弊社の金の相場観について、読者の方からかなりの問い合わせをいただいております。
そこで今回は短期的ですが、現時点での弊社の金に対する考え方を記しておきたいと思います。
基本的な金価格の変動要因
金価格の変動要因の基本路線は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP
の上下動です。
ここ最近【1】と【2】は動いており、【3】に関しては6月8日に日本の1〜3月期のGDP確報値が発表されています。
これらを中心に論じてまいります。
ドルの強さ
ドルの強さに関しては、以下の2020年6月8日までのドルインデックスをご覧ください。
ご覧のようにドルは5月15日から急落がスタートし、5月25日から本格的に急落しています。
これは、コロナ禍が発生してアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が無限に資金供給を続けたのですが、それに追いつかないくらいのドル需要があり、ドルの価値は高止まりしていました。
無限供給というとドル安をイメージしがちですが、実際は供給が需要に追いついていなかったのです。
ところが5月の中旬以降からドルが需要に対して追いつき、供給が過剰になった5月25日以降から急落しました。
このドルの急落、すなわちドル安は金にとっては買い材料になります。
金利の状況
一方で金利の状況を見ていきましょう。
下記はアメリカ国債10年物利回りです。
4月21日を境に金利が上昇してきています。
3月9日が最低の金利でしたが、4月21日にはその底を二番底として打ったと考えてよいようです。
そして、5月29日から金利は大きく上昇しています。
これは5月21日にドルが急落し始めたのを受け、おそらくFRBが国債の買いオペレーションを止めたことが理由かと思われます。
参考までに、ドルインデックスが99を割ったのは5月27日で、その2営業日後に金利が急騰しているのは、FRBの買いオペが終了したことを意味するのでしょう。
つまり今後起こることは、今までは無収入からのつなぎ融資が活発化していたのですが、金利が上昇し始めたことから、さらに金利を求めて投資家がドルを買ってくることになると思います。
さらに、ドルの需要が増えるのでドルは上昇し、金利も最低金利から離れていくことになるでしょう。
金利とドルから読み解く金価格
もう少し解説をすると、今までの融資は無収入=つまりお店や事業を再開できないので固定費という必要経費(家賃や税金など)を払うためでしたが、金利の上昇の開始は事業が拡大再生産に入ったことを意味します。
今までは消費、つまりはお金を生み出さない融資でしたが、今後はお金がお金を生み出す生産的な融資です。
それが後述する雇用統計にも如実に表れています。
つまり、今後ドルも金利も上昇することになります。
この関係性はドルが25年ぶりの高値なのに対して、誘導目標金利は過去最低です。
論理としてどちらが上がりやすいかの問題で、答えは金利です。
金利が勢いよく上昇し、ドルが緩慢に上昇したら金の価格は大勢的に下がることになるでしょう。
だから、実際に6月第一週の週末から金の価格が下がってきているのです。
目先の話に関しては最後に記します。
サプライズだった米雇用統計
6月5日に注目のアメリカ雇用統計が発表されました。
これはほとんどのアナリストが大外れの数字を予測しており、マイナス予想だった新規雇用者数は実際は250万人増と想像を絶する数字となったのです。
雇用統計が始まって以来、ここまでコンセンサスと実際の数字が乖離したことはありませんでした。
考えてほしいのは、企業は利益を出すために企業活動を行っているのですから、儲からないのに人を雇うことはありません。
つまり、企業は儲けられるから人の雇用を再開したので、トランプ大統領が「最上の雇用統計」と自賛したように、これでアメリカ経済は回復過程に乗りました。
これによってアメリカのGDPの最悪期は脱し、今後は成長するのみになったのです。
ゆえに落ち続けた金利は今後上昇し、しかもその勢いはドルの上昇を上回ることになります。
金利の上昇についての短期的な見方
まずは金利の上昇について。
アメリカの住宅指標がこのコロナ禍でも勢いが衰えていないという事実があります。
これには金利がリーマンショック以降再び最低になり、住宅ローンを組む人が増えていることが背景です。
もちろん、アメリカでは金利に応じてローンを組み替える人が多いという事実もありますが、融資は金利が上昇している現在は増えるでしょう。
さらにこの金利の上昇から、再びアメリカ国債に投資する海外の投資家もいるでしょう。
しかし、ゼロベースの金利が上昇したということは、これらの要件を勘案しても実際はまだ金利が安く、いったん住宅ローンや国債投資をする人が漸減する可能性のほうが高いです。
つまり、金利が安いから住宅ローンや国債投資を行ったのであり、今後は金利上昇の具合を見極めてから再び投資をすることになると考えられます。
住宅ローンに関しては、誰しもできるだけ安い金利でお金を借りたいのが人情であり、その様子見をする人が増えるでしょう。
国債投資はそもそも海外勢が1年や半年、1ヵ月スパンで投資を考えているとは思えず、あまり関係がないでしょう。
この上記2つの優良な投資主体の中でも割合は住宅ローンのほうが多く、金利は短期的には下がり気味になると考えられます。
そして、ドルは2%ほど下落しているので、戻りが入るとみるのが自然でしょう。
短期的に見る今後の市場予測
こうやって考えていくと1週間弱、金のドル建ては戻ることになるでしょう。
さらにマーケット全般で考えていくと、株価はそれほど経済活動が活発になってもいないのに戻りすぎたと言えます。
ゆえに6月1日からの週で戻りすぎの反動が出て下落傾向に、為替も株価からはアメリカ>日本になっているので円高になり、金も反転し戻りに入るでしょう。
具体的にはドル建て金は1700ドル越えまで戻るでしょう。
現在は1670〜1680ドル近辺です。
1700ドル越えまで戻れば再び金利上昇によって下落と考えています。
これが本格的な下げになるかどうかはまだわかりませんが上値を切り下げている段階ですので、いずれやって来る本格的な下落に備えるべき時と考えています。
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