2020年7月3日、中国の武漢のジュエリー会社にまつわる衝撃的な事件が発覚しました。
まだ詳細は伝わってきていませんが、今回は大枠での解説をしていきます。
金凰珠宝巨額偽装金事件
中国、武漢にあるアメリカのナスダック上場の金凰珠宝(武漢キンゴールドジュエリー)の資産である金塊すべてが銅メッキであることが判明しました。
詳細は以下の記事をご覧ください。
注意してほしいのは、上の記事は客観性を担保していないことで有名な新聞社のものであり、下の記事はどこまで調べたのか(おそらくネットで調べて継ぎ接ぎした)不明ですので、事実を担保しているとは言い難い点です。
https://www.epochtimes.jp/p/2020/07/59058.html
引用元:大紀元時報日本
引用元:COINPOST
この事件の何が問題なのかを解説していきます。
お金を借りるときの大前提
日本にしろアメリカにしろ、新規株式上場は成功者の証と捉えている方がほとんどでしょう。
理由は、株式を発行することで一般から公募でお金を借りられるからです。
ご存知のように株式投資とは投資者が企業に出資することであり、平たく言えば企業にお金を貸すことになります。
個人対個人でお金を貸す場合、ほとんどの人は返金されることを期待して貸しますが、株式市場では見ず知らずの他人にお金を貸すことと一緒です。
そのため日本のマザーズにしてもアメリカのナスダックにしても、会社の保有している資産の提出を義務づけます。
その会社が経営不振になっても、その資産によって経営が存続するか否かを投資家が判断できるようにすることが証券取引所の役目です。
もちろん、年間売り上げや利益などの決算書類を提出するのも上場企業の義務になります。
しかし、この資産や売り上げ、利益がデタラメだったら投資家は自己責任で投資ができません。
誰がウソっぱちに資産を貸すでしょうか?
ですから、日本やアメリカで自分の会社を上場させることは大変なステータスになるのです。
資本主義の根幹を揺るがす事件
株式上場とは、単にお金を借りる相手を銀行から投資家に変えただけであり、借金をしないと会社が経営ができないということです。
ただし、皆さんがイメージするのは買い物などに使って将来のお金を生み出さない借金でしょうが、まともな企業は借金があるのは当然で、将来お金を生み出すか否かがよい借金か悪い借金かの境目になります。
例えば、今回の10万円の特別給付は政府の借金でまかなわれていますが、給付しなければ経済的に行き詰る人が多発し、結果として税収が減ることになれば困るのは政府です。
わずかな金額で将来も長きにわたって税金を納めてくれるのであれば、借金をしてでも国民に給付したほうがよいと政府が判断して実現したものになります。
ともかく、お金を貸す人にはありえないことを金凰珠宝はやりました。
とんでもない不正であり、資本主義の根幹を揺るがす事件です。
事実とすれば金凰珠宝の敗訴は決定的
株式投資の基本は自己責任ですが、情報がきちんと公開されていることが前提条件です。
その情報がウソ八百というのは許せない事案であり、アメリカの投資家がこれで損をした場合、その会社や証券取引所に損害賠償を請求できます。
すなわち敗訴は決定的です。
金凰珠宝の取引を行っているナスダックは、まだこの事実を掌握していないと思われます。
提出した証券取引報告書が捏造であればすぐに取引停止、日本では注意指定銘柄に移行されるでしょう。
ありえない中国企業たち
問題は金凰珠宝だけではなく、今年話題になった中国で「第二のスタバ」と呼ばれるラッキンコーヒーも年間の証券取引報告書未提出のためにナスダックの上場廃止になっています。
実は、今では有名になったバイドゥや阿里巴巴(アリババ)といった中国企業も過去に偽装の報告書によってアメリカ国内で大きな問題となりました。
クリントン元大統領などは当時、「ウソつきがアメリカ人の財産を詐取した」とはっきり明言しています。
そのくらいの重罪ということを承知していまだにこういうことをやる、これが中国なのです。
共産党と企業幹部の関係
中国に出資する会社は、必ず中国企業と合弁になっていることはご存知でしょうか。
トヨタや日産にしても現地企業と合弁して違う社名になっています。
これは、共産党が会社の人事に介入するためであり、トヨタや日産のような巨大企業では、その地方の大物幹部が会社の幹部(書紀や総経理)として経営に加わるからです。
今回の金凰珠宝の経営者は元軍関係者ということで、共産党の幹部の一人だと思われます。
複雑に絡む共産党内の派閥争い
この問題をややこしくしているのは、金凰珠宝の本社が今回の新型コロナウイルスの発生源である武漢にあり、この地が江沢民閥の地域だという点です。
武漢で新型コロナが発生するやいなや、党幹部が更迭されたのもこれが理由です。
反対に、香港の行政長官がさまざまなデモや暴動でも更迭されないのは習派閥の影響になります。
ご存知のように中国では習近平の反腐敗運動という反体制派閥、主に江沢民派の粛正に動いています。
この金凰珠宝のオーナーが江沢民派閥だとすると、当初の金は本物だった可能性があり、それを江派の資金に回された可能性もあるということです。
ここにお金を貸したのは主に習派閥の銀行やシャドーバンク、ファンドであり、それが焦げついたという問題になるのです。
どれだけの問題なのか、皆さんもお気づきになってきたでしょう。
中国の準備金は確かか?
金の生産世界1位は、すでに南アフリカでもオーストラリアでもなく中国になります。
すなわち共産党の幹部であれば、自分やそのほかの利権者が所有する金などを入手することは可能なのです。
しかし、その入手可能な金がすべて偽物ということは、そもそも本当に金が中国で生産されているのかという疑問が湧いてきます。
下記のグラフは中国の金準備です。
今回不正が発覚した金は83トンで、1948トンのうちのたったの0.04%にすぎませんが、グラム7000円とすればどれだけ巨額になるかおわかりになるでしょう。
もっと言えば、0.04%の金さえも偽装しなければならないほどの金がないのかということにもなります。
中国の準備金が非公表だった理由
下記のグラフは2000年からの中国の金準備になります。
2004年から14年くらいまで、中国では金準備が非公表でした。
その間の数字は推測であり、なぜ非公表であったのは知る由がありません。
今回のような問題があったから非公表だった可能性があります。
中国の問題はたいていの場合、対外的ではなく内政です。
理由は対外的なことよりも、むしろ国内の統治にコントロールを失いそうだからです。
昨今の中国情勢を見るとアメリカと経済が切り離されることが世界のトレンドとなっており、ますます金の保有の重要性を増しています。
アメリカと経済を切り離されるということはドルとの切り離しです。
各国の通貨はアメリカドルの信用次第で価値の上昇、下落が起こっているのであり、結果としてウソばかりの人民元に信用が集まるわけがないので、その信用の補完として金準備が必要なのです。
アメリカの中国離れは否応なく加速
今回の金凰珠宝やラッキンコーヒーは資本主義、自由主義の根幹を揺るがす事件であり、アメリカにとっては信用ならない国という評価です。
ゆえにアメリカの中国離れはトランプ大統領がいてもいなくても加速するでしょう。
一方で中国では当たり前の商習慣です。
契約書に記載していても、気分が変わって提出しなくても、そして偽装であっても大して問題はない、ダマされた方が悪いという考え方になります。
こういう文化圏とは、我々はまともに交流ができません。
しかし、日本も1990年代までこういう考え方が支配的でしたから、中国を蔑視するのは話が違います。
日本では2000年代に入ってから政府のコンプライアンスという運動が始まって初めて契約書の重要性が認識されてきたのです。
ダマす相手はアメリカ人からアジア人へ
日本もできたのだから中国もできると思うのですが、共産党政府のやっていることはナスダックでの上場を廃止して香港で上場するということです。
つまり、ダマし取る相手をアメリカ人ではなくアジアの人に切り替える戦略です。
中国風の商習慣は香港では違和感なく受け入れられることがほとんどですので、「自分たちの何が悪いのだ?」という意識でしょう。
どちらにしろ、今後もファーウェイなどのアメリカでの上場も難しくなってくると思われます。
中国企業など叩けばいくらでもホコリが出るような状態です。
中国からすれば大した偽装ではなくとも、アメリカにとっては損害賠償のリスクがあるとんでもない事件です。
この両国が仲良くやっていけるとは、逆立ちをしても考えられませんよね。
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