金貨投資はアリ、それともナシ？

読者の方からお問い合わせがありました、「金貨は有利なのか？」と。

今回は、この金貨投資について解説していきます。

昭和天皇在位60周年記念金貨ブーム

中高年以上の読者の方は、昭和天皇在位60周年記念金貨が一大ブームになったことをご存知でしょう。

この記念金貨は、1986年から1987年にかけて発売され、総販売枚数は過去最大となりました。

当時はバブル経済が崩壊し、政府の税収が大きく減少した時期でもあり、当時の大蔵省が税収以外からの収入を探していた時にヒット商品となったのです。

これを立案したのは、当時は大蔵省理財局の企画課長だった榊原英資氏。

直径20センチくらいのコインですが、製造原価は当時の金価格に換算すると約4万3000円です。

金貨の額面は10万円なので、大蔵省は1枚販売するごとに5万7000円の利益を得ることができた計算になります。

これによって榊原氏は大蔵省で頭角を現し、のちに財務官にまで登りつめ、その大胆な円売り介入によって「ミスター円」と呼ばれるようになりました。

10万円金貨の価値

1980年代前半の金価格は、グラム1000円を割るような価格でした。

その後、金価格は上昇し、1986年当時には10万円の額面に対して4万円の価値しかつかなかったので、この記念金貨を硬貨として使う方が価値が高まったのです。

ところが1990年代以降に金価格が高騰し、この10万円という額面以上の価値が昭和天皇在位60周年記念金貨にあるようになりました。

人々はこの金貨をこぞって額面で購入し、転売するというブームが起こったのです。

記念金貨偽造事件

これが最も明快なブームの理由なのですが、実は違います。

まず、お金の偽造は重罪です。

しかし硬貨に関しては、お札と比較すれば偽造が容易なのが実際です。

額面10万円の昭和天皇在位60周年金貨の偽造も、実は容易でした。

犯人グループが賢かったのは、偽造10万円記念金貨の金の量を本物そっくり同じにした点にあります。

つまり偽造グループも、偽造金貨で約6万円の差益を得ることができたのです。

結局、偽造金貨は8万5000枚も見つかりました。

この年の日銀の決算では実に68億円もの損失をこの偽造金貨によって計上しなければいけない事態に陥りました。

これはおそらく日本銀行始まって以来の特大な損失だったのです。

金価格が金貨の額面を上回れば偽造は多発する!?

額面より安い価値の記念硬化は、日本でも世界でも発売されることはまずありません。

つまり1万円のコインでも、価値が5万円くらいの純金を含めて製造されており、額面も大きな金額の金貨は発行されにくいということになります。

もし日本のように、金の価格が金貨の価値を上回った場合、偽造が多発することが考えられます。

その際の真贋の判定は困難を極め、結果として換金の要請があった場合、銀行は即時交換が鉄則ですので、この交換要請を断ることができません。

つまり偽造を現場レベルで見抜くのはほぼ不可能で、額面が大きくなればなるほど被害は拡大するということです。

金貨投資は有用か否か？

金の地金投資と同じことで、金貨の価値が実際の金価格よりも安くなれば換金方法が広がるというだけの話です。

金の価格動向から、その金貨に含まれる9999の金がいくらあるかの判定、そのほか販売手数料や売却手数料などを勘案すると、あまりメリットは少ないように思えます。

ただしデザイン性で優れていると感じるものを買っておけば、あなたの価値感が正しければプレミアムがついて売却される可能性があるでしょう。

ただ小さい資産として持ち運びの面をみても、この金投資は有効のように思います。

反対にいえば、金の価格がこれからも上昇するというのが前提条件ですが。

この記事のまとめ

今回の記事では、まず金貨は紙幣に比べて偽造が容易で、金価格が金貨の額面を上回れば偽造は多発する可能性があることを確認。

金貨次第では後々プレミアがつく可能性もあるが、金貨を金として売る場合、金含有量の判定や売買手数料などを考慮するとメリットは少ない場合も。

ともかく、金の価格が今後も上昇することが金貨保有を有利にする前提条件になる。

こういう内容の記事でした。