読者の方に「こういう記事があるけどどうなのか?」というご質問をいただきました。
今回はその解説をしていきたいと思います。
問題のWSJ日本版の記事
以下がご質問の記事です。
「金の採掘、困難かつ高コストに 相場が最高値圏で推移も」と題しています。
https://jp.wsj.com/articles/SB11507156727757504149004586573711043727004
引用元:ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
さて、石油ショックという言葉を若い人も聞いたことがあるでしょう。
これによって石油の供給が行き詰った1970年代、石油は1990年代にはなくなってしまうだろうと言われました。
しかし、今は2020年ですが相変わらず潤沢に石油は供給されています。
「ウォール・ストリート・ジャーナル日本版(WSJ)」の記事にはやたらと「希少金属」という部分が目立ちますが、石油も希少な天然資源だったのが、今やおカネを払わないと引き取ってもらえないような値段にまで沈み込みました。
要するに、この記事は『?』と感じるのです。
金の枯渇を恐れる背景にあるもの
石油は私たちの生活にならなくてはならない商品です。
ゆえに世界中のマイナーたちが必死に探した結果、アメリカのシェールオイルのように無尽蔵な在庫があるくらいの量が発見され、マイナス価格になるくらいの結果を生みました。
石油がこうなったからといって、金もそうなるとは限りませんが、例えば資源弱小国の日本も、かつてマルコ・ポーロの『東方見聞録』では「黄金の国」と謳われたくらい金が産出され、銀もアジア有数の産出国でした。
こういう歴史があるから、金が取れなくなるかもしれないという都市伝説も生まれやすいのかもしれませんが、そんなことはなかろうと思います。
『えっ?』ですよね。
地上から金がなくならない理由
理由は、金は紀元前から世界中にあり、絶滅した動物はたくさんいますが、天然資源で地球上から消滅した鉱物資源は歴史上一切ないからです。
石油は自動車のガソリンのように生活になくてはならないものですが、むしろ金は別になくても今の生活水準は維持できます。
一部パソコンやスマートフォンにも使われていますが、これらも白金の触媒のようにいずれ代替品が開発されるでしょう。
そもそも本当に足りなかったら「金箔のお酒などで資源のむだ遣いを止めよ!」なんて、おせっかいな環境主義者の猛抗議によって自粛の動きになるでしょう。
汚い話ですが、人体に金が入っても体内で消費されるわけでもなく、排泄物と一緒になって体外に出てきます。
要するに、一度産出した金は地球上からなくなることはないのです。
むしろ金はいつの日か余るのではないか?
ガソリンや灯油、ジェット燃料は消費すると消えますが、金は残ります。
つまり、それ以上に金の需要が伸びない限り、いずれ余るのは目に見えているのです。
その需要は中国人になるのですが、おカネ持ちになって、その使い道がないから退蔵しているだけの話で、価値が二束三文になっても保有し続けるとは思えません。
要するに、金が希少金属などというのは現時点では事実なのでしょうが、タダ同然になった石油同様、高すぎるものはいつか下がるのです。
金の採掘が高コストって本当?
金の採掘が高コストと「WSJ」の記事には書いてありますが、本当だろうかと疑問を持たなければいけません。
金鉱山を開発するのに必要なのは人件費、重機とそれを動かすガソリンや重油になるでしょう。
それらを見ていけば、高コストなのかどうかはわかります。
金採掘の人件費
世界最大の金生産国は、今や南アフリカでもオーストラリアでもなく中国です。
そこで、中国の賃金事情として中国の年収を添付しておきましょう。
中国の平均年収は年間7%程度上昇しています。
「そら見たことか、人件費が確実に上昇しているじゃないか」と言われる方も多いでしょうが、上記のグラフは人民元建てですので、これをドル建て1人民元=7ドル、そして1ドル106円として見てみましょう。
この結果は、日本円で137万円です。
中国人全体の平均年収が137万円だなんて本当?と言いたくなります。
中国の本当の人件費
以下はWHO(世界保健機関)の発表に基づいた新型コロナウイルスの国別感染者数になりますが、この中から中国の数字を見つけてみてください。
https://tradingeconomics.com/country-list/coronavirus-cases
引用元:TRADING ECONOMICS
実は、かつてWHOの発表に中国の感染者数は含まれていませんでした。
これは新型コロナ発生当初に中国政府が出した数字がかなり怪しく、議論を呼んだことから中国が公表を止めてしまい、その後、国際的な圧力を受けて最近になって再び公表するようになったという経緯があったからです。
しかし、ここに掲載されている中国の感染者数、8月20日時点での前日との変化数は、人口が1/10以下の日本よりはるかに少ない40人ほどの増加という、やはり怪しさに満ちたものになっています。
このほかにも中国が公表している感染者数には、数字的にどう見てもおかしな箇所が散見され、いつか機会があれば本コラムでも解説をしたくらいです。
これは、中国政府は人民全体の患者数など把握しておらず、1億人くらいの裕福な層のみを対象とした統計だということが理由と考えられます。
要は統計としての体をなしてはおらず、前述の平均年収のグラフも同様に怪しいものなのです。
中国の本当の平均年収がわからない理由
これには理由があり、中国には都市住民と農村住民、2つの人民の区別があります。
これは江戸時代の日本と一緒で、農民に生まれればずっと農民であり、生まれでその人の人格が決まってしまう典型的な封建主義体制なのです。
参考までに都市住民が農村住民になることはできますが、反対に農村住民が都市住民になることはできません。
これだけはっきりと身分差別をしている国もこのご時世に珍しいです。
要するに、上記の年収は都市住民の平均年収、しかも相当恵まれた上澄みの部分だけを切り取った年収になります。
人件費の高騰などウソっぱち
中国では約2割が都市住民であり、残り8割に当たる農民の年収は大抵100万円にも満たず、しかも年々下がっています。
なぜかと言えば、今までなら農地を耕作していれば生活ができる年収があったのですが、それを中国共産党が接収しているからです。
今、香港で強力に民主化運動が排除される背景にあるのは、本土で起こっているもっとひどい反体制運動です。
農地さえあれば普通に生活できていたのに、共産党にタダ同然の価格で取り上げられ、それこそ鉱山で働くほかないような人たちの収入が上がるかというと、当然上がるわけがありません。
こういうわけで、人件費の高騰によって金価格が上昇したなんて全くのウソっぱちです。
オーストラリアや南アなどでは多少上昇しているでしょうが、中国では都市住民の年収は無理にでも共産党は上げるでしょうが、農村からの出稼ぎ人民の年収が上がることはありません。
重機および燃料代値上がりのデタラメ
金の鉱山で必要なコストは人件費のほか、重機およびそれを稼働させるための電気やガソリン代になります。
石油価格がその代表格になりますので、ここ10年の値段の推移を見てみましょう。
この10年間、石油価格は下がり続けています。
これで電気代やガソリン代が上昇するのですか?
さらに言えば、車や重機の価格も大量生産できるものは、何でもこの10年で価格が下がっています。
インドのタタ自動車に至っては新車価格が20万円です。
この背景はいろいろあるのですが、ともかく金鉱山の経営に必要なコストはどんどん下がっているのです。
こんな状況で金ブームが長続きするのか?
そのほかには難しい内容は次回に譲るとして、金採掘の高コスト体質など真っ赤なウソです。
かつて石油がなくなると騒いだのと同様、この異常な高価格に正当性を持たせるために、無理やり作り出した珍説にすぎません。
金持ちになった中国人は、世界中の資産を買い漁ります。
その典型はビットコインで、一時200万以上になった後、現在は半値です。
中国国内での流通が一切禁止された一方で、今後も供給は継続的に増えますので、おそらくこれからもどんどん値段は下がるでしょう。
例えば不動産は、貸し出したり自分で住むなどの方策があり、保有しているだけで価値がありますが、金は保有していても価値を生み出しません。
おまけに金利もつかないという状態です。
これで金ブームが長続きするとは到底思えません。
皆さんはこの事実、どう考えますか?
コメントを残す