前回は、岸田文雄新総理が訴える「新しい資本主義」は根本的に誤っていることを説明しました。
今回は、なんだかんだで成長を続ける中国を引き合いに出し、今の日本が学ぶべき点について残り二回に亘って解説します。
中国は世界の嫌われ者?
最近、日米をはじめ世界各国で、中国に対する嫌悪感が増しています。
それは、尖閣諸島などで武力を用いて領土の拡張を主張していることから始まっているようです。
そして、最近では共産党への批判は絶対禁止、香港やウイグル、チベット、モンゴルなどでの人権侵害も、嫌悪感をさらに増幅させています。
しかし、肝心の中国人は表立って政権転覆の行動を起こしてはいません。
もちろん、毎日のように共産党に対するデモなどは起こってはいるでしょう。
それがこのような状況なら、拡大して共産党でも収集がつかないような状態になってもおかしくないはずです。
歴史上の革命や政権交代は…
歴史上の革命や政権交代は、たいてい庶民が食えないことから始まっています。
中国の都市部は裕福になりましたが、農村部はいまだに年収100万円以下が当たり前で、ある意味、日本やアメリカ以上に格差は広がっています。
共産党幹部に至っては、欧米人の大金持ちなど比べ物にならないくらいに豪奢な生活を送っています。
それで庶民が食えなければ、フランス革命のような事態が起こってもおかしくはありません。
国家がデモを厳しく規制するのは、拡大すれば政権の転覆につながるからです。
フランス革命も王制に不満であったのではなく、前年に起こった飢饉や財政がひっ迫して年金システムがほぼ崩壊したことから起こりました。
アラブの春にしても、絶対権力に対する反抗というより、庶民が食えないことに対して抗議を起こした結果、政権交代が起こったのです。
言論の自由も行動の自由もない国なのに…
今の中国人の生活をよく考えてください。
まず、自分の意見を自由に表明することはできません。
そして、移動の自由もありません。
新型コロナでの隔離命令に逆らった市民が警官にボコボコにされる映像などを皆さんもご覧になっているでしょう。
加えて、報道の自由もありません。
日本人なら、こんなところで生活したいとは思わないでしょう。
こういう政権であれば、コロナ禍のような状況下で厳しく言動や行動の自由が制限された際には、必ず暴動などが起こり、政権転覆の危機が訪れるものです。
しかし、それが起こらないのはなぜか?
共産党がそれを抑え込んでいるからかと言えば実は違います。
30年近く続く中国の高度経済成長
日本の高度経済成長は10年程度で終わりましたが、中国の高度成長は1990年代から30年近く続いています。
つまり行動や言論に制限があっても、生活水準がよくなっているから人民が我慢できるのです。
2000年以前は世界でも貧乏国のレベルにあった中国が、今や世界2位の経済大国です。
これは、鄧小平が改革開放を強く主張したことに起因します。
鄧小平から後継者に指名された江沢民、そして胡錦涛もその教えを守りました。
鄧小平が目指した目標は、2000年までに1970年代よりも経済成長を4倍にするというものでした。
その集大成が2002年の北京オリンピックであり、開会式で堂々と「中国は世界の中心だ」と当時の胡錦涛主席が演説したのです。
改革を見張る長老たちの目
その鄧小平の息がかかっていない初の指導者が現在の習近平主席です。
彼が鄧小平に代わり、次世代の中国の方針を確立していくということで、3期15年の任期を務めることになりました。
それを推進しているのが鄧小平の薫陶を受けた、現在90歳代中盤の江沢民です。
中国の政治ではこういった長老たちが大きな影響力を持っており、古くは鄧小平でも毛沢東に逆らい、3回失脚しています。
つまり引退した江沢民や胡錦涛の意向に沿わない主席は、いくらでも首を挿げ替えるとやっているのです。
鄧小平の死後も改革開放を突っ走った江沢民指導部
有名な鄧小平の南巡講話にしても、本当は当時の指導者である江沢民に対する鄧小平の恣意行為なのです。
当時の中国は、1991年にものすごいインフレが起こり、調整政策を行わざるを得ませんでした。
しかし鄧小平は、いつまでもチンタラと経済を成長させない江沢民に、「改革開放をやらなければお前はクビ」とやったのです。
過去の華国鋒や胡耀邦、趙紫陽といった指導者といった、鄧小平にクビにされた主席を見ていた江沢民が、鄧小平の南巡講話の話を聞いて焦ったのは無理もありません。
実際には会議に江沢民を呼びつけ、ライバルだった軍のトップを同席させ、言うことを聞かなければ軍隊で江沢民を排除すると脅し、改革開放路線の再開を動意させました。
その結果、江沢民指導部は1997年に鄧小平が死去しても、改革開放路線を突っ走ったのです。
翻って日本は何をやっているのか!
中国は、世界的な不景気があっても2〜3年で調整経済を終わらせ、改革開放路線を突っ走りました。
かたや日本は、1992年に株価の暴落があってから、いまだに経済成長ではなく、とにかく補助金や税制優遇ばかりとムダなことばかりやっています。
不採算部門を哀れんで、血税を今でも突っ込みまくっているのです
今や2021年、つまり30年近くたっても、調整経済政策をやっている。。。
そしてそれらを主導している政治家を自分たちが選んでいる。
わずかに安倍政権は改革路線に移行しようとしましたが、成長戦略を示すことができないままに本人が病気になって瓦解しました。
そして岸田新首相は、前回のコラムでその問題点を指摘した通り、財源を増やすことを考えずに、配分先を変える「新しい資本主義」を主張しているのです。
これは正直言って大馬鹿野郎としか言えません。
日本が10年程度しか高度成長が続けられなかったのに、中国は1970年代の毛沢東の死後から今に至るまで50年近くも改革開放を行っています。
そして、1980年代から5%以上の成長が持続しているのです。
まさにこれこそが日本が中国に抜かれる原因と言えるでしょう。
この記事のまとめ
今回の記事では、貧富の差が大きく、自由もなく、人権侵害も甚だしく、武力で地域の安定を阻害する世界の嫌われ者国家なのに、国内で政権転覆を図るような暴動が起こらないのは、中国が30年の長きにわたり経済成長を続けているから。
世界的な不景気があっても、2〜3年で調整経済を終わらせて改革開放路線を突っ走り続ける中国。
反対に、1992年のバブル崩壊以来30年、調整経済政策に終止する日本。
岸田新首相は「新しい資本主義」などという再配分政策は行わずに、しっかりと財源を増やし、安倍政権が志半ばで果たすことができなかった改革路線に舵を切るべし!
全三回の二回目!
今だ金の価格変動要因等は一切無し!
こういう内容の記事でした。
※今回は三話完結です。
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