ドル高で金マーケットが押し目を形成すると以前記しました。今回は、その押し目が完了する可能性について言及していきます。
金の価格構成要因
金の価格構成要因は、
【1】ドル、人民元
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)
です。
今回は、このドルと人民元と金価格の関係性を復習していきましょう。
ドルと金価格の関係
以下はドルと金価格の関係を表したグラフです。
ドルが上昇すれば金価格は下がり、ドルが下落すれば金価格は上昇しています。
現在はドルが上昇しているので、緑の金は下がっています。
人民元と金価格の関係
人民元高では金の価格が上昇する、逆なら金安といっています。
以下のグラフで表した人民元と金価格の関係は、青で記したドル人民元レートが上に行くほど金安です。
現在は青の人民元が上がっているので人民元安になります。
人民元安ゆえに金安の状態です。
ドルの反転の可能性が出てきた!
ドルインデックスを青線、ドル円をオレンジ線、ドル人民元を緑線で表した以下のグラフをご覧ください。
ドルインデックスが異常に高いのはおわかりになるでしょう。
ドル高であれば相対的にアジア通貨の代表格である円と元は安くなっている構造を理解してください。
今回のドル円の円安は、結局ドル高に起因したものです。
人民元安も同様にドル高に起因したものになります。
ドルが転換する可能性があるのは何度も申し上げた通りです。
FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長自らが「雇用市場は過熱している」と明言しているように、雇用とドルはリンクしているので、雇用の過熱を解消するということは、ドルの低下につながります。
問題は、その時期です。
ドルと連動している米雇用はどうなるのか?
下記は5月6日に発表された雇用統計、非農業部門の新規雇用者数の推移です。
今月は先月と変わらずで、この結果はドルの横ばいを示しています。
しかしこの雇用統計には、グラフを平準化するための雇用人数の季節調整が行われています。
その雇用の実数は以下のとおりです。
これはアメリカにおける雇用総人数ですが、4月は3月と比較して雇用が減っています。
つまり、雇用統計は新規雇用人数が増えていますが、実際の雇用者数は減っているということを示しています。
この差が何からできたのかを考えると、新規雇用者数よりも失業者の方が多かったということです。
具体的には42万8000人の新規雇用以上に失業した人が多かったから雇用総数は減ったということです。
この結果を見れば、雇用市場はピークを迎えた可能性があるということになります。
これがドル、雇用の現状で強気から弱気に変化した可能性があります。
ドル価格の構成要素である金利の動きを見ると…
一方で、ドルの実質価格は「ドル×金利」によって計算されます。
その実質価格を形成するのが金利です。
その金利は住宅金利にリンクしています。
下記のグラフは、青棒線が住宅ローン金利、黒点線が10年国債利回りになります。
見事に、住宅金利ローンと10年債国債利回りがリンクしていることがおわかりでしょう。
直近は以下のとおりです。
5月4日に政策金利が0.5ポイント引き上げられましたが、金利が引き上げられるとわかっていても、その5月4日の住宅金利ローンは先週よりも若干安い状況です。
住宅ローン金利は日本の住宅ローン金利と同様、政策金利にリンクします。
利上げされるとわかっていても住宅ローン金利が上昇しないのは異様なことです。
ここからわかることは、ドルは雇用の悪化、そしてドル実質価格の計算式「ドル×金利」双方とも下がる可能性があるということです。
このドルが転換するということは、相対的に円高、人民元高になるということを意味します。
ドル安に転じた場合の金価格は?
今までは、元高で金はもう少し新高値を取るような動きをドル高が阻害していました。
今回は、ドル安というポジティブな材料のほかに元高も加わります。
この場合、今年に入っての緩慢な上げ以上の上げになることがおわかりでしょう。
円建ての場合は円高なので、金の価格は下がりますが、それ以上にドル建て金が上がる可能性があります。
ドル建て金が上昇すれば、円高でも長期的にはドル建ての金価格に円価格も追いついてくるということです。
つまり円建ての金も自分が思うよりもゆっくりと買い進めればよい、ということになります。
この記事のまとめ
今回の記事では、ドルの強弱に連動しているアメリカの雇用状況がピークを迎えたと見受けられることから、これが減少に転じてドルも安い方法へ。
一方でドルの実質価格を左右する米金利も下げの徴候が見られることも、ドル高ヘと転じたことを示す理由と言えるだろう。
これを受けて人民元も相対的に下がることから、金価格の構成要因であるドルと人民元がともに金にとってポジティブな状況になった可能性がある。
そうなれば金の上げが本格的になる!
こういう内容の記事でした。
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