東京オリンピックが盛り上がりを見せる裏で、新型コロナの感染者が激増しました。
一方で、金価格が下がると言いつつも、少しも下がらない状況が続いています。
今回は金の価格構成要因のうち、ドルが急騰する可能性について説明します。
ドルが強くなる背景とユーロの緩和量
今年の年初からドルが強くなると予測していますが、年初、前年比7%のドル安だったのが、現在は年も後半にもなるのにいまだに前年比-3%という状況です。
2月から3月にかけてドル高になりましたが4〜5月はドル安、6月から再び上昇し7月は停滞気味という状況になります。
ドルが強くならない一因にユーロがありましたが、今回はそのユーロの状況が変化しているという説明をしてまいります。
ユーロの緩和量は以下のECB(ヨーロッパ中央銀行)のバランスシートのとおりです。
6月末から緩和を増やしており、これだとユーロの絶対値の価格は下がることになります。
なぜなら、ECBのバランスシート量を増やすことは、結果としておカネの量を増やすことになり、需給で供給過多になるから価格は下がります。
しかし、ユーロドルは7月に入り多少下がりましたが、まだまだ高い水準です。
なぜかと言えば、アメリカの緩和量を表すFRB(連邦準備理事会)のバランスシートを見ればわかります。
ユーロが緩和量を増やしていてもFRBもドルの緩和量を増やしているから、ユーロドルのレート(計算式はユーロ÷ドル)が動かないということになるのです。
実際には、ユーロの緩和量(黒い点折れ線)とドルの緩和量(青い棒線)を比較したグラフをご覧ください。
一見ユーロの緩和量が多いように感じられるでしょうが、ドルが右軸、ユーロが左軸にとっているので、ユーロの方が多く見えるだけです。
しかも通貨単位はドルとユーロですから一概には比較できません。
その増え方はドルとユーロがほぼ一緒という状態ですので、ユーロドル相場は動かないのです。
ユーロの緩和量の変化
その変化が7月22日のECB理事会、戦略点検会議で示されました。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-07-22/QWNANZDWX2PS01
引用元:ブルームバーグ
内容は難しく、なかなか理解はできないと思いますが、「インフレ目標を2%弱から2%に引き上げた」というところに注目してください。
なぜ2%超にすることが問題なのでしょうか。
政府が物価を統制するためには、配給制や供給制限が考えられますが、自由主義を標榜するヨーロッパでそのようなことは無理です。
ですから物価、すなわちモノの値段を調整する手段を考えるのです。
各国の中央銀行が行える政策は、金利の調整とおカネの流通のコントロールの2つだけになります。
物価上昇の目標を上げるということは、誘導目標金利の利上げかお金の供給量を増やすことです。
誘導目標金利の上げはマイナス金利、ゼロ金利で企業活動が活発になってきた現状では考えることができません。
今、金利を上げれば借金をするのにコストが上がり、せっかくコロナ禍から回復してきた経済にはマイナスです。
ゆえに、お金の流通量を増やすことに選択肢は絞られます。
ユーロの流通量を増やすとは?
ユーロの流通量を増やすと、ユーロの価値を下げることになります。
通貨安では、日本でも円安になれば輸入物価が上昇するように、ユーロ安は物価を上昇させるのです。
この物価上昇誘導目標の変更をつきつめて考えていくと、ユーロの緩和量を増やすと言っているのに等しいのです。
ドルの状況は以前から説明をしているように、今後テーパリングを討議していくことが6月のFOMC(連邦公開市場委員会)の議事録で判明しています。
テーパリングを行えば、上記のFRBのバランスシートの量が近い将来減ることを意味しているのです。
ユーロとドルを計算式で見てみると…
ユーロはECB理事会後の7月26日の週から緩和量を増やしていると考えられます。
一方でドルは近い将来に緩和量を減らします。
計算式で見てみましょう。
ユーロドルの計算式は、ユーロの価値が10から8になるとし、ドルは10から12になると考えます。
ユーロ10÷ドル10=1
これが現状だと考えると今後は以下のようになります。
ユーロ8÷ドル12=0.666…
となると、ユーロドルは1から0.6666になるので、レートは今後下がることになります。
この記事のまとめ
今回の記事では、ユーロは緩和量を増やし、一方でドルは減らす。
ユーロドルは全通貨の取り引きの40%以上を示しているので、その影響は甚大であり、強烈なドル高へ。
ドル高は金のネガティブな価格構成になるので、今後ドル高が進行すると金は下がる可能性が高くなる!
こういう内容の記事でした。
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