2020年7月12日の週から、アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)が再び緩和量を増やしています。
今回はこの問題の考察するとともに、金価格の行方を追っていきます。
FRBの緩和量増加と株価の関係
新型コロナ禍によって、FRBは2020年3月から金融緩和という名のお金のばらまきを行っています。
お金が増加すればその価値が減ることになるので、株価は不景気にもかかわらず上昇、金も高値を更新していく形になります。
ココが今回の特異な箇所と言えるでしょう。
下記はFRBのバランスシート(総資産)です。
上記のグラフだと記されていない7月5日以降の最新発表は以下の通りになります。
上段の「Level」の欄の左が7月6日からの週、右が7月13日から週の数字です。
Level $6.921 T $6.959 T
Total Assets – Weekly Change $-88.3 B $37.9 B
Reserve Bank credit – Weekly Change $-60.5 B $-34.1 B
先週と比較して370億9000ドル、FRBのトータルアセット(総資産)は増えています。
ここに株価を重ね合わせて比較してみましょう。
株価はFRBの資産増大によって支えられ、それを止めると軟調になります。
FRBの総資産の発表は木曜日に行われますので、ここからマーケットは軟調から堅調に転じているのです。
FRBの緩和量増加と金価格の関係
金も同様、お金の発行が増えればお金の価値は減るので、相対的に価格が上昇します。
下記は金のドル建ての動きです。
7月16日の木曜は軟調でしたが、発表後は堅調に推移するようになりました。
つまり、今のマーケットはFRBや日銀の金融緩和によって推移すると言えます。
もちろん、そのほかの価格変動要因である【1】ドル、【2】金利、【3】GDPによっても動きますが、あくまでも現在のメインは金融緩和ということです。
今後の展開のヒント
金融緩和がこれから増えていくかどうか。
円建ての金の場合、日本銀行の統計はアメリカのFRBのように毎週ではなく毎月の発表になるので何とも言えません。
ですから、アメリカのドル建てを中心に解説してまいります。
今後の展開のヒントは、先に挙げた表にあります。
Level $6.921 T $6.959 T
Total Assets – Weekly Change $-88.3 B $37.9 B
Reserve Bank credit – Weekly Change $-60.5 B $-34.1 B
1段目と2段目の見方は前述しました。
では、3段目の意味は何かという問題です。
わかりやすく解説すると、FRBの当座預金になります。
日本語での当座預金とは、小切手の支払いや振込といった決済用のお金の出し入れが激しい預金のことです。
この当座預金の量が先週も減り、そして今週も減っていることにカギがあります。
この決済性預金の量を増やすことをマネタリーベースコントロールと言い、現在の国際的なコンセンサスです。
もちろん、これはFRBの怠慢ではなく、増やそうとしても追いつかないのが現状になります。
FRBの当座預金減少の2つの解釈
FRBの当座預金の減少には2つの解釈が成り立ちます。
【1】
一つ目は、銀行融資が再び膨らんでいるという解釈です。
つまり、アメリカでも新型コロナウイルスが再拡大になっていますが、経済活動も拡大しているので融資が増加しているという解釈になります。
【2】
もう一つの解釈は、経済が回復し始めて倒産する企業が増えている可能性を示唆しています。
現時点で上記のどちらのシナリオかは何とも言えませんが、先だってはバーニーズ、また日本企業では無印良品のアメリカの会社が倒産していることが報じられました。
これは完全な倒産ではなく、法律的には民事再生と言います。
完全な倒産に対し、民事再生では法人や会社は存続し、スポンサーを集めて会社を再建するというのが違いで、一般的にはチャプター11と言われます。
つまり、株価が高いうちに会社を再生させ、スポンサーを募りやすくしている側面があるのです。
最悪を想定して最善の防御策を
リーマンショックの最初の兆候としてフランスの国営銀行であるソシエテジェネラルの経営不振が2008年の6月に起こり(1)、結末として9月にリーマンブラザーズが破たんしました(2)。
現状、経済は落ち着いているように見えますが、リーマンショックの例でもおわかりのように、崩落は確実に進行していると推定されます。
つまり、最初に書いた方のシナリオは非常に楽観的ですが、実際は二番目の最悪のシナリオの可能性も十分にあることになるのです。
この場合、GDPが大きく下がることを意味しますので、金価格の下落を意味することになるのです。
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