当コラムでは金の価格変動要因を従前は【1】ドル【2】金利の2つとしていました。
しかし、この組み合わせだけだと整合性が合わないことがだんだんと判明し、第三の要因として【3】アメリカのGDP(国内総生産)を含めると整合性が取れることがわかってきました。
今回もこのThe Third Manこと【3】GDPから今後の金価格を読んでいきたいと思います。
ニクソンショック以降の金価格の変遷
下記のグラフは、1971年のニクソンショック以降に金価格が市場化されてからのドル建てでの推移です。
19世紀に金本位制度が開始された際はドルとの交換保証価格は18ドルくらいでした。
皆さんの記憶にあるのは金本位制度が崩壊する前の35ドル前後でしょうか。
アメリカのGDP推移と金価格の相関
下記のグラフはアメリカのGDP総額の推移です。
前項に挙げた金価格の推移となんとなく相関しているように見えませんか。
1960年代から現在までアメリカのGDP総額は約20倍になっており、対する金の価格は35ドルから1750ドルと約50倍。
一見大きな整合性がないようにも見えますが、この間に大きく変動している金利やドルの動きを加えていくと、おそらく整合性のある値段になってくるであろうと考えます。
言えることは、GDPが成長するほどに金の価格が上昇し、反対に縮小すれば金価格は下がるという関係性です。
今後金価格がGDPを中心に動く理由
5%台だったアメリカ国債の長期金利が2008年のリーマンショック以降にゼロ金利となり金価格は暴騰↗。
そして2017年のゼロ金利解除後に、逆に金価格は暴落↘しました。
また、2019年の利下げ後には金価格は暴騰↗したように、近年は主に金利の動きに金価格が左右されてきたのが事実。
ところが再びゼロ金利になった今、マイナス金利がなければもう金利によって金の価格が上がることはありません。
そこで残りの【1】ドル、【3】GDPによって金の価格が動くことになります。
その【1】ドルは現在、史上最高値を記録しており、上昇幅は1年でも2%程度。
対するGDPは新型コロナ発生当初では前年比マイナス30%になるのではないかということですので、【1】ドルと【3】GDPでは【3】のほうが断然変化率が高いのです。
よって、今後の金価格は【3】GDPを中心に動くであろうと予測します。
GDP前期比から見る
下記はアメリカのGDPの前期比を表したグラフです。
前期2020年1〜3月はマイナス5%とかなりの減少であり、次回の4〜6月期の速報値は7月末に発表予定です。
そこまでは、金の価格は3月末の時点からGDPの減少率同様に5%下がるというのがこの金価格予想のポイントになります。
参考までに、株価も6月11日に大急落しましたが、この価格もGDPの通りに推移し、また6月10日までの価格もGDPの上限下限価格を推移していました。
ドル建て金価格の2019年1〜3月の高値-安値は以下の通りです。
始値 1520ドル 2019/01/02
高値 1703ドル 2019/03/09
安値 1451ドル 2019/03/16
終値 1576ドル 2019/03/31
ここから5%値段が下がるということですので、各値段に0.95を掛けます。
前期比予想
始値 1520ドル 2019/01/02 ×0.95 = 1440ドル
高値 1703ドル 2019/03/09 ×0.95 = 1643ドル
安値 1451ドル 2019/03/16 ×0.95 = 1378ドル
終値 1576ドル 2019/03/31 ×0.95 = 1497ドル
GDP前年比から見る金価格
アメリカのGDPの前年比は以下のグラフの通りです。
2020年1〜3月期のGDPは1次速報での推計値はマイナス5.1%でしたが、アメリカ国務省が発表した数字は0.23のプラスでした。
この比較対象は2019年10〜12月の数字2.3ではなく、2019年1〜3月期の2.7になり、この2.7に対してプラス水準になります。
報道を見るとひどい落ち込みのようにしか思えませんが、アメリカ経済は新型コロナ禍にあっても前年の同時期よりも稼いでいるのです。
さて、比較対象である2019年1〜3月の金価格を見てみましょう。
始値 1286ドル 2019/01/02
高値 1346ドル 2019/02/20
安値 1276ドル 2019/01/21
終値 1292ドル 2019/03/29
これに【3】GDPの前年比は0.23ですので、1.023を掛ければ適正値が出ます。
前年比
始値 1286ドル 2019/01/02 ×1.023 = 1315ドル
高値 1346ドル 2019/02/20 ×1.023 = 1376ドル
安値 1276ドル 2019/01/21 ×1.023 = 1305ドル
終値 1292ドル 2019/03/29 ×1.023 = 1321ドル
この計算によると2020年4〜6月の動きは最大で1643ドル、そして最小だと1305ドルまで下がる可能性があるのです。
金価格はバブル?
2020年6月15日現在、金の価格は1730ドルで推移しています。
参考までに2020年4〜6月の価格推移を見ましょう。
始値 1574ドル 2020/04/01
高値 1765ドル 2020/05/18
安値 1670ドル 2020/05/01 2020/06/05
ここで注目したいのは5月1日と6月5日に出た安値です。
この数字の背景はアメリカの中央銀行であるFRBの誘導目標金利1.25に対して緊急利下げを行い、下げた金利1.25%です。
前期の高値1703ドルから算出した1643ドルに下げた金利1.25を掛け合わせると、
1643×1.0125=1663ドル
になります。
4〜6月期の安値1670ドルとの7ドルの差は、おそらくドルの変動によるものと推察されます。
ここから導き出される結論は、金の価格は先行き不安から駆り出される民間需要によって高すぎる状態、すなわちバブルであるということです。
本来であれば前期比では1378ドル、前年比では1305ドルまで下がらなくてはいけません。
2020年中に高確率で金は暴落する
上記の予測が正しいと主張する理由は、2020年6月の株価の上昇と下落がこのGDPの計算通りに動いているからです。
ゆえに株はここから押し目買いという声が大きいのですが、おそらく戻れば全部売られるでしょう。
株が売られるということは、GDPも縮小傾向になることを暗示しますので、おそらく金も下がるでしょう。
おまけに金が割高すぎると考えれば、買う選択肢はないということ。
もちろん、あくまでも金の価格がバブルであるという前提でですが、株価が2万9000ドルから3万ドル前後の時にバブルであることを分析し、結果として暴落が的を得た今、金は1300ドル前後まで暴落する可能性があります。
しかも高い確率でです。
今後の金価格の展開
今期のGDPは新型コロナウイルスの被害額のすべてがまだ織り込まれていないというのが周知の事実です。
日本の緊急事態宣言は4月、アメリカも3月末に発動され、4月はほぼ経済活動が停止していました。
5月の中旬から再開の動きが見られるものの、1ヵ月半は経済活動が停止したままです。
2020年4〜6月の数字は、
始値 1574ドル 2020/04/01
高値 1765ドル 2020/05/18
安値 1670ドル 2020/05/01 2020/06/05
ですので、ここから世間一般で言われるGDP前期比マイナス30%となると、
1235ドル−1169ドル 高値−安値に0.7を掛けた数字
になってしまいます。
ただし、弊社的にはせいぜい10〜15%程度の下落と読んでいるので、
1588ドル−1503ドル 高値−安値に0.9を掛けた数字
言えることは4〜6月の数字の0.9掛けというのは最大値であり、おそらく0.85くらいを掛けないとだめでしょう。
本年中はもはや金の買い目はない
上記の予測金価格の有効期限は、アメリカの2020年10〜12月期GDPの1次速報値が発表される2021年1月末までです。
となると、どこかで金が暴落した場合、再び1750ドルくらいをつけるのは来年以降ということになります。
つまり、今年の金はもはや買い目がない!
一方で、この金のバブル価格が年内まで持つとすれば暴落は来年です。
いずれの場合も、今の価格で金を買う選択肢はないと判断しています。
あくまでも弊社の見通しですが、近々金価格の暴落がやってくるでしょう。
コメントを残す