今回は、インフレなどの問題にさいなまれる日米経済の現状を把握し、ドル建ておよび円建て金価格のゆくえを考えます。
日米経済の現状と金融緩和
今の経済は、金融緩和による上げ底の景気を世界が謳歌している状況になります。
つまり世界の富は最高水準ですが、不景気や先行きの不透明感によってお金を使わない状態です。
それを金融緩和によって打破しようとしているのです。
具体的に金融緩和というと、ヘリコプターマネーに代表されるようにお金をばらまくイメージがあるでしょう。
しかし、そうではなく、金融緩和とは、中央銀行が民間銀行の保有している国債を現金で買い取る政策になります。
仮に銀行の保有している国債100万円を現金100万円で買い取ると、銀行には国債100万円がなくなり、現金100万円が残るので差し引きはゼロ。
銀行の資産は1ミリも減っていないことになります。
つまり金融緩和とはお金をばらまくことではないのです。
金融緩和と物価上昇
金融緩和とは、国債で100万円の資産を保有していてもすぐに買い物などに使えませんが、100万円の現金であれば機動的に買い物ができるという制度です。
即ち金融緩和とは、お金の行動を自由にさせる政策になります。
買い物や投資が活発になれば、経済が活性化するのは言うまでもないでしょう。
加えて、現在は物価上昇になります。
物価上昇が例えば年間5%と仮定すれば、1年後には去年100万円で買えたものが105万円出さなければ買えない状態を指します。
つまり金融緩和によって使えるお金を増やし、お金の価値が減るようなシステムになっているのです。
通常は物価上昇5%であれば5%水準に銀行預金金利はなるのですが、実際はゼロになるわけです。
ですから、人々は競ってお金を投資や買い物に使うようになります。
この結果が株価が史上最高値、金も不動産も、ということになるのです。
アメリカ経済の現状
アメリカでは中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が4月に金利を0.25、5月に0.5の利上げを行っています。
これはお金の価値が増えることを意味し、逆に投資をあまり行うなということになります。
どういうことかといえば、お金の価値はゼロ金利であればどんどん減っていったのですが、今は0.25+0.5%で0.75%の金利が付きます。
つまり人々に今までのようにお金の価値は減らないとFRBは示したのです。
そうなると、人々は現金の価値ダウンが以前よりスローペースになることになるのがわかるので、徐々に旺盛な買い物や投資を行うことがなくなるのです。
その結果が5月20日の株価急落ということになります。
これがアメリカの状況です。
今まではFRBがさんざん金利を上げると言ったので、人々は投資や買い物をせずにドルを保有したままになっていたのでドルは高くなりました。
ところが今度は人々が買い物や投資を止めたので、株価が下がったのが現状です。
投資や買い物を控えるということは、お金が以前より活発に流通しないので、ドルが安くなってきたということです。
日本経済の現状はアメリカの周回遅れ
一方の日本は、3月まで蔓延防止措置でした。
この環境では経済が低迷します。
結果として蔓延防止措置が解除された5月の日本銀行金融政策決定会合で、日銀は低金利と金融緩和を続けると表明しました。
これは、もっとお金を使えと黒田日銀総裁が催促したのです。
要するに低金利を続けるということは、お金の価値が減るので人々は現金の価値が減るのでお金を使おうとするのです。
その上に金融緩和を続けるということは、買い物や投資に使えるお金が増えるという話になり、お金の流通が活発になります。
そうなると株価が高くなり、日本を買うための資金が円に入ってくる結果、円高になっているのです。
この解説を見れば明らかですが、日本はアメリカの周回遅れの状態であるということです。
円高ドル安へ
アメリカがすでに金融緩和の一部を解除し、利上げを行ったのはすでに景気が底を打っているからです。
利上げを行うということは、お金の価値が増大することなので、人々は慌てて現金を使わなくなる、もっといえば景気が低迷することになります。
FRBの意図は、過熱している景気を冷やそうとしているのです。
景気を冷やすことを鮮明にした結果、株価が下落するということです。
日本はこれから低金利と金融緩和を促進してさらに買い物と株価を押し上げようとしているのです。
結果として株価は上昇します。
この話を前提にいくと、アメリカは今後、減少経済、日本は増大経済、ドル<円となります。
ドル円の計算式はドル÷円なので、ドル<円であれば分母の円が大きくなり、ドル÷円の答えは小さくなる、つまり円高になるのです。
ドル建ておよび円建ての金価格はどうなるのか?
今までのドル高が反転してドル安になっています。
ドル安は金にとって強気の材料、またおそらく金利は低下してきます。
GDP(国内総生産)は去年よりは悪い状態なので、金の価格構成要因【1】ドル、【2】金利、【3】GDPは金にとってポジティブ、急騰という条件になります。
円建て金に関しては上記でも説明したように円高です。
これは、円建て金にとってはネガティブな条件です。
そして日本銀行の金融緩和によって金利が低く据え置かれたままになり、その上にGDPは蔓延防止処置が解除された結果、上昇します。
円建ての場合は【1】円だけがネガティブな材料になりますが、【2】金利、【3】GDPに関してはポジティブになります。
ただしドル建てが先に上昇した場合、遅かれ早かれ円建て金もドル建て金価格に追従するでしょう。
この記事のまとめ
今回の記事では、今の世界経済は、金融緩和による上げ底の景気を謳歌している状況。
そこでアメリカのFRBは利上げに踏み切りクールダウンへ。
一方で今年3月まで蔓延防止措置下にあった日本の日銀は、低金利と金融緩和を続けると表明。
すなわち経済の活性化を持続するわけで、日本はアメリカの周回遅れと言える。
こうした結果、ドル円は円高ドル安へ。
円建て金は、目先は円高によって下押す可能性があるが、上昇する。
円高で売られたところが多分、買い!
こういう内容の記事でした。
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