読者の方から「このコラムでは『金は目先調整が必要だろう』と記していますが、実際は価格が上昇しているじゃないか」というお声をいただきました。
今回はこの点について検証します。
現況のマーケットの内容
今、金と株が買われているのは金融緩和が理由というのが市場のコンセンサスです。
以下のグラフはアメリカの中央銀行、FRB(連邦準備制度理事会)の総資産になります。

次のグラフは日本の中央銀行、日本銀行の総資産です。

日本銀行は月次、FRBは週間ベースであることに注意してください。
中央銀行の総資産とは、おカネをばらまいているから増えるのであり、結果として株価と金がそれに合わせて上昇しています。
下記のグラフに見えるように、新型コロナで株価(折れ点線)が急落しても日銀が金融緩和、すなわちバランスシート(棒線)の拡大を行うと急速に戻しています。

これが現在のマーケットの大まかな内容です。
金融緩和は買い?
金融緩和は買い、この見方は長期的に見れば正しいのです。
ただし、長期的な見方はあくまでも長期的な見方。
では、アメリカのFRBが最近緩和を減らしていることをどう説明するのか。

FRBのバランスシートは6月上旬をピークに資産を減らしてきており、これだと株価や金は下がってしまうことになります。
ところが、一時的に株価や金は軟調になりましたが、すぐに金は高値を更新するような状態です。
となると金融緩和=金、株買いの方程式は本当は金融緩和≠(ノットイコール)金、株買いではないとまでは言いませんが、因果関係が成立しているわけではないことになります。
長期的視点と短期的視点

ロジカルな人は、長期と短期の見方を分けて考えます。
どういうことかといえば、新型コロナ感染拡大の被害で経済が停滞するということが短期的な見方。
ところが長期的な見方では、20世紀のスペインかぜの大流行以降、世界的なパンデミックが起こらなくなり皆忘れていましたが、人類の歴史が感染症との戦いであったという事実を想起させます。
第一次大戦終結の本当の理由はドイツが降伏したからではなく、実際の死者数を見るとスペインかぜ罹患による死亡者数のほうが戦死者数をはるかに上回っています。
つまり、新型コロナウイルスの感染拡大によって短期的な損ばかりが強調されますが、長い視点で見れば、感染者数によって歴史が塗り替えられるのは当たり前だったのです。
金を長期的に見ると…
短期的には損だけど長期的に見れば得なことは必ずあり、逆もまたしかり。
これをきちんと分けて考えなければいけません。
今回の金は短期的には上昇しています。
金の価格変動要因は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP
です。
【3】のGDPが日米ともに下がるのに金価格が上昇するのは、おそらくマーケットの勘違いだろうと推測できます。
金価格上昇の理由は金融緩和以外にある

長期的には金融緩和が続く限り金や株は買いということになります。
しかし、これだけ日本でも感染拡大が続き、経済活動の停滞が必至な状況で、現在の株価が高いままなのを誰もまともに説明できません。
株価は半年後の経済を占うと言いますが、半年後も景気がいいのでしょうか。
今年の夏の売り上げと冬の売り上げ、それ以上になっているのであれば株価も納得ですが、悪いのに前と同じ水準を保っているなんてあり得ません。
おまけに感染拡大は、スペインかぜやペストなど過去の世界的パンデミックのケースを見ると9月から第二波になるのに、株価や金の意味するところがわからないのが通常です。
ましてやFRBが金融緩和を減らしているのに「買いだ」なんて叫んでいる人たちを見ると理解に苦しみます。
今の金の高騰は、はっきり言えば緩和量を増やしていた時よりも上昇率がひどいことになっているからです。
これで緩和=金買いなんて口が裂けても言えません。
つまり、現在金が史上最高値を更新している理由は金融緩和ではなく、他にあるという推測が成り立つのです。
今金相場を動かしているのはドル
金が史上最高値を更新している理由、それは以下のドルインデックスに集積されます。

ドルの価格は金の価格変動要因【1】に相当するものであり、結局は金融緩和でなくドルの変動によって金相場が動いているのです。
金の強気の根本は金利の低下で、金利がゼロになれば現金を持っていても金利がつかないので、パフォーマンスのよい株や金、不動産などに資金が流れるのは必然です。
日本でもアメリカでも現在住宅が売れに売れまくっていますが、これは非常に正しい投資行動と言えます。
金の強気、将来グラム1万円とか言う人たちの根拠とは、金融緩和ではなく低金利です。
しかし、その金利は各国の中央銀行は当面の間動かさないと言っているので、それが今の金の急騰劇を演じているわけではありません。
去年と比較してもドルが5%も下落してドル安なので、金が買われているのです。
「金が買い」と言う人たちの大いなる勘違い

大いなる勘違いは、金買いの理由が金融緩和にあると思っている投資家の、FRBが2021年まで金利をゼロにすると明言しているから年内は金は高いままという理屈です。
日本政府は財政のプライマリーバランスの正常化を2025年から2027年まで延長する見通しを発表しました。
なぜ財政のプライマリーバランスの時期を明示するのかといえば、国債の利払いを低減する時期を明示しているのです。
すなわち、それまで金利を上げませんというメッセージですが、ほとんどの投資家はそれさえも理解していないのでしょう。
以前、金融庁が老後資産は2000万円必要だと発表しましたが、これに金利5%で100万円の収入に対して年金が150万円あれば、贅沢しなければ生活できるということが真意でした。
金融緩和はFRBが資産を減らしている事実を見れば間違いなのに、それを正しいと言い、その上に金の上昇がますます加速し年内は金は買いと思い込む、このままでは重症患者になるでしょう。
ドル高への転換点は近い!

金価格の変動要因【1】のドル安が今回の金急騰の原因であると認識している人なら、ドル安が止まれば金も下落すると考えます。
では、ドルの下落は何から始まるのかといえば、7月31日で期限切れになったアメリカのコロナ給付金の動向次第です。
今回の給付継続に関して共和党は1兆ドル、つまり105兆円の緩和を行うと発表していることがドル安の原因になります。
現在のアメリカ議会の情勢は、共和党が至らない点を修正するだけですが、民主党が選挙を前にごねて有権者にアピールしている状況です。
とは言え、もう少しでまとまる可能性が高いと漏れ伝わっています。
そのドル安は1兆ドルが庶民に供給されれば、すべて一気に需要に変わるでしょう。
それがドル安からドル高の転換になるわけです。
そこで金の急騰が終わる可能性がありますが、金融緩和は行っているので買い屋さんたちは買ったまま。
下がってもすぐに上昇すると考えているのでしょうが、それが非常に危険な見通しだったことを思い知ることになるのではないでしょうか。

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