今の金価格は本来の変動要因であるドル価格の上下動に連動せず、金利にも連動していません。
今回はこれを相関関係によって説明し、今後なぜ金価格が急落する可能性が高いのかについて紐解いてゆきます。
金利に連動しない理由
金利に金価格が連動しない理由は、アメリカの金利がゼロであり、これ以上下がる可能性がマクロ政策では考えられないからです。
マイナス金利を適用する可能性が低いといえる理由は以下の2点です。
【1】マイナス金利を適用した場合、金融機関の体力低下につながり経済が弱体化することが日欧で確認されているゆえに、デメリットのほうが大きい
【2】特にアメリカの場合、海外の投資家に債権を購入されることによって成り立つ国であり、マイナス金利を適用した場合、海外投資家の需要がなくなる
ただし、トランプ大統領が中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)に対してマイナス金利の適用を要求するのは、財政措置が限界にきていることを示しており、これ以上の経済対策をする場合には一部に適用する可能性はあります。
アメリカはともかく、日欧ではこれ以上のマイナス金利の深堀という可能性は非常に低いです。
ゆえに、金利低下によっての金高騰はこれ以上考えることができないというのが結論になります。
ただし、マイナス金利適用の可能性をすべて排除するのは非常に危険です。
この先どのような事件が起こるかは完全に不透明であり、場合によってはマイナス金利の適用、あるいは深堀の可能性もあるということになります。
ドルに連動しない理由
ドル価格の上下動は、本来金の価格変動要因の筆頭です。
ドルはアメリカという国家の強さを表現します。
経済学的にいえば、アメリカという国家が年間いくら稼ぐのかを表すかの指標、GDPと同様です。
現在のアメリカは経済活動が再開し、今後経済は上向いてくるでしょう。
しかし、ドルの発行主体である連邦政府は借金まみれであり、この連邦政府の信用がなくなれば、ドルは一気に信用崩壊が起こるような状態です。
連邦政府の信用、つまり今のドルの強さは砂上の楼閣なのです。
強いけれど、これだけ借金まみれの人をあなたは信用しますか。
目先は強い力を持っているので従うフリをするでしょうが、友人が一気に離れたら、貸しているお金を返せというのが当然の成り行きでしょう。
つまりドルの強さは諸刃の剣であり、信用しなければいけないから信用しているだけ。
何か事件が起こった際はその債務の多さから一気に強さを失う可能性があるから、ドルに連動したくても連動できないジレンマがあるのです。
力で借金を帳消しにする方法もあるが…
アメリカには、軍事力を行使して借金をチャラにするという選択肢もあります。
しかし、現下の情勢とトランプ大統領の性格から考えると非現実的です。
皆さんはトランプ大統領を強面と思っているでしょうが、彼は人の死や殺戮を非常に嫌う性格が内在しています。
去年のイラン問題も戦争が時間の問題と言われましたが、最終的に回避したことは記憶に新しいところでしょう。
つまり、トランプ大統領に戦争を起こすような度胸はありません。
次期大統領候補のバイデンはよくわかりませんが…。
新型コロナとドルの強さ
問題はドルだけに限らず、新型コロナウイルスの感染拡大が起こっている国は皆共通して借金まみれでどうしようもない状態です。
つまり弱いのはドルだけではなく、その中でも経済力のあるドルに信用が集まっているだけになります。
今のドルの強さは相対的なものであり、絶対的な価値、ドルをはじめとした円やユーロ、ポンドなどの価値も下がっているのです。
ゆえに株や不動産、金が高いとも言えます。
経済活動が再開すれば、間違いなく株価や不動産は値段がすっ飛ぶでしょう。
何を材料に金価格を判断すればいいのか?
今の金価格はGDPと関係があるということを前回ご説明しました。
わかりやすく説明すると、GDPの中で金のように毎日価格が発表されるのは株価だけです。
金価格は毎日、東京やニューヨークの先物市場で価格が決定され、ロンドンの現物相場で日に4回価格が決定されています。
対してGDPの発表は年に4回。
これでは金価格は何を見て決定されるのかがよくわかりません。
ですから、GDPの数字を予測するのに経済の先行指標である株価を見ればいいのです。
一般投資家かから注文が殺到すれば株価は上昇しますし、反対に注文がなければ企業活動の停滞を意味しますから下がります。
アメリカの場合、GDPに対する企業活動の割合は10%程度ですので、株価の10倍がGDPと思えばいいのです。
どちらにしろ企業の生産、サービス活動が活発なら、それが全体のアメリカ経済活動を押し上げるのは当然です。
ゆえに、金の価格はGDPの予測と株価を見ておけばよいという話になってきます。
金価格と株価の相関は当面続く
下記の2つのグラフは上がNYダウ、下がドル建ての金価格です。
細かい点は似ていませんが、2月から3月にかけての急騰、急落は同じような形になっています。
5月の上旬に金の価格だけが上昇したのは、トランプ大統領がFRBに対して金利をマイナスにしろと要求したことで相似が行われていないというだけで、ここ最近はまた株価と連動してきています。
つまり、今後もドルや金利との相関関係がなくなった状態が続くでしょう。
理由は、この財政出動をしているのに、金利が高ければその利用がなくなりますので低金利はしばらく続くと思われます。
またドルの強さは借金を背景としており、その借金を返せと言われればアメリカの信用、つまりはドルの信用が一気に地に落ちます。
だからドルは表面上は強いが、中味はものすごく弱いという反相関の関係になっているのです。
ゆえに信用できるものはないということで、当面は株価と連動する形になるでしょう。
今後の株価はどうなるか
株価は1〜3月のGDPが年率で5%マイナスにしかならなかったので、30%近く落ちた株価が5月末の段階では調整に入っています。
本来ならもっと戻らないといけないのですが、今の経済が最悪で4〜6月は30%のマイナスになると一般的に言われている中、ここから本格的に上昇するかの問題になります。
皆さんもこの説明を聞いて上がるわけがないと思うでしょうが、株価の専門家は楽観を意識しています。
今後の見通しを考えると、株価がこのまま順調に上昇なんてことはないのに楽観をしている状況で、今後下落すればまた爆発的な下げになる可能性が高いのです。
今後の金価格はどうなるか
株価が爆発的に下がれば、株価に連動している金はどうなるでしょうか。
トランプ大統領のマイナス金利発言によって一時期上値をうかがう展開になりましたが、現在は株価と金は連動している因果関係ではなく、相関関係にあることを念頭に置けば、多分下がるでしょう。
そして下がり切った時に経済活動が本格化し、借金を返済できる見通しができればドルはどうなりますか?
そして、金利はどうなりますか?
そこに残された材料は金の下げ要因だけになってしまう、これが現実です。
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