産金コストから考える
トランプ政権の暴走、トルコ危機、ベネズエラのインフレなど金の買い材料には事欠かない状況です。
今回はこの点につき、焦点を絞って解説していまいります。
去年の産金のコストは、1140ドルであったように思います。
直近で1160ドルまで売られたというと、金のプレミアムは20ドルしかなかったことになります。
この産金コストとは、鉱山から金を掘り出すための人件費、電気・エネルギー代、設備費、移動費用など、全ての費用を含めたコストの世界平均のことです。
ただし、露天掘りのオーストラリアや中国と、地下深く掘り進む南アフリカのコストが大きく違うように、産金する国によって異なります。
この産金コストが、ドル建てで計算されるという点には注意が必要です。
ドルの価格は、ドルインデックスや実効為替レートに代表されるように、常に変化をするからです。
上がるか下がるかの、今年の産金コスト
2017年はずっとドル安傾向が続き、今年も1月から3月まではドル円を見てもドル安だったことからもわかるように、下半期のドル価格にもよりますが、おそらく産金コストが大きく跳ね上がる可能性があります。
ただし、今や世界最大の産金国ではないですが、南アフリカのランドがドル高によって大きく下がったことで、産金コストは下がる可能性もあります。
世界最大の産金国である中国も、6月から大幅な人民元安になっていますので、ドル高ということにもなるということです。
産金コストの計算はコロコロ変わり、どれが正解かわからないという点も重要となってきます。
さらに、単純平均を使っているのか、加重平均を使っているのかもわからず、産金コストの正確性にも疑問が持たれます。
ただし、近年の産金コストのコンセンサスは、1100ドル台であると認識しておいてください。
産金コストのプレミアム
「プレミアム」という言葉に疑問を持つ方は非常に多いのではないでしょうか。
金価格の上昇要因からこのプレミアムの意味を考えていくとわかりやすいと思います。
金価格の上昇要因としてインフレ、戦争、各国の財政赤字、ドルの価格などさまざまなものがありますが、現在の状況を考えてみてください。
インフレに関してはジンバブエの事例など、誰しも一度は目にしたことがあるでしょう。
ほかにもトルコの物価上昇が20%、アルゼンチンに至っては45%など。
戦争に関しては、直近ではないのですが、アメリカによる攻撃があったため、中東などはすでに火薬庫状態であると去年から言われています。
また、ドルの上下動に関しては後で説明しますが、トランプ大統領が上下にその価値を振っています。
これだけ不透明な時代に、プレミアムが20ドルということはあり得ません。
各国の財政状況を見ると、どの国も赤字だらけ、借金だらけで、どこかの先進国で財政破綻でも起きようものなら、金の需要は一気に大きくなることは想像に難くないでしょう。
実際に、今年は1340ドル前後までいっており、産金コストが1140ドルであれば、200ドルもプレミアムが乗っていることになります。
つまり、今の値段は産金コストから見れば安すぎると判断を下すことができます。
ドル価格の動向に注目
▼ロイター記事引用:「インタビュー:トランプ大統領、FRB利上げ『気に入らない』」▼
https://jp.reuters.com/article/usa-trump-fed-idJPKCN1L527A
上記はロイターの記事ですが、いろいろなところで報道されています。
今年2月にご紹介したと思いますが、トランプ大統領は本来ドル安にならなければいけないものを、「ドル高に転換する」と高らかに宣言し、実際、4月から8月までは大きくドル高になりました。
その結果、トルコを筆頭とする新興国危機が始まったのです。
そして今回は、「ドル安にしなさい」とFRBのパウエル議長や中国、ヨーロッパをおどしています。
つまりトランプさんが2月にやった、本来ドル安にならなければいけないものをドル高にしてしまったケースから考えれば、今回も無理くりドル安方向に持っていく可能性があるのです。
ただ、市場はこのトランプさんの発言に即様反応し、各国通貨に対してドル安になっていますが、2月のケースでは実際にドル高になるまで2か月かかっています。
この辺のタイムラグには注意が必要です。
また、日本の新年度は4月ですが、欧米の新年度は9月である点にも要注意です。
要するに、本格的なドル安は9月からになる可能性もあります。
ともかく、2月のケースから言えば、すぐさまにドル安になってもおかしくないことも頭に入れておくべきでしょう。
つまり、金の価格変動要因の第一位は需給ではなくドルの上下動なので、そのドルが安くなる可能性があるのであれば、金価格は上昇する可能性が非常に高くなります。
世界的な借金漬け経済
アメリカは年初からの減税によって財政赤字が拡大し、日本は財源難から消費増税が予定されています。
そのほかの先進国も似たり寄ったりで、身の丈に合った財政である国は、もはや皆無であるかのような状態です。
現代では、財政破綻とは国が潰れるというよりも、IMF管理下に入ることを意味し、その国の通貨は大幅に下落することになります。
下落する通貨を持ち続ける国民などいるわけがなく、結果、その通貨と金を交換する需要が増えるのです。
このように、金の国際価格は上昇する可能性が高いです。
金の買いに死角はない
金価格上昇の最大の要因であるドル下落の可能性があり、各国の債務状態も危機的な状況の中、金の価格は下がるでしょうか?
加えて言えば、アメリカの貿易戦争は、アメリカの国内物価の上昇を意味します。
庶民に関係ないと思っている方が多数ですが、鉄鋼やアルミに報復関税をかければ、間違いなく数年後に車の価格が20%以上上昇するはずです。
この20%は、報復関税の金額になります。
つまりアメリカで車を製造するGM、フォード、テスラなどのコストが上昇するのですから、価格に転嫁されるのは必然です。
今、アメリカのインフレは沈静化していますが、数年以内に間違いなく物価は上昇するでしょう。
車は不動産を除き、家庭では最高額の買い物です。
この車の価格が上昇すれば、物価が上昇するのは当たり前です。
こうした観点から見ると、金の買いに死角はないように見えます。
弱気の材料を考えてみても、皆さんにわかりやすい材料が今は見い出せません。
もちろん値段が低迷した場合には、トルコ中銀のように大きな金売却が考えられますが、この状況で価格が低迷する可能性は低いかと思われます。
最後にもう一度。
金は買いです。
また不要な金を売るのであれば今であります。
金を売るなら。
当コラム運営のリファスタにて。
コメントを残す