9月22日のFOMCが金価格に与える影響

9月22日、日本時間早朝にFOMC(連邦公開市場委員会)が終了し、政策金利0.75%の引き上げが発表されました。今回はこの解説を行います。

パウエルFRB議長の注目発言

下記は、今回のFOMCの内容を端的にまとめた記事です。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-21/RIKNCGT0AFB701

「パウエル議長、さらなる「痛み」への覚悟促す-積極利上げ継続へ」

引用元:ブルームバーグ

この記事の中で注目は、

われわれはインフレを過去のものにする必要がある。痛みを伴わずにそうする方法があれば良いが、それはない

という発言と、以下の発言になります。

金利上昇と成長減速、労働市場の軟化は全て、われわれが仕える国民に痛みをもたらすが、物価の安定を取り戻せず、将来的に再びやり直さざるを得なくなるほどの痛みではない

最初の発言は、改めて「インフレ退治」に言及したものであり、これ自体は目新しいものではありません。

ただし、痛みが伴うと言明したのは初めてのこと。

具体的に2番目の発言で、痛みとは金利上昇と成長減速、労働市場の軟調だと結論づけています。

ただしその条件は、物価安定が取り戻せたらということです。

物価安定を取り戻せなかったら、壊滅的に経済が落ち込み、リーマンショックやコロナショックのときように、一から出直しの経済になる可能性があると言っているのです。

注目すべきは、2番目の発言にある金利上昇、成長減速、雇用市場の軟化とは、金をはじめ株や債券、為替をも含めたマーケットの価格構成要件である【1】ドル、【2】金利、【3】GDPと一致する点です。

そして【1】ドルとは雇用のことであり、雇用市場の軟化とは結局のところドル安を指していることになります。

9月22日のFOMCをまとめると…

金の価格構成要因とパウエルFRB(連邦準備理事会)議長の発言を照らし合わせると以下のようになります。

【1】ドル(雇用の軟化)→ドル安→ポジティブ
【2】金利上昇→ドル高→ネガティブ
【3】GDP(国内総生産)減速→ネガティブ

この3つの項目を総合して金価格を評価すべきであり、今回の場合は1:2でネガティブが勝っているので、このFOMCを受けて金の下げ幅は軟化するはずです。

このFOMC以前は金利の急騰を受けてドルが急上昇、そしてGDPは減速でしたので、0:3で金価格にとってネガティブな形となり、価格は実際に下がっていました。

来年3月までの金価格構成要因のタイムテーブル

FRBは、見通しとして今後の金利上昇は1月まで行う予定で、来年にはインフレ退治がうまくいき、金利を下げることを示唆しています。

その場合、年末までに1.25%の利上げ、さらに0.5%の引き上げを来年1月に行う可能性について言及しています。

つまり1月の次は3月のFOMCになるので、その時には金利を引き下げるか、利上げを終了するかの判断をするという意味になります。

そうなると、3月の時点で上記の表は以下のようになります。

【1】ドル(金利上昇の停止は雇用の回復を意味)→ドル安からドル高→ネガティブ
【2】金利上昇(金利上昇の停止)→ドル高からドル安→ポジティブ
【3】GDP→金利先高観の後退からの投資促進→ポジティブ

現状では1:2でネガティブな価格構成となっていますが、3月にはこれが2:1とポジティブになり、金の価格は反転上昇し始めるということです。

金利とドルに注目すると…

ワシントンDCに立つFRB本部にたなびくFRBの旗

このように、FOMCの内容をきちんと吟味すると金の価格はある程度読めるようになります。

注意したい点は、【1】と【2】のドルと金利です。

ドルと金利の関係は「ドル×金利」によって表現されます。

「ドル×金利」が必ず双方の値が大きくなるということではなく、今回の決定では金利の価格が上昇するという関係になります。

その答えは必ずドルの価格が大きくなるということではなく、「ドル×金利」の値は小さくなるケースもあるということです。

今回の場合、金利が上昇することが決まっていますし、ドルも今のところ軟化していないのですが、金利が上昇すれば悪化するでしょう。

その場合、「ドル×金利」の答えはドルの下落幅、すなわち雇用市場の軟化次第の側面があるということです。

通常に考えて、ドルが年間18%上昇したのに対して、金利は2.28%しか上昇していません。

通常の値幅はドル>金利になるはずで、今回の場合、雇用市場の軟化の方が大きくなるでしょう。

ゆえにドル安の方が勝ることもあるということです。

それ以上に金利が上昇すれば、ドル高になりネガティブになるということです。

「ドル×金利」の値の重要性を知ろう

FOMCでの金利上昇決定を受けて、雇用が軟化することにつられてドルも軟化する

ドル円相場が円安になったのは、金利の上昇幅が大きかったからです。

今後は金利は上昇しますが、ドルが軟化するので金利差では円安は読むことができません。

「ドル×金利」の値が前日比や週間比、年間比などでどうなっているのかをよく見ておく必要があります。

この「ドル×金利」の値は、ドルインデックスのことです。

現在、ドルインデックスは週間、月間、年間でプラスであり、これがマイナスになるとドル安、「ドル×金利」の値が安くなるという意味です。

この違いをよく考えることによって、マーケットの見方は変わってくるでしょう。

この記事のまとめ

今回は、9月22日のFOMCを受けて、今まで0:3でネガティブの方向だった3つの金の価格構成要因が、ドル高がドル安へと転じることで1:2のネガティブになることを確認。

これにより、金価格の下げ幅は軟化するだろう。

そして来年3月に行われるFOMCの段階で、FRBが予定どおりにインフレ退治に成功していれば、利上げを止めることでドル高にはなるが、GDPも上昇することになるので、2:1で金価格にとってポジティブとなる。

ただし、パウエルFRB議長の発言から読めるように、物価安定を取り戻せなかったら壊滅的に経済が落ち込み、リーマンショックやコロナショックのときように一から出直しの経済になる可能性がある。

こういう内容の記事でした。


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