2020年の秋以降にひどい物価上昇になると予測しています。
そんな中、そもそも昔から言われる「インフレに強い金」とはどういうことなのか。
今回はこれを考えていきます。
金価格の変動要因
金の価格変動要因とは、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP
です。
この変動要因とインフレの関係を考えていけば、金がインフレに強い理由が明瞭にわかるでしょう。
インフレとは
皆さんはインフレとは物価が上がることと捉えているでしょう。
しかし、物価の上昇とはどういうことかを考えなくてはいけません。
物価、すなわちモノの値段の上昇とは、一時期のパラジウムのようなもので、需要に対して供給が追いつかないから値段が上昇したのです。
これが皆さんが認識している物価上昇のメカニズムですが、経済学では違う捉え方が本来の意味になります。
経済学では、お金の価値が減る/下がることで物価が上がることをインフレ―ションと呼びます。
下記のアメリカのマネー供給の推移を表したグラフをご覧ください。
今回のようにお金を過剰に供給するとお金の価値が下落します。
それはアメリカ国内の場合はドル安を招きます。
ドル安になれば金の価格は上昇するというのは、皆さんもご存知の事実です。
すなわち、インフレとは過剰なマネーの供給から発生するというのが経済学の考え方です。
プラチナを例に、マネー供給と需給・両物価上昇の違いを説明
需給から発生する物価上昇が過剰なマネー供給からのインフレと何が違うのかといえば、市場経済では供給不足のものに対しては必ず代替品が開発され、補完されることになります。
例えばプラチナは環境問題への関心の高まりから触媒需要が爆発的に高まり、2000年前半に大きく高騰しました。
しかし、リサイクルや代替品である炭素が代用品として開発され、値段が落ち着いたのです。
このように需給要因による価格の高騰は、時間が必ず解決してくれます。
もちろん経済への打撃はありますが、お金の供給過剰よりも被害は少なくなるのです。
ところが、お金の供給過剰による物価の上昇は人為的に解決しなければなりません。
インフレの抑制と景気後退
インフレを抑える一番簡単な方法は、供給しすぎたお金をマーケットから回収することです。
しかし、これをやると大きな経済低迷が起きます。
つまり、今までは資金が潤沢にあり簡単に受けることができた融資が滞る状態になるのです。
売上代金の受け取りが3ヵ月先でもその間に銀行融資を受ければ企業経営は成り立ちますが、そのつなぎ融資が滞った場合、企業は倒産してしまいます。
ですから、ばらまいたヘリコプターマネーの回収と言っても簡単な話ではなく、歴史上で供給過剰のマネーを回収する時に経済が無傷だった試しはありません。
今回の供給過剰のマネーを回収する段になれば、必ず大きな景気後退が起こるのです。
つまり物価上昇、特にマネーの供給過剰によるインフレが遅かれ早かれ起こる可能性が高く、そして落ち着いたとしても回収に伴う経済的打撃が必ず起きるのです。
ゆえにヨーロッパを筆頭にインフレを極端に嫌がるというのが世界の趨勢になります。
金利とGDP、金価格のゆくえ
お金を供給過剰にしているのですから、【2】の金利は下がります。
お金の付加価値が供給過剰によってそれがそぎ落とされるわけですから、プレミアムであるその金利や利子は低下していくのが自然の流れです。
金利が下がれば金は買いになるのは今までに散々に説明してまいりました。
【3】のGDPに関してですが、GDPとは国内のモノの値段の総額のことです。
その値段が上昇していけばGDPは上昇するのに決まっている訳であり、GDPが上がれば、金の価格も上昇するということです。
つまり、金を動かす変動要因の【1】〜【3】まで物価が上昇すればすべて買い方向に行くわけです。
ゆえにインフレに金は強いということになるのです。
今金は買いか?
ここで皆さんは金は買いなんじゃないかと思うのではないでしょうか。
しかし、弊社は売りだと言っているわけで、話が矛盾していると思われる方も多いでしょう。
では、最新のアメリカのGDPを見てみましょう。
6月25日にアメリカの2020年1〜3月期GDPが発表されますが、コンセンサスは現状の5%マイナスと変化がありません。
つまり、上記の説明では【1】から【3】まですべてが買いの説明でしたが、【3】のGDPはマイナスなので金は目先が売りだと言っているのです。
さらにいえば、この1〜3月期のGDPはマイナス5%前後で確定しそうですが、次なる4〜6月期はさらに低くなると一般的に言われています。
これは4月から5月に日本もアメリカも経済活動が停止し、移動の自由が制限されたことから、最悪の数字になるのはおわかりになるでしょう。
GDPがさらに悪くなると金は…
2020年7月から先のGDPがさらに悪くなるとすれば、金の価格はどうなるか。
数字で見ても【1】ドルの値下がりは現在1%程度、【2】金利も誘導目標は1.25%しか下がっていませんが、GDPは30%のマイナスになると言っています。
となると【1】と【2】の要因で2%上昇ですが、【3】のGDPで30%のマイナスとなれば、差し引きでは28%程度の下落があるということになります。
さらにいえば、通常これだけお金を発行すればものすごいインフレが来るのが常道ですが、現状はモノが売れないので物価が上がっていません。
つまり、目先は売りになるのです。
これで本当にインフレが来なかった場合、現在の金のドル建てで1700ドル近辺の価格が大天井になる可能性もあるわけです。
それで買いを維持しているというのは極めて危険な行為だと考えます。
これから金を売るべきか買うべきか?
来るか来ないかわからない物価上昇よりも、今はまず間違いなく下がるGDPにかけたほうがよいというのが常識的判断になると思います。
つまり、物価上昇が本当に始まってから金を買い始めても遅くはないということです。
一番最初のグラフ、お金の供給を改めて見てください。
過去最高の供給量で何も起こらないわけがないとは思うのですが、あくまでも予測の類になります。
起こるかわからない予測よりも、本当に30%のマイナスかは別としてもGDPが下がることは間違いないでしょう。
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