自民党総裁選に際し、現総理大臣である菅義偉候補の「少子高齢化を踏まえれば、消費増税を考えなければならい」という発言が物議をかもしました。
また、IMF(国際通貨基金)からも日本の消費税を将来的に15%へ引き上げるよう提言がなされています。
一方で新型コロナ禍における消費減税を主張する評論家も…。
今回は、この消費税の撤廃ないしは減税について、全体的な解説してみます。
確かに消費税は害悪ではあるが…
駐車違反の罰金は現在、1万5,000円ほどです。
以前は5,000-7,000円程度でしたが、値上げによってかなり違反が減りました。
消費税の原理もこれと同じです。
日銀の黒田総裁が「デフレマインドが抜けないから消費が、景気が拡大しない」と言い放ちましたが、買い物のたびに罰金を取られて、誰が好き好んでお金を使うのでしょうか。
しかも5%から8~10%に罰金を値上げして…。
一方でこの解決策として、一部の政治家や評論家が消費税の撤廃や減税を主張しています。
一見正しい主張に聞こえますが、実は目の前の事象の解決しか考えていない方法であり、大きな枠組みで考えたら、とんでもない内容を含んでいます。
国家財政の破綻うんぬんの問題は、また別の機会にゆずるとして、今回は全体的かつ根本的な点から考えてみましょう。
日本人の納税状況を俯瞰すると…
平成の時代から、グローバル化が進む中で終身雇用などの見直しが図られてきました。
問題は、これによって雇用市場の流動化が進行し、今や非正規労働者が正規雇用を上回るまでになった点です。
ほとんどの非正規雇用者の年収は所得税非課税の200万円以下、つまり過半の人は所得税を払っていません。
反対に言えば、正規労働者は勝手に社会保険料から所得税を給料から差し引かれますので、所得はガラス張りです。
国道や鉄道、飛行機なども皆税金の補助や運用によって動いています。
非正規雇用で税金を払っていない方が多数だとしたら、正規雇用の人たちはどう思うでしょうか?
消費税撤廃・減税が正しくない理由
国税がなければ経済は動かないのに、一方で毎年きっちり払っている人がおり、他方では一銭も払っていない人がいる、これが日本の現状です。
納税者たちは自らの努力によってその地位を得ているのに、なぜ納税していない人のためにまで税金を払うのバカバカしくなるでしょう。
これで日本の治安や経済の拡大は保証されるのかということです。
ゆえに、あまねく国民から徴収する消費税の発想が誕生しました。
消費税を減税したり撤廃したりすれば、世の中の不公平感が高まります。
消費税は1円も税を負担しない国民の救済策なのですから、財務省としては撤廃するわけにはいかないのです。
短期的には消費税撤廃はバラ色の社会をイメージさせますが、長期的には誰も税金を払わない暗闇の社会を想起させます。
非現実的なことをさもできるかのように主張しているのが、今の消費税減税や撤廃論者なのです。
問題の根幹としての法人税
また、労働市場の流動化は皆さんの給料を押し下げ、その利益は企業が享受しました。
一般的な企業の支出の6割が人件費に充てられるのですから、正規雇用者が減少し、コストの低い非正規が過半を占めることになった今、経営者は泣いて喜んでいることでしょう。
おまけにグローバル的に法人税が安くなっているからとして、法人税減税も行われました。
その上に企業の成長を支援するということで、借金をしてもゼロ金利です。
しかし、国の予算が減るとさまざまなところに支障が出ますので、法人税などを減らせば、どこかで徴収しなければいけません。
その徴収先が個人に来ているのです。
世界的に企業の法人税は低下気味ですから、これは国際ルールで法人税の取り決めを行わなければいけないのに、どこの国も我田引水で競って法人税を下げようとします。
消費税を下げるためには企業の負担を上げよ!
今のままでは、ますます企業のコスト負担は低下していくでしょう。
この問題の解決方法は、企業の税負担を上昇させるほかありません。
そうすれば勝手に個人の税負担は下がり、結果的には消費税も下がり撤廃という議論も財務省も飲むでしょう。
目指すべきは、どんな人でも所得に見合った税を負担する公平な社会です。
そろそろ企業の負担を増やし、庶民の負担を減らすべき時代に来ているのではないでしょうか。
世の問題の多くは低すぎる金利にあり!
どんなサービスにもコストがかかるのは当然であり、無料で享受できるものは本来ありません。
しかし、それがあることを証明してしまったのが持続化給付金や10万円の給付でした。
ほとんどの人が必要なコストを払っていないでしょう。
その原資は借金で賄われ、その借金のコストもゼロ金利ですからただ乗りです。
そして、その返済は企業の法人税ではなく、当然のように消費税に向く…。
こうやって考えていくと、今の世の中の問題は、低すぎる金利にあることがわかります。
金利が低すぎるから物価が上がらず、企業や国家は借金のコストが低いのでますます成長する。
そして、貧乏くじは庶民…。
これが1980年代のバブルのころですと、圧倒的に庶民が有利でした。
ただ、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)や日本銀行は、金利が上がる政策を取っています。
本人たちは上げさせないと言っていますが、これだけお金の価値が下がったのだから金利が上昇するのは当然です。
金は金利の低下が上昇の原因であり、それが上昇に転じたら金の価格は当然下がります!
この記事のまとめ
今回の記事では、確かに消費税は消費意欲を減退させる害悪ではあるが、現在における減税、撤廃は目先の利益のみを見た近視眼的な非現実的議論。
平成時代のグローバル化に伴う正規雇用の減少、非正規の増加から、今の日本の徴税状況は所得税を払っている国民と払っていない国民に二極化。
消費税はあまねく国民に課されている税という点で公平であり、所得税を払っていない人も払わざるを得ない救済策の一面も。
こうした状況で減税、ましてや撤廃をすれば、所得税納税者の納税意欲が減退し、長期的に見れば誰も税金を払わない暗黒の世の中に…。
また、問題とすべきは世界的に減税傾向にある法人税。
法人税を引き上げ、個人の税負担を減らし、誰もが所得に見合った税を負担する公平な社会を実現してゆけば、消費税の減税、撤廃の議論も本格的になってゆく。
こういう内容の記事でした。
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