2022年中盤の世界情勢【後編】米中資源獲得競争と金価格

世間では、中国の商売はどうしようもないというコンセンサスが優勢に立っています。

こうした日本国内の動きに違和感を覚える方も多いでしょう。

そして北朝鮮は今年、頻繁にミサイルを発射しています。今回は、米中対立の根幹にある資源争奪戦と金相場についてです。

アメリカと印パの関係に見る世界の矛盾

前回の【前編】では中東情勢やトルコの動きに並んで、ロシアから武器や原油を輸入するインドの事情を説明しました。

2022年中盤の世界情勢【前編】中東情勢と産油の現状

歴史的背景を見れば、アメリカはインドの隣国で敵国に当たるパキスタンの支援国であり、インドにも武器供与を行えばパキスタンから猛批判を受けるでしょう。

一方でインドは、同じく隣国の中国と国境問題を抱えており、ロシアと安全保障の取り組みを行わざるを得なかったというジレンマにありました。

一方で北朝鮮は、凝りもせずにミサイル発射を繰り返しています。

その理由には、米韓の軍事演習があります。

この軍事演習の意味としては「北の攻撃に備えて」がお題目ですが、北朝鮮から見れば自国へ攻め入るための訓練であり、万が一に備えて核開発に取り組むということです。

南沙諸島問題とシーレーン

南沙諸島(スプラトリー諸島)の地図

中国にしても、台湾問題は建国者である毛沢東の遺言ということで建国以来の課題。

台湾と自国領土は一体不可分という主張は当面止まるわけがありません。

対北朝鮮同様、アメリカはその危機の可能性をあおるわけです。

中国は今、南沙諸島をさまざまなかたちで占拠し始めています。

この理由は、シーレーンを確保する必要があるからです。

中国の原料素材の主な輸入国は中東やアフリカに偏在しており、その輸入品は全て南沙諸島近辺を通ります。

この南沙諸島付近にある東南アジア諸国の安全保障は、アメリカが担っています。

中国からすれば、経済成長の生命線であるシーレーンを確実に確保する必要があるから占領するのです。

シーレーン問題の核心と次世代原料素材

カリフォルニア州の砂漠地帯にある風力発電ファーム

シーレーン問題の核心は、次世代の原料素材のほとんどを中国が握っていることにあります。

例えば、電気自動車のキモである電池に必要な原材料の9割は、中国が握っています。

風力発電に必要な磁石も、ほとんど中国が握っています。

アメリカは高いお金を出して、電気自動車の部品や再生エネルギーを開発しなくてはならない状況に追い込まれているのです。

それらの確保のためにアメリカが、南沙諸島を封鎖して自国を窒息死させる可能性を中国は危惧しているのです。

アメリカが経済的敗北に陥るような事態になれば、同盟国に囲まれた南沙諸島で武力行使をするのが一番わかりやすく、また効果のある方法であることは明白でしょう。

そのための口実作りのために、台湾問題を持ち出しているような気配さえあります。

台湾侵攻の現実性

北京の天安門に掲げられた毛沢東の肖像

どう考えても、中国の台湾占領は不利益が甚大すぎて非現実的であり、可能性は極めて低いでしょう。

台湾問題は毛沢東の建国理念、統一中国から派生しています。

毛沢東の言葉を無視すれば国内がまとまらない可能性があるので、台湾は中国領土だという主張を捨てない側面があります。

また過去に列強に植民地にされたときから、中国は自身の領土政策の地図を発行しており、その中では希望的観測で、尖閣は中国領土と記されているのです。

中国自身は、安全保障よりも経済を優先する方針が鄧小平指導体制のもとで確認され、習近平体制でも維持されています。

毛沢東や鄧小平の言葉を覆すのは、いくら習近平が絶大な権力を握っていても非常に難しいでしょう。

米中資源獲得競争の行く末

2022年3月1日、ブリュッセルで開かれた欧州議会でリモート演説をするウクライナのゼレンスキー大統領

結局のところ次世代の環境技術、電気自動車などの主な原料素材は中国に握られています。

このまま行けば没落するのはアメリカであり、中国は安いコストで原材料を手に入れられるので成長する可能性の方が高いです。

その結果が現在のような世界情勢になっています。

中東やアフリカなどが米中双方に肩入れしているのに、ウクライナは西側オンリーに肩入れと表明した稀有な国です。

アメリカの勢力圏の拡大にうってつけなので、西側は必死にウクライナを支援するのです。

アメリカは勢力を拡大しなければ、今後どんどん劣勢になっていくのは自明です。

もちろん、ロシアが自国の勢力縮小に反発するのは当然のことでしょう。

資源獲得競争が金に与える影響

上海を走るリニアモーターカー。動力となる磁石のほとんどは中国が握っている

こうした国際情勢は金と密接に関係があります。

上記の趣旨は、西側が将来において安い原料素材を手に入れることができない部分にフォーカスするのであれば、東側が優勢という仮説になります。

一方で、金を大量に保有しているのは中国のほかロシア、イラン、トルコ、メキシコなど、ここ最近中国と急接近している国で、西側で肩を並べられるのは、わずかにアメリカくらいです。

今後数年は東側優位が続くと考えれば、より多くの金を保有している東側は、金の価値を高めることに腐心する可能性が非常に高くなるでしょう。

この記事のまとめ

今回の記事では、米中対立の根幹にあるのは、環境問題に端を発する次世代原料材料のほとんどを中国が握っていることにあることを確認。

これを理由に没落の可能性のあるアメリカは、いよいよとなれば南シナ海を封鎖して中国の息の根を止める作戦に出る可能性がある。

これを危惧するがゆえに中国は、南沙諸島を実効支配下に入れてシーレーンを確保しようとしているわけである。

ただし普通に考えれば、資源を握る中国がアメリカより優勢に事を進めるのは自明。

そして現在、金を多く保有している国は中国および中国寄りの国々であることを勘案すれば、優勢に事を進める中国側が金の価値を下げないよう腐心するだろう。

こういう内容の記事でした。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください