ゼロ金利でこれ以上に借入金利が下がることはなく、物価が上昇しているのでコスト増であり、ともに企業にとってマイナス要因。
本来であれば、株価は横ばいではなく、下がると考えるのが当然のところ。
であれば、株価はどこかでストンと下がるだろう。
こういう内容の記事でした。
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