迫りくる食糧危機と金価格への影響

国連のグテーレス事務総長による異例の声明を筆頭に今、食糧危機が叫ばれています。

どれもこれも事態はウクライナに侵攻したロシアの責任としていますが、ハッキリ言ってこの認識は間違いです。

今回は、迫りくる食糧危機と金価格への影響について解説します。

食糧危機への警鐘

以下がロシアのウクライナ侵攻を理由とする食糧危機についての記事です。

https://www.sankei.com/article/20220606-7WIE3GJ2YJPNXLWKADNJFBGILU/

引用元:産経新聞

https://www.fnn.jp/articles/-/370471

引用元:FNN

なお、ロシアとウクライナを合わせて対外的な小麦の輸出は世界1位のシェアを誇ります。

小麦価格の推移と展望

では、小麦の価格推移を見てみましょう。

参照元:TRADING ECONOMICS

ロシアがウクライナに侵攻した2月24日に小麦価格は急騰しました。

重要なことは、この2月24日近辺は春小麦の作付け時期に当たり、おそらくウクライナでの小麦生産は劇的に減ることが予測されることです。

ウクライナは欧州の穀倉と言われ、主な輸出品目はシリアル、つまりいったん収穫した小麦を加工して輸出する加工貿易になります。

当然、小麦が収穫できなければ加工品の輸出も低調になるので、小麦の輸出能力の低下は欧州市場にとって喫緊の問題です。

ロシアはそのまま小麦を輸出する傾向がありますが、ほとんどが東ウクライナ、特にクリミア半島沖から輸出しています。

ただし小麦は中米や南米、オーストラリアでも採れます。

コメと並んで比較的栽培しやすい商品作物である小麦の不作は、なんとかカバーできるでしょう。

小麦は基本的に春小麦と冬小麦があり、二毛作の商品です。

春小麦が壊滅的なダメージを受けても冬小麦まで不作になることは滅多になく、小麦の価格が高騰しても長くて半年です。

コーン価格の推移に注目!

次にコーンの価格推移です。

参照元:TRADING ECONOMICS

日本にとってトウモロコシというと人間が食べるものですが、世界では飼料用穀物です。

日本では、北海道のスイートコーンが有名なのはなぜ北海道でしょうか。

それは小麦、コーン、大豆という世界三大穀物の中で一番ナイーブな作物であり、栽培できる地域が限定されるからです。

アメリカではコーンの作付けに適している地域をコーンベルトと言います。

暑過ぎても寒過ぎても収穫できず、ロシアやウクライナでは作付けができません。

もちろん大豆、コーン、小麦は三大穀物なので価格は相関していますが、基本的には生育する地域が違うので、価格構成は同じようにはなっても価格は違うことになります。

コーンの作付けで一番重要なのは、シルキングという受粉です。

この受粉の善し悪しでほぼその年のコーンの不作、豊作が決まると言っても過言ではありません。

その時期がだいたい3〜5月、この時期にコーンの価格が高いのはシルキングが天候不順によってうまくいっていないことを示します。

この秋のコーン価格は危ない!

イリノイ州ギルマンのトウモロコシ畑

受粉がうまくいけばこの時期にはコーン価格が一時低迷します。

しかし上記のコーンのチャートを見ると、反対に高くなってしまっていることが大問題です。

もちろん下がっていますが、だからといって市場はシルキングがうまくいっていると見ているわけではありません。

おそらくドル高のためだと考えられます。

また、トウモロコシは背の高い作物になので、ハリケーンなどの直撃されるとより一層の不作となっていきます。

穀物畑を歩んだ人間にはわかることですが、今のコーンの価格推移を見れば、この秋は大変なことになることが明白です。

穀物危機は回避できるのか?

食糧危機に警鐘を鳴らした国連のグテーレス事務総長

冒頭の記事では一様にロシアのせいだとしていますが、そもそも小麦はシリアルなどにして保存が効くので収穫できれば問題ありません。

それよりも地球温暖化によって収穫ができないことが問題であり、おそらく食糧危機の根幹はウクライナへの侵攻問題ではなく、世界的な天候不順になります。

グテーレス事務総長はその危機を察知して各国に増産を呼びかけているのですが、この現実を見ると、おそらく買い占めが発生するでしょう。

となるとエネルギーや半導体と同様に、一斉に中国筋が世界中で穀物の買い占め、欧米日が買い負けするという構図が鮮明です。

この食糧危機は来年の穀物年度、つまり10月まで続く可能性が高いでしょう。

食糧危機の金相場への影響

平和であったころのウクライナの小麦畑

エネルギーや半導体価格が中国勢の買い占めによって高騰、サプライチェーンの崩壊と言われるのと同じようなことが穀物で起こる可能性が高いでしょう。

金も同様に、中国勢が価格面を無視して出物を買ってくる状態にあります。

ただしエネルギーや半導体、穀物のように需給はひっ迫していないので価格はそれほどには上昇しないと思われます。

ただエネルギーや穀物に追いついて来ている状態になり、エネルギーや穀物の価格が上昇するごとに金の価格も上昇することになるでしょう。

この記事のまとめ

今回の記事では、昨今叫ばれ始めた食糧危機は、一般に言われるようにウクライナに侵攻したロシアのせいではなく、ドル高と世界的な天候不順によるものであることを確認。

実際、ロシアとウクライナを主な輸出国とする小麦は、栽培しやすい作物で、同地域以外にも世界的な産地がある。

問題はコーンで、この秋には不足が伝えられることになるだろう。

こうした食糧不足を背景に、またぞろ中国が買い占めに走り、欧米日はまたも買い負けることになる。

そして金価格は、エネルギーや穀物価格が上昇するごとに上昇するような傾向を示すことになる!

こういう内容の記事でした。


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