今回は、アングロサクソン思想とそれにまつわる基軸通貨、そして金との関係について説明します。
エリザベス女王がポンド硬貨に描かれている意義は、自由と公正を旨とするイギリス国教会(プロテスタント)の象徴だからです。
この理念を端的に言うとアングロサクソン思想になります。
イギリスとプロテスタンティズム
今回は、前回のコラムを踏まえた上でお読みいただけると理解が深まります。
さて、前回のおさらいになりますが、女王エリザベス1世率いるイギリスの海軍は、1588年にカトリック国であるスペインの「無敵艦隊」に勝利しました。
これにより、それまで国内で続いてきたキリスト教のカトリック派とプロテスタント派の争いに終止符を打ち、国家統合の象徴であるイギリス国教会を安定的に打ち立てたことが、ポンド硬貨の裏面にエリザベス女王の肖像が描かれている理由です。
カトリックが罪の免除を謳って庶民に免罪符を売りつけお金儲けをしたのに対し、カトリックは活版印刷による『聖書』の普及を通してキリスト教を庶民のものにしました。
プロテスタントの思想には、法王や司教といった特権階級が握っていたキリスト教を庶民のものとしたことから、平等と自由、そして伝統を守り抜くだけではなく新しい考え方を取り入れる姿勢が含まれます。
ちなみにアメリカの民主党はリベラル、共和党は保守と言われますが、それぞれプロテスタント的、カトリック的とも言えるでしょう。
イギリス人とアメリカ人の行動規範であり、国是とも言ってよいこの自由、平等、公正という発想をアングロサクソン思想といいます。
アングロサクソン思想と産業革命
アメリカで人種差別がいまだに行われるのは、白人以外にはアングロサクソン思想が理解できないという意識があるからです。
そういう潜在意識を持っているのに、中国の香港やウイグル、モンゴル弾圧を批判するのは矛盾していると感じられる方も多いでしょう。
しかし、根本的に自由と平等、公正、正義はアングロサクソン以外には理解できないと考えているので、中国に対しては人権外交と称して平気でそういうことができるのです。
このアングロサクソン思想に端を発し、エリザベス1世治世下以降に産業革命が起こり、工場での大量生産を拝啓に膨大な富を手に入れ、イギリスは7つの海を制する大英帝国を建設することができました。
基軸通貨を経験している国家は英米のみ
過去に基軸通貨を擁し、世界の権力を握ったのはイギリスとアメリカのみです。
この両国の基本発想がアングロサクソン思想なのですから、世界にもそれが強要されます。
しかし、これを背景とした人権外交の中身とは、アングロサクソンが絶対的優位であり、アジア人、黒人、ヒスパニックは基本的には自分たちの下にあるという発想です。
もちろん、あからさまには口にはしませんが…。
トランプ大統領が誕生したのにはこうした背景があります。
アングロサクソンから言わせれば、トランプ大統領は当たり前のことしかやっておらず、何をやってもアングロサクソンは最上位に立つ人間だからという理由で支持を取り下げません。
つまり、私たちが認識している自由や平等、公正、正義という認識とアングロサクソンの言う自由や平等、公正、正義には違いがあるのです。
英米両大国が世界経済を牛耳っている!?
アメリカがよく人権外交と言いますが、皆さんは違和感を覚えませんか。
しかし、アングロサクソンにとっての自由や平等、公正、正義とは彼らにとって都合のいいものであり、私たちの認識する自由や平等、公正、正義は万人に等しく与えられるものですから解釈が違って当然です。
問題はこのアングロサクソン思想を背景に英米両大国は世界を制し、経済も牛耳っている事実です。
基本的にはアメリカに都合のよい自由、平等、公正、正義ですから、わがままと感じられるでしょう。
しかし、実際に世界のガキ大将はアメリカであり、子分である日本や中国、そのほかの国々は言うことを聞かざるを得ません。
基軸通貨を補完するものが金
中国が2030年までにアメリカのGDPを抜くという説があります。
しかし、おそらく基軸通貨はドルのままです。
なぜなら、世界は人民元で借金をしません。
貸したお金は返してほしいからドルで借金します。
ですから、いくら中国が人民元を推奨しても、乗り換えられないのが実情なのです。
何が言いたいかといえば、現在の通貨制度は基軸通貨を背景に成立しているのです。
そして、その基軸通貨の信用を補完しているのが金になります。
ほかにSDR(特別引出権)や仮想通貨もありますが、金ほどメジャーなものはありません。
万が一基軸通貨が人民元に変わっても、信用補完を金が行うことは間違いないでしょう。
金は自由、平等、公正、正義の守護者
結果として金には自由、平等、公正、正義が理念としてあることがご理解いただけましたか。
しかし、その理念はガキ大将によって変わるということです。
そう考えると、わがままな英米、いまだに一党独裁権力で人権を蹂躙する中国がガキ大将として適切でしょうか。
基軸通貨とはガキ大将によって世界の方向性をも変えますし、また、その信用を裏付ける金は私たちにとってとても重要なものなのです。
コメントを残す