2020年4月27日、通常は2日間にわたって開催される日本銀行の金融政策決定会合が新型コロナウイルスを受けて短縮の1日のみで開催されました。
今回はその解説です。
4月27日の日銀政策決定会合の内容
主な決定内容は、
【1】日本国債の無制限の買取
【2】CP(コマーシャルペーパー)、社債を従前の3倍に当たる20兆円買い取る
です。
これについて解説していきます。
日本国債の無制限の買取について
まずは【1】の内容に関してです。
これは、4月上旬に開催されたサウジアラビア主催のオンラインG20で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞により、各国の中央銀行が「無制限」の買取を行うという合意がなされました。
つまり、国際的に国債の買取を行うことを約束したのですが、国内的にはその法的根拠がないので、日銀の最高意思決定機関である金融政策決定会合にて法制化したにすぎません。
日本人はよく約束を守る国民だと言われますが、それを実際にやっただけです。
相次ぐコロナ倒産について
東京商工リサーチによると現在、新型コロナ感染拡大に伴う経済活動の低下によって倒産が増えています。
3月から2ヵ月間自粛が続けば当然の成り行きです。
ただし、そもそもこのコロナ感染拡大前より経営に問題があった会社、特にインバウンド需要を取り込んでいる会社群が軒並み倒産しています。
観光客が景気に左右されるのは当然ですが、まさか訪日外国人がゼロになるというリスクまでを想定している企業がなかったことには同情します。
しかし、健全な企業は人を雇いますので、3ヵ月間は無収入でも成り立つような計算をしているのが通常だと思います。
逆に言えば、6月上旬まで自粛が続けば、おそらく日本経済は壊滅的な危機にさらされるでしょう。
ですから、自分のストレスだけではなく、社会皆さんで外出を控え、早く収束させなければなりません。
国債買取と市場の流動性
【1】の国債の買取には市場の流動性の確保という意味があります。
株式市場とは資金調達のために存在するのですから、買いたいときに買えず、売りたいときに売れないリスクは自由・資本主義国家では存在してはなりません。
マーケットに十分な資金供給を行うのは中央銀行の大事な仕事であり、それを放棄すれば経済は崩壊します。
ですから、それを解消することが国債買取の目的です。
そして、国債を市場から買い取れば、市場には売却代金として現金が残ります。
この現金が銀行を通じて融資に回るのです。
不景気や大恐慌のときには、この融資するお金が極端に不足します。
理由は企業や個人は手元に現金を置いておき、万が一に備えるからです。
銀行は預金者の預金を原資に融資を行うわけですから、預金量が減ります。
皆さんがお金を貸してほしいときに貸すお金がなくなるので、国債の買取によって市場にお金をばらまくのです。
今は買いオペは無意味
融資の申し込みをしても、リスクのない対象には銀行は喜んで貸すでしょうが、これからのコロナ感染と自粛の動き次第で返済できるか否かわからないような貸出先には慎重になるでしょう。
だから貸出が容易になるように、日銀が一般にばらまきと言われる方法によって資金を放出することを国債の買取、通称、買いオペというのです。
ところが、その買いオペを行い、資金を潤沢に供給しても、政府系金融機関は無利子なので申し込みが殺到し、審査が間に合わないような状況が続いています。
いくら日銀が資金を供出したとしても、現在は融資が実行できないような状況なのです。
ですから、株式市場は大して売られなかったのですが、為替市場のドル円は大暴落が起こっています。
融資資金が潤沢にあっても審査がいっぱいあり融資ができない状態なのに、資金を供給しても意味がないのです。
CPや社債の買取について
決定事項【2】の社債やCPの買取ですが、そもそもこれらを発行できるのは大抵の場合、上場企業のみです。
上場企業というのは多くの期間で赤字決算を行えば、上場廃止になる可能性があります。
短期的に赤字の上場企業はありますが、長期的には黒字の会社が多く、資産が充分にあるのです。
つまり、取りっぱぐれがないということで、銀行がお金を貸したがる企業群になります。
CPや社債とは企業が発行する借金証書みたいなものお考えればいいでしょう。
「借金をします」と書いてある証書を日銀が買い取るということで、それによって融資されているのと一緒のことになります。
ただし、借金証書は誰でも発行できるというわけではなく、厳しい規制や条件があり、破綻する可能性のある会社には一切発行ができないようになっています。
そんな安全な資産を買っても意味がないのです。
日銀が3月に何をやったのか思い出してほしい
日銀が新型コロナ発生当初に何をやったのか、覚えていない人が多いのではないでしょうか。
まず失敗の端緒として、1月にアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が緩和の停止を発表しました。
その当時のアメリカは新型コロナを軽視しており、緩和を停止してもその景気拡大を見込んでの判断でした。
しかし、やっぱりひどいということで、3月7日に緊急利下げを大々的に発表して政策金利を1.5から0にしたのです。
ただ、これほどバカバカしい発表はなく、実際に政策金利は1.5だったのですが、1年物の市場金利はほぼゼロに近い数字だったので、本当のところは市場に合わせただけです。
何の意味もなかったのに大々的に発表した結果、株価はさらに暴落しました。
それに追随して日本銀行も緊急金融政策決定会合を開き、国債の買取増額とETF(上場投資信託)の倍額買いを発表したのです。
思い出してください、今回の日銀の決定は、国債の無制限の買取とCPおよび社債の3倍買いです。
国債の買取が増額から無制限になり、株式ETFがCPと社債に変わっただけにすぎません。
4月29日のFOMCを受けて金はどうなる?
今回、FRBのFOMC(連邦公開市場委員会)は4月29日の早朝に発表されます。
これで日米同時揃い踏みになるわけで、条件は3月と同じです。
おそらく今回のFOMCの内容も中身がないでしょう。
つまり、4月30日の連休前の市場は暴落からスタートする可能性があります。
金はその対象外と思っている方も多いでしょうが、金も急落する可能性が高いです。
日付が2日間ずれるだけであって、日米の中央銀行が意味と実行効果がない発表をするだけでしょうから、おそらく暴落するのでしょう。
コメントを残す