今回は、金の天井価格が形成されたという理由を説明していきます。
これは、今までに当コラムで度々に説明してきたことによって説明ができるものです。
金価格の変動要因
金価格の変動要因は、
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP
になり、この3つの動きを確認することで説明が成り立ちます。
いまだに「夢よ再び、金最高値をチャレンジする」と吹聴する自称専門家連がいらっしゃるようですが、弊社に言わせれば「何もわかっていない」ということです。
以下の説明で、天井になる可能性を理解して、これがどうなったら再び金が高くなるのかを考えてください。
つまり、下がる条件がそろっているから下がると言っているのだけであり、この条件が覆されたら、再び新高値を取るとも言えるのです。
ドルの動きをチェック
ドルは、金価格を動かす重要な要素の一つです。
金はそもそも通貨の裏返しで、その通貨に信用がなくなれば価格が上昇するという相関関係を持っています。
すなわち、ドルの価値が下がれば金の価値は相対的に上昇し、逆にドルが上昇すれば金は下落となります。
では、ドル建て金(青)とドルインデックス(緑)のチャートを見てみましょう。
2000年前後に金の価格が安かったのはドルが強かったからで、反対に2019年から金が上昇したのはドルが弱くなったからです。
問題は、金が天井を構成するためにはドルが今後も上昇しなければいけないということが仮定条件になります。
ドルが上昇する根拠とは何か?
以下のグラフ、過去25年のドルインデックス(青)と金利(緑)の動きをご覧ください。
非常にわかりづらいのですが、金利が上昇するとドルも上昇し、金利が下がるとドルも下落するという相関が、金とドルの相関ほどではありませんが、あります。
以下のグラフは、ドルインデックス(青)と金利(緑)の動きを過去1年に拡大したものです。
新型コロナショックで金利が急低下するとドルも下がりましたが、その後ドルは独歩高になります。
これはアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が無制限緩和を行い、金利をゼロにした帰結で相関性がなくなっているのですが、少なくとも平時は金利が上昇すればドルも上昇し、反対に低下すればドルも下がります。
もっとわかりやいすのは、ドル円と金利の比較です。
下図は青がドル円、オレンジ色がアメリカの金利を表しています。
青の線が上へ行くということは、円安ですので相対的にドル高です。
ドル高になるとオレンジ色の金利は上昇になり、ドル安になると金利も下がります。
つまり、ドル高とドル安は金利に縛られている側面が大きいのです。
ですので、現在のアメリカはゼロ金利に据え置かれており、マイナス金利にする可能性も否定はできませんが、もろもろの事情を考えるとゼロ金利はあり得ません。
つまり、ゼロから下がないと仮定すれば、金利はこれ以上には下がらないということになります。
ゆえに今後はドル高になる可能性が高い、ドル高であれば金は安いということになるのです。
金利と金価格の相関
金は金利を派生しないというマイナス面の特徴のある金融商品であることから、金利が高いと金は安く、金利が低いと金は高いということになります。
現在の金利は日米ともにゼロ金利ないしはマイナス金利なのですから、金は高い状態にある、これはグラフを見ずともわかるでしょう。
以下は、金利と金価格の関係を表したグラフです。
金利(緑)が下がれば下がるほど金価格(青)は上昇しています。
そして、金利が史上最低を更新すると、金の価格も史上最高を更新しました。
見事な相関関係です。
金利の展望
金利の今後を考えていきましょう。
金利の変動要因は、
【1】物価
【2】政策金利
【3】財政赤字
の3つであり、このうち問題は【1】の物価です。
下記は青の棒グラフが消費者物価上昇率、黒の点線は金利になります。
物価が上昇すれば金利が上昇するのが観察できるでしょう。
問題はここ最近の動きで、新型コロナがひと段落した段階で物価が急騰しています。
しかし、金利は安く張り付いたままです。
物価が上昇しているのに金利は安いまま、これは政治介入によってFRBのパウエル議長が鼻高々に自慢をしていますが、この状態を放置しておくと経済はどうなるか。
バブルの形成、もしくは不況下の物価上昇、すなわちスタグフレーションが起こります。
こうなってしまう前にFRBは金利を上げざるを得なくなります。
今はまだコロナショックが落ち着いてないので金利を据え置くと発表していますが、2023年よりも前のどこかで引き上げざるを得ないでしょう。
金利が上昇すれば、金価格は下がります。
GDP成長率と金価格の関係
最後に、GDP成長率と金価格の関係をグラフで見てみましょう。
1つのグラフに並べることができないので、2枚貼り付けます。
上が金価格、下がGDP成長率です。
リーマンショック時に大きく金の価格が下がっていますが、同時期に金価格はマイナスになっています。
今回はちっとも下がっていない、つまり反映されていないということができます。
ゆえに金の価格が高すぎるとも言えるのです。
参考までに、アメリカの過去25年のGDP総額を見てみましょう。
2015年の初頭や2019年間1年間はGDPの上昇が大きいのですが、金の価格もやはり高騰しているのがわかります。
ところが現在、GDPの下げに相当する金の下げがありません。
もちろん低金利やドル安の影響もありますが、つまりは高すぎるということです。
中期的な視点で見ると…
金価格の3つの変動要因を分析すると、どれもこれも下げを示唆していることがわかりました。
これが中期的な見方になります。
しかし、GDPの拡大と金の価格が一致するのであれば、いつか新型コロナは終わるわけですから、再びGDPが拡大すれば金の価格も上昇です。
今回示したのは中期的な見方であり、10年や15年のスパンという長い目で見れば、アメリカは騰勢を強めることでしょう。
ただし、トランプ政権時代のように伸びることは考えられません。
そういった意味ではトランプ大統領の功績はものすごいと言えますが、しょせんインチキでぬり固められたものという評価もあるでしょう。
コロナ給付金も派手にやりましたが、よく考えれば選挙対策を見据えた大々的な国民への賄賂です。
この意味は、FRBを恫喝して金利を下げさせたという意味になります。
今の金相場はバブル
長期的にはGDPの拡大によって金価格が上昇する可能性も否定はできませんが、目先は金利安、ドル安、GDP低下のピークに達しているのに価格はちっとも下がっていないという状態です。
これは、投機の人気状態が高いままということに由来するものと思われます。
要するにバブルということなのです。
バブルは崩壊するものであり、現在の10%程度の下げではまだ崩壊とは言えるような状態ではありません。
つまり、いつも説明している金の価格変動要素から見ると、明らかに頭は打っているのに、なかなか下げないという状態にあるのです。
この記事のまとめ
今回の記事では、金価格を変動させる3つの要因、ドル、金利、GDPはともに金の下げを示唆。
すなわち現在の金相場は、本来あるべき価格より高すぎる、バブルと言うことができる。
そして、バブルは必ず崩壊するもの…。
ゆえに金価格は天上を形成した可能性が高いと言える。
こういう内容の記事でした。
ともかく、買うのであれば思いっきり下がったところを大人買いしたいものです。
100キロとか1トンとかをドカーンと!
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