「宮島達男/Tatsuo Miyajima」のアートスタイル
表現形式
映像
インスタレーション
表現ジャンル
コンセプチュアル・アート
「宮島達男/Tatsuo Miyajima」特徴魅力や評価ポイント
LED発光ダイオードを表現の軸としたアーティスト「宮島達男」。
発光する数字そして深い闇から構成されるインスタレーションを自国で鑑賞できる幸運に感謝。
ここでは宮島作品の特徴と魅力をひもといてみました。
特徴と魅力
もしかしたら現在「森美術館(東京)」で開催中の「STARS展」ではじめて「宮島達男」というアーティストの存在を知ったという人は多いかもしれません。
世界の美術界、国際アート市場での高い評価と比較すると、不思議なほど日本での知名度は不当に低いアーティストでした。
実際には東京の街には宮島デジタルアート作品がいくつも点在しています。
- 「ファーレ立川」の換気塔上部のデジタルアート「Luna」
- 「東京オペラシティ」の新国立劇場との間の階段に埋め込まれた「Time Passage」
どちらも光を失った夜に点滅するさまは、まるで生命が宿ったかのように見えてみる人の目を惹きつけて離しません。
※2018年を最後に「Relight Days」開催が終了しましたが六本木ヒルズけやき坂「Counter Void」も宮島ファンの聖地でした。
作品の中で点滅する数字は人の生の営みをあらわします。
そして死を意味するゼロは存在しません。
数字は点滅します、人の命が続く限り。
しかしかならずいつか死が訪れることもたしか。
闇に浮かぶデジタルカウンターと呼ばれる宮島作品のLEDライトの数字の群れ。
人間の普遍的なテーマ「生と死」をとりあげながらも、情緒表現を排除したしたデジタル数値は、生死を意識するに耐えられるだけの距離を私たちに与えてくれるのです。
評価ポイント
宮島達男一貫して「生と死」を「点滅する光(LED)と闇」で表現してきました。
- 「それは変化し続ける」
- 「それはあらゆるものと関係を結ぶ」
- 「それは永遠に続く」
という3つのコンセプトをかかげ、点滅するデジタル数字で生と死、人の営みのありようを作品を通して伝えてきます。
芸術活動に掲げるテーマとしては、何度かインタビューに答えているように多くのアーティストが取り組んできたオーソドックスといえるものです。
しかしそこに「LED」「デジタル・カウンター」などのツールを、そして仏教思想「輪廻転生」などの東洋思想を組み合わせた多くの美術批評家やコレクターたちが高く評価しました。
またアートというくくりからは外れるかもしれませんが、「点滅する数字」宮島作品は脳科学研究者たちにも注目されるようになりました。
当の宮島にとっても長年の疑問「脳が美をいかに感じるのか=人類共通の美の基準線」の存在について、脳科学者「セミール・ゼキ博士」との対話後確信するようになったという収穫を得た、とインタビューで答えています。
さらに「時間知覚」という概念と宮島アート作品との関係性は、「池上高志」「中野信子」ら気鋭の脳科学者との交流を生み、アートが持つ新たな可能性について私たちに気付かせてくれます。
「宮島達男/Tatsuo Miyajima」プロフィール
「病気がちな少年だった」幼少期
1957年東京に生まれる。
2度の大病を経て子供心に生と死について深く考えるようになる。
また「自分は長生きできない」と長いあいだ信じていたそう。
成長後に夭折した大正・昭和初期の洋画家「佐伯祐三」「青木繁」に心惹かれたのも、自分自身と重なるところがあったのだろうか。
また同じく若くして亡くなったフランスの画家イブ・クラインにも心酔。
クラインの「人体測定」をなぞるかのように、裸のモデルに顔料を塗って型を取った「形態採集」を行ったことも。
「もとは油絵を専攻する学生だった」青年期・学生時代
気分が落ち込みやすいことに悩んでいたがアートと接することで救われる中アーティストとして身を立てる決意を固める。
1984年 東京藝術大学美術学部油画科卒業
1986年 東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了
「オリジナリティを模索した」創作初期
積極的に個展をひらき作品発表につとめるも評価されず苦しんだ。
油絵ではなく、まったく新しい表現方法を確立しなければ生き残ることはできないと考えていた。
1987年ころオリジナリティーを表現するため「3つのコンセプト」に基づく作品を発表することを決意。
また表現手段としてLEDライトを採用。
(はじめてLEDを用いたのは1983年作「Human Stone」といわれている。コンクリートの塊にLEDを埋め込んで制作)
1988年ヴェネツィア・ビエンナーレ88で「アペルト88(若手作家部門)」に出品。
そのときのLEDインスタレーション「Sea of Time」によって国際的に知られるようになる
1990年~1993年まで 奨学金を得てニューヨーク、ベルリン、パリに滞在。
1993年にはジュネーブ大学コンペティションで優勝を果たした。
「LEDアートの代名詞的存在となった」創作中期
日本帰国後は精力的に個展を開催。
LEDインスタレーションの他映像作品など世界30カ国250カ所以上で展覧会を開催。
欧米のアート界、香港や中国などのアジア圏でも高く評価された。
1998年第5回日本現代芸術振興賞受賞
1998年ロンドン芸術大学名誉博士授与
「壮大さを増し続けるデジタルカウンター」創作後期・現在
20000年代からは大学で教鞭をとるようになった。
2006年から2016年東北芸術工科大学副学長。
2012年から2016年京都造形芸術大学副学長。
現在は両校の名誉教授をつとめながら自身のスタジオ「Tatsuo Miyajima Studio」を主宰。
グッズプロジェクト「type」と称したプロダクト販売(デジタル数字をあしらったストッキングやソックスなどの楽しいもの)をスタート。
そのほかオランダの「Elisabetta Cipriani Gallery]とのコラボレーションアイテム「タイム・リング」
「時の蘇生・柿の木プロジェクト」をテーマに描いた絵を手刺繍、100%オーガニックシルクで仕上げたスカーフなどの販売も。
「宮島達男/Tatsuo Miyajima」代表作
MEGA DETH(メガデス)
「ヴェネチア・ビエンナーレ1999」に出展された作品。
20世紀の総括として、人類が20世紀に行った大量殺戮をテーマにしている。
壁一面に青い光を放ち点滅する2400個のLEDランプ。
そして突然すべての光が一斉に消え、世界は闇に包まれる。
奪われた命に思いを馳せ息苦しい気分の後、また一つ二つと光が見え未来への希望の新たな道が現れる。
「Deathclock」「Death of Time」とあわせて三部作「デス・シリーズ」と呼ばれる。
30万年の時計
2020年森美術館で開催中のSTARS出展作品。
1987年に製作された初期作品で、宮島コンセプトのひとつ「それは永遠に続く」を象徴している。
LEDと電子回路と各種電線徐を組み合わせており、理論上は30万年以上の時を刻むことが出来る時計であるという。
全く新しい表現スタイルを模索した時期に終わりが見え、自身のオリジナリティの確立に成功しつつある時期の作品とみると灌漑深い。
Sea of Time-Tohoku 時の海-東北
1988年に作られたデビュー作の進化系となった作品でこちらもSTARS展に出展。同展のメイン作品となった。
闇の中にあらわれる巨大なプールには3000個のLEDカウンターが置かれ、1~9までの数字が点滅しながら現れては消え、そして又現れる。
2011年に起きた東日本大震災亡くなられた方々(多くは津波によって海に消えた)の「永遠の命の光」という願いと祈りを込めた展示。
制作には遺族や東北の子供たちも参加し、カウントするスピードのタイム設定などを行っている。
Floating Time
1999年に終末期にある患者への精神的ケアを目的とした異色の展覧会「時の浮遊 ホスピスケア」で発表された作品。
PCでコントロールできるCGを導入したことで、おなじみの0から9のデジタルガジェットを空間に浮遊させることを実現。
これまで床面や壁面の平面表現に限定されていたデジタルカウンティングを、鑑賞者が存在する空間全体に時間の流れそして生命があらわれては消えるイメージを表現できるようになった。
宮島が提唱する「ART in YOU=芸術はあなたの中にある」、人生の中での出会いやこれから遭遇する生と死について考えさせられるきっかけとなる作品。
「宮島達男/Tatsuo Miyajima」オークション落札情報
「CHANGING TIME WITH CHANGING SELF – BLUE WIND」 2,900,000香港ドル
2011年4月4日 サザビーズ/香港
点滅する数字が生み出すリズムは心臓の鼓動であり生命そのもののシンボル
地球に吹く風の中で一人一人の命が生きるさまに勇気が与えられる
180×300cm
「TIME GRID」 182,500米ドル
2012年5月10日 サザビーズ/ニューヨーク
規則的にグリッド(格子)上に並ぶ数字は整然と並びながらも不規則に点滅している。
作品があらわす対象が人やその生命を超えて、社会全体の動きあるいは神羅万象まで表現しているようにも思えてくる。
165.1x 177.8 x 10.8cm
「b.1957」 2,900,000香港ドル
2010年11月27日 クリスティーズ/香港
鉄骨とガラスの世界に数字が桜のように舞い降りる。
発光ダイオードの光に照らされながら。
150×200 x10cm
「b.1957」 1,840,000香港ドル
2014年11月22日 クリスティーズ/香港
上記と同じモチーフだがこちらは背景が「漆黒の闇」
150×400×8cm
「宮島達男/Tatsuo Miyajima」作品と出会える場所
原美術館(東京) ※2020年12月に閉館予定
「Time Link」(1989)
東京オペラシティー(東京)
大階段にある「Time Passage」(1996)
東京都現代美術館
「Keep Changing, Connect with Everything, Continue Forever」
(それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く 1998年)
ベネッセアートサイト直島
「角屋」Sea of Time
「宮島達男/Tatsuo Miyajima」の最新トピックなど
2020年の宮島達男に関する最大のトピックスといえば
「STARS展 現代美術のスターたち 日本から世界へ(東京六本木ヒルズ森タワー53階「森美術館」)」
です。
コロナ感染拡大防止のため開催が危ぶまれながらも無事にスタート!
「草間彌生」「李禹煥(リ・ウファン)」「村上 隆」「奈良美智」「杉本博司」ら現代アートのビッグネームを一堂に介した展覧会はおそらく後にも先にも今回限りでしょう。
アーティストごとに独立した空間が用意され、全く異なるアート空間(しかも間違いなく世界の最先端を行く最上クラスの現代アート)を存分に楽しむことができます。
アーティストのフィルターを通すと世界はこんなにも多様性に満ちていたのだと気づかされます。
2021年1月3日まで開催され、しかも会期中は無休です。
火曜日以外は22:00(最終入館 21:30)まで鑑賞可能ですから、多忙な方も何とか繰り上げてぜひ足を運んでみてください。
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