トルコ危機発生の源流
連日、経済ニュースだけではなく一般のニュースでもトルコ危機(トルコショック)が報じられています。
今回、再びトルコに準備金売却の可能性が出ていますので、その解説をしていきたいと思います。
「トルコ危機はどこから発生したのか?」と問われると、さまざまな議論があると思いますが、国内的には2016年7月の軍部のクーデターと言うことができるでしょう。
トルコは、前身のオスマントルコが崩壊してから共和制を実施しています。
トルコ共和国の建国は1923年で、その後、第一次大戦に敗戦し、欧米に占領されました。
日本の体制が明治維新で一新されたように、欧米では当たり前の宗教分離を全面に出すことがトルコの国是となっています。
そのため、過去にイスラム教色が強い政権が誕生するたびに、軍部がクーデターを起こして政権を崩壊させてきました。
この政教分離のことを、トルコでは世俗主義と言います。
2016年7月のクーデターは、イスラム宗教色が濃い現大統領のエルドアンさんを倒すために起こったものです。
これをエルドアンさんが上手にさばき、今度は軍部にエルドアンさんがシビリアンコントロールを敷き、現在に至っています。
しかし、このクーデターの影響は経済に大きな禍根を残しました。
何しろ、国会議事堂までが空爆されたのですから…。
対外的にはドル高・金利高が原因
2017年にアメリカの中央銀行であるFRBが金融緩和であるQEを完全に停止した結果、ドル高・金利高になりました。
それまでは、金利のつかないアメリカよりも新興国に投資したほうがよかったのですが、これを機に新興国から資本が流出したことがトルコ経済の停滞の対外的な原因です。
そして、エルドアンさんが今年の6月に「金利を上げなくても経済が回復する」と発言したことをきっかけに、インフレや通貨安が進行し、危機に入っていきました。
最後は8月、アメリカのトランプ大統領と対立したことにより、アメリカの援助なしにトルコが危機に陥るということが起こったのです。
これがトルコ危機の概要になります。
通貨安への対抗方法とは
通貨安に対抗するには、その国が豊富な外貨準備を保有していることが必要です。
この外貨準備の中には金が含まれます。
ご記憶の方も多いと思いますが、かつて東南アジアで起こった通貨危機は、アジア諸国の外貨準備金額が極端に少なかったことが原因です。
通貨安になった国々は、この外貨準備を使って現地通貨を買い、そしてドルを売ることによって自国通貨を防衛します。
そして、金利を引き上げ、資金の流出に備えるのです。
エルドアンさんは、この金利を引き上げることを拒否したので、トルコリラ安が進行しました。
トルコの準備金売却と金価格の推移
上記はトルコ中銀が保有している金の量ですが、今年に入って著しく保有量が減っています。
この時期には、下記グラフのような意味不明な金の下落がありました。
6月に金価格が急落していますが、これはトルコ中銀による金売却の影響かと思われます。
この時期にある程度ドル安が進行したのですが、それ以上に急落をしていたので、不思議に思ったものですが、結果はトルコの売却と断定してよいでしょう。
今回は、トルコのイスタンブール金取引所において取引が急増しています。
▼Bloomberg記事引用: 「リラ急落のトルコで金取引が急増、過去最高を記録」▼
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-08-17/PDJU466S972B01
この記事は8月17日発になっていますので、上記の金チャートの8/17近辺を見ると、8/13から金の価格が下落していることがよくわかります。
このように考えていくと、トルコ中銀がこの混乱の最中にまた保有金を売却した可能性は多いにあります。
なお最近ではブラジル、アルゼンチン、南アフリカなどの経済危機が伝えられますが、これらの国はトルコほど準備している金の量は多くありません。
もちろん、これらの金を売をすることはあり得ますが、トルコほどのインパクトはないと思われます。
今後のトルコ危機の展開と金相場
トルコとアメリカの交渉が膠着状態で、再びクドローNEC委員長と中国が貿易戦争の交渉をアメリカが発表しています。
この交渉内容には人民元安の解消が含まれています。
6月からものすごい勢いで人民元安が進行していましたが、これを人民元高に訂正するとなると、ドルの価値はドル高からドル安に転じます。
実際にこの中国との交渉が発表された直後から、人民元高に反転しています。
ドル高は金にとって弱気材料ですが、この交渉がうまくいってドル安になれば、金の買い材料になります。
トルコなどの新興国の金売却が一巡し、ドル安になれば、おそらく金は買いになってくる可能性が非常に高いでしょう。
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