石油の次は食料!? インフレ進行はまだまだ続く

FRB(連邦準備理事会)のパウエル議長が「インフレ懸念は短期で収束する見込みが少なくなり、長期化する可能性が高い」とハト派からタカ派へ転じました。

中には、バイデン政権の中間選挙への配慮から無理にインフレ懸念があるという意見もあります。

今回はこのインフレ懸念が本物かどうかについて解説し、最後に最近の金の傾向に関して記します。

物価を左右するエネルギー価格の推移

下記のグラフは、NY市場のWTI価格(原油価格)の推移です。

参照元:TRADING ECONOMICS

ご覧のように、バイデン大統領が音頭を取った世界協調でSPR(戦略備蓄)を放出したことから価格は急落しています。

しかし、実は石油価格は需給ではなく、金のようにドルや金利によって決定されているのが現状です。

例えば、世界中のタンカーの航行状況や在庫状況を詳細に分析しても、価格はあさっての方向に行ってしまうものです。

つまりバイデン大統領が国際協調によって価格を押し下げたといっても、実は本当の原因に対処したわけではなく、あさっての方向を向いた対策にすぎません。

なぜなら、原油価格は主にドルによって決定し、付随としてそのほかのエネルギー、石炭や天然ガス価格との関係性から決まってくるからです。

原油下落の理由はSPR放出ではなく「たまたま」

確かにエネルギー価格は下がったが…

金価格の場合、ドル、金利、GDP(国内総生産)の3要素で決定しますが、原油価格の場合は主にドルによって決定します。

「価格は需給がすべて優先する」という株式市場の格言がありますが、コモディティ市場の場合、ほとんどがドルによって決まるのです。

これは銀やパラジウム、白金も同じです。

ですから、基本的に金や石油の需給は価格に影響を与えることはないのに、バイデン大統領は伝家の宝刀として「SPRの放出」を行いました。

その結果、石油価格は「たまたま」下がったのです。

金や石油の需給をいくら分析しても、世界にどのくらいあるかは誰にもわかりません。

金は有史以来その存在が確認されており、掘り出された量は代々木のオリンピックプール2杯分なんて説は、どこにも根拠がないのです。

つまり原油価格が下がったのはバイデン大統領の国際協調ではなく、単なる偶然によってです。

しかし、政治的には原油の価格が危機的になった場合、SPRの取り崩しによる価格低下という前例ができたので、今後も活用をされていく可能性が高いでしょう。

ただし、柳の下に二匹目のどじょうはいない可能性の方が高いです。

忍びよる次なるインフレの波

青々と茂った大豆畑

実は、インフレの原因が石油価格の高騰だけではないことをお伝えします。

「天高く馬肥ゆる秋かな」というのは有名な句は、皆さんもご存知でしょう。

「秋は空が高く晴れており、馬も食べ物がおいしく肥える季節」という意味になります。

穀物の収穫を迎える秋は、北半球では1年を通して最も食物の価格が下がる時期になるのです。

これは大豆などの穀類だけではなく、牛肉や魚介などのたんぱく質の価格も秋が一番安いのです。

これは、牛豚の餌であるコーンなどの飼料用穀物の価格が下がるからであり、魚介は季節の変化に伴い大きく移動すること、産卵の時期が済み大量に回遊をしていることなどが理由として挙げられます。

秋がお腹が減るから食欲の秋ではなく、安くておいしいものが出回るから食欲の秋なのです。

エネルギーの次は穀物価格が上昇!

穀物価格の代表例として、シカゴ大豆価格の過去5年間の推移を見てみましょう。

参照元:TRADING ECONOMICS

実は、コロナショックで世界の需要が低下したときから大豆などの穀物相場の値段は上昇しました。

そこで今年のハーベストプレッシャーで値段が下がってきていますが、11月の感謝祭を前後にまた価格が急騰しています。

コロナがあっても人々の食欲が旺盛だった事実が判明したので、ハーベストプレッシャーで価格が急落しても、今後は来年の秋まで在庫は減っていく一方になり、また価格は上昇するでしょう。

もちろん、南半球ではブラジルなどの南米も穀物の主要供給国ですが、それも来年の春から夏にかけての供給になるので、そこまで在庫が減る見通しです。

つまり今後、穀物などの食料の在庫は減る一方で、早くても来年の供給があるのは春のことだということです。

この間、また穀物やそのほかの食料の争奪戦が始まる段階になります。

つまりエネルギー価格は下がりましたが、今度は食料価格が上昇する可能性が高いのです。

世界人口と食物供給の関係から…

人の食料のほか、飼料やエネルギーとしても使われるトウモロコシ

そこにバイデン大統領がクリーンエネルギーと言っていますが、オバマ政権時、このクリーンエネルギーの影響でコーンや砂糖価格が急騰しました。

つまり、穀物由来の油を自動車などのエネルギーにしようという試みです。

また自動車はEV(電気自動車)にシフトするとしても、火力発電の熱源が大豆油やコーン油になってもおかしくないでしょう。

オバマ政権の2008年から2016年の間、テスラが巨大企業に成長しましたが、10年たっても電気自動車が大きく普及した状態とは言い難い状況です。

電気自動車はインフラの整備が大変であり、その普及はなかなか進行しないでしょう。

そしてコロナだろうが不況だろうが人間の食欲が衰えない事実が上記のグラフで証明されました。

その人間の人口は今も拡大中です。

食べる人が増えて供給が絞られれば、価格は自動的に上昇します。

結局、エネルギー価格が落ち着いても食料価格が高騰する可能性を指摘しておきます。

「良いインフレ」と「悪いインフレ」の違いと金価格

「インフレに強い金」という格言があります。

今回のインフレで金が上昇すると思う方も多いでしょう。

インフレの際に金の価格が上がるのは、それは良いインフレの場合です。

良いインフレというのは、物価上昇に伴い景気も上昇してくることです。

結果として値段が上がってしまうので、人々は早くモノを買おうとして国の成長力も上がるという局面では金は絶大な力を発揮します。

金の価格構成要素は、

【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)

この説明で価格変動要因の金利とGDPが上昇し、ドルが下がるということを意味します。

金利の上昇は金価格にとってはネガティブですが、GDPとドルはポジティブな内容になります。

金の価格構成要素の現状は?

「インフレに強い金」にはならなそうな兆候ばかり…

今回の場合、現状は金利は高くなり、ドルも高くなり、GDPは低くなる見込みですから、金にとってはネガティブな価格になる可能性があります。

逆に悪いインフレというのは価格が上昇しますが、その購買意欲は価格の高騰によって減退していく、結果としてGDPが悪くなることを指します。

この場合の価格構成要因は、物価がプラスなので金利は高くなり、モノが売れないのでGDPは低くなります。

ドルは、インフレなので下がります。

この状態ではどっちつかずの状態に価格はなり、悪いインフレというのは、金にとっては強くないインフレということになるのです。

現在の状況は、ドル高、金利高、GDP安ですので、この要因はすべて金にとってネガティブになります。

金価格週足のテクニカル分析

上記の結果、ドル建て金価格の週間足チャートは以下のようになっています。

短期線10-15、30-35がデッドクロスをしています。

これは、4時間足や日足ではなく週間足ということを注意してください。

週間足といことは、日足や4時間足よりもより長期的な見通しが売りになったことを意味します。

ただ、100-150の足が上向きになっていますので、現在、そこで抵抗している状態です。

しばらくはこのままの状態になる可能性が強いのですが、長い期間にわたって週間足は買いになっていましたが、ここで売り転換したということは非常に重要な意味を持っています。

この記事のまとめ

今回の記事では、エネルギー価格は主にドルによって左右されているので、バイデン大統領が音頭を取ったSPR放出後に価格が下がったのは、「たまたま」に過ぎないことを確認。

そして、続いて食物価格に高騰の兆しが見えているように、次なるインフレの波が忍び寄っているのが現状。

「インフレに強い金」などと言うが、このインフレは悪いインフレに当たるので金価格にはネガティブにしか働かないだろう。

しかも4時間足や日足よりも長期的な週足チャートには、金下落の兆候あり!

こういう内容の記事でした。


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