[全5回/Week2]アンティークジュエリー入門「ヨーロッパ編」

ヨーロッパのアンティークジュエリーがなぜ人気なのか?

アンティークジュエリーと呼ばれている多くは

製作年代:19世紀から20世紀初頭

製作地:イギリス、フランスを中心としたヨーロッパ

になります。

(ここからさらに時代が下がり1970年代くらいまでに制作されたものは「ビンテージジュエリー」「コスチュームジュエリー」と原則カテゴライズされています。

また19世紀以前のアイテムはほぼ一般的なショップにはほとんど出回ることはありません)

なぜ19世紀のヨーロッパで制作されたジュエリーがコレクションされるようになったのか?

その理由は全体の供給量が多いこと。

そしてクオリティの高いジュエリーが比較的手ごろな価格で手に入ることにあります。

その背景にはジュエリーの生産と流通の歴史を大きく変えた「デパート 百貨店」の登場があります。

売り子と対面で選べるデパートで経済に余裕のある平民たちがジュエリーを選ぶようになりました。

もはやジュエリーは王侯貴族たちだけが独占するラグジュアリーアイテムではなくなったのです。

時代の流れに対応したジュエリー職人たちはジュエリーを携えて宮廷を訪れるのをやめ、デパートに卸すようになりました。

より多くの人々の目に触れるようになったことで、ジュエリーは素材のクオリティと同じ、もしくはそれ以上にデザインが重要となりました。

同時にジュエリーの需要が広がったことで、一気に大量生産されるようになりました。

次にアンティークジュエリーのメッカといえるイギリスとフランス、それぞれの特色についてご紹介します。

アンティークジュエリー「イギリス」

フランスと並んでアンティークジュエリーショップやマーケットが多いイギリス。

かの地のジュエリーは大きく分けて3つの時代にカテゴライズされています。

ジョージアンスタイル

次に続くヴィクトリアン時代に比べると、段違いに希少価値が高いジョージアン。

時代でいえば18世紀、ハノヴァ―朝の国王ジョージ1~4世の治世のころです。

当時はジュエリーの素材となる金や宝石の産出量が少なかったため、ジュエリーの価格は途方もないほど高額になりました。

しかしその一方で素材の少なさを補うため、繊細でち密な金細工技術が発達しました。

また後期には恋人や故人の瞳を描いた絵をジュエリーにした「ラバーズアイ」などのセンチメンタルジュエリーが登場。

後のヴィクトリアン時代に大流行しました。

ヴィクトリアンスタイル

大英帝国華やかなりしころのヴィクトリアン時代は、のちの世に多くのジュエリーを残しました。

ちょうど産業革命によって世界を制したヴィクトリア朝(1837-1901年)にあたります。

ジュエリー素材となる貴金属が豊富に輸入され、一般市民もジュエリーをつけるようになったジュエリー大量生産のはじまりです。

急速に進む時代の進化に逆行した懐古趣味もこの時代の特徴で、額の中央に宝石を見せるヘッドアクセサリー「フェロニエール」など古典的なジュエリーも多く制作されました。

またヴィクトリア女王が亡き夫の喪中に身に付けたジェットを使用した「モーニング・ジュエリー」もこのころから登場しました。

エドワーディアンスタイル

19世紀の終わりから1920年頃までに製作されたジュエリーの総称です。

モダンで直線的なスタイルと曲線的で優雅なスタイル、両タイプに分かれる面白い時代です。

このころは産業革命による大量生産の反発から、18世紀を回顧する「ベル・エポック」の時代でもありました。

プラチナだけを使用し花や植物をモチーフにしたガーランドスタイル(花綱)が生まれたたのもこのころ。

ちなみに実際のエドワード王朝は1902年から1910年までの短い期間でした。

アンティークジュエリー「フランス」

ヨーロッパのジュエリーの歴史に中心に君臨してきたフランス。

フランス革命他激動の歴史の中、多くのジュエリーが市井に消え、数百年の時を経てまた現代のマーケットで売買されています。

18世紀 ロココ様式

マリーアントワネットの華麗な装いをほうふつとさせる、優雅なジュエリーが多く作られたのがロココ時代です。

しかしほとんどすべてがミュージアムピースか有名オークションの目玉商品となっています。

なぜならこの時代は路面店のジュエリーショップは皆無。

宝石や貴金属を使ったジュエリーはすべてが注文品なのです。

そして顧客は王侯貴族と富裕な大商人、もしくは地位のある聖職者に限られていました。

ボウノット 蝶結び」や「コレット・セット(現在の覆輪留めの初期製法)」などのエレガントなジュエリーが多くみられます。

気付け薬入れ「ヴィネグレット」のペンダントや、オペラグラスなどに装飾を施したものは、手に入れるチャンスがあるかも。

19世紀 ナポレオンスタイル、エンピールスタイル

フランス革命後の大混乱後、フランスは王政復古の一時期を経て一気にナポレオン独裁時代に突入します。

ジュエリーもその歴史を反映して、ロココ趣味やローマ時代の古代文明に着想を得たものなどさまざまなスタイルが登場。

またイギリスと同じく産業革命によって豊かな市民が増えたことでジュエリーの需要が急増。

ジュエリー大量生産の時代に入り、さらにベルエポックアールヌーボーの流れによって、多種多様なジュエリーが数多く制作されました。

番外編:アフリカンジュエリー「トゥアレグ」

世界中にコレクターが存在するアンティークジュエリーに「トゥアレグジュエリー」があります。

主にモロッコで暮らす遊牧民族「ベルベル族」の女性たちが身に付けるジュエリーは、今なおコレクターたち垂涎の的。

幾何学模様の銀細工、七宝細工、巨大な琥珀を連ねたネックレスなど、書籍も数多く出版されています。

当時のジュエリーにインスパイアされたハイブランドが、多くのコレクションを発表しました。

代表格はエルメスの「トゥアレグ」シリーズです。

↓ エルメス トゥアレグコレクションはコチラ

リファスタ 「トゥアレグ」

自分のスタイル優先で選ぶことが重要

アンティークジュエリーは、時代やエリアによって特徴やテイストが異なるものです。

また価格やコンディションも、重要な見極めポイントになります。

しかし一番大切なことは自分が欲しいと思えるモノを選ぶことではないでしょうか?

留め金が壊れたブローチでも、観賞用として手元に置きたいならそれもよしです。

またご自身のワードローブを思い出してみてください。

すべて同じテイストの洋服がそろっているわけではないはず。

アンティークジュエリーについても

ロココ調の繊細なつくりのフレンチアンティーク

に惹かれると同時に

どこか土の香りがするトゥアレグジュエリー

に魅了される事は珍しくありません。

体系的なコレクションをスタートする、というわけではないのなら出会いを大切に好みのテイストのものを選ぶことがベストです。

ヨーロッパ・アフリカのジュエリーに会いに出かけよう!

伊豆高原アンティーク・ジュエリーミュージアム(神奈川)

http://www.izukogen-navi.com/antique_jewelry_museum

ヨーロッパアフリカアンティークジュエリーのショッピングガイド

アンティークジュエリーショップや骨董店で手に入れることが可能。

ショップによって得意分野が分かれますから、リサーチは必須。

そして最大のおすすめがリユースショップのオンラインサイトです。

入念なチェックやクリーニングが完了しているので安心!

参考文献

  1. 「楽しいジュエリーセールス 」 早川 武俊
  2. 「コスチュームジュエリー」 別冊太陽 
  3. 「 アンティークジュエリー美術館」 別冊太陽 
  4. 「コスチュームジュエリーの世界」 田中元子
  5. 「世界の伝統装身具図鑑―神々の宿る銀」 露木宏
  6. 「日本の宝飾文化史」露木宏
  7. 「日本装身具史」露木宏編著

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