前回は、中国は統治の基盤に儒教システムがあり社会の安定を志向していこと、一方のアメリカが振りかざす人権は、実はお金儲けの道具に過ぎないことを喝破しました。
後編にあたる今回は、両国の対立について落とし所も含めて説明していきます。
貧富の差の是正に乗り出した習近平指導部
中国の習近平国家主席は先日、社会主義を発展させるために世の中の貧富格差などを是正することを発表しました。
前回の説明を読んで、習近平のやろうとしていることがなんとなく見えてこないでしょうか。
世の中に貧富の格差があっては、社会の安定性は保てません。
なぜなら貧富の格差は、金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏人になるものです。
ですから、この格差是正は行わなければなりません。
アメリカも中国も貧富の差は絶望的な度合いで進行しており、金持ちはより一層金持ちになっていく傾向が強まっています。
例えば、100人が年収1000万円の社会と、1人が年収1億人で残りの99人が年収1万円の社会、どちらが活性化すると思いますか?
言うまでもなく100人が年収1000万人の社会ですが、端的に言えば中国は1人が年収1億円で残りが1万円の社会でしょう。
これを改革しようというのは当然です。
ゆえに習近平は腐敗防止運動を行い、不正蓄財などを厳しく取り締まるのです。
ただそれが権力闘争の一環であるという指摘は、検挙された人間の背景を知ると否定はできず、そういった意味では完璧とは言えません。
統治のために何を取るか?
言えることは、アメリカの社会システムと中国の社会システムが人権を尊重するのか、それとも社会の安定性を取るかによってその方策が全く違うことです。
アメリカは人権によって皆が幸せになれる社会を目指し、中国は社会が安定すること、共産党が統治することを重視しています。
つまり、アメリカと中国の社会システムは水と油。
絶対に交わらないものを、アメリカは都合のよいことを言い出し、メディアを駆使して自国の主張を正当化しようとしているだけであり、私たちもその言質に惑わされているのです。
日本は戦後の農業改革によって小作制度が壊滅し、平等社会で相続も平等になったので欧米化しています。
最近の韓国や中国との不仲は、そういう文化的な違いに派生しているのでしょう。
つまりアメリカは、中国には受け入れられない人権、民主主義、自由などを得意の恫喝によって受け入れろとやっているだけなのです。
ジェノサイドと一人っ子政策
民主運動に関して、中国は自由選挙を一時地方にて取り入れたのですが、香港の民主化運動で崩壊しました。
つまり自由選挙を行うと共産党批判政党ばかりが躍進し、共産党の統治が不可能になるのです。
香港で民主派の立候補がことごとく禁止されたのは、ほかの地方では当たり前です。
ウイグル、新彊、モンゴルなどでのジェノサイドも、漢民族との混血にするという行動になります。
人権派からは許せない行為ですが、そもそも一人っ子政策が自由や人権を著しく侵害する制度なのに、同化政策のみを一環して人権侵害というのは矛盾以外の何ものでもありません。
中国は、このまま人口が増えていけば長子以外はあぶれ、世の中が不安定になるからそういう政策を推し進めました。
中国側からすればもっともな政策になるのです。
台湾は分裂した中国の象徴
戦前に国民党と共産党が内戦を起こし、国民党が分裂して台湾に行ったことで中国は分裂しました。
言うなれば、南北朝鮮統一と同じで、それを統一するのが中国の夢なのです。
習近平が台湾併合も辞さないというのは、台湾の蔡英文総統があまりにもアメリカに近づきすぎることへの警告です。
実際に台湾が独立して国家となれば、中国はメンツを潰されることになるので、おそらく習近平は許さないでしょう。
台湾がこのまま生きていくためには、建前上、一国二制度の台湾として中国の統治下になり、中身は台湾としてやっていくほかないのです。
アメリカは台湾を悪用している?
台湾が独立することなど共産党には絶対に認められない、つまり台湾のような小さな国が言うことを聞かないのは、中国共産党の看板を汚すことなのです。
それを悪用しているのがアメリカであり、中国が台湾に侵攻しようとしていると言っています。
現時点で、台湾を侵攻することは中国には何のメリットもありません。
余計に国際的な孤立を招くことになり、経済が大きく阻害されて統治が困難になるだけです。
習近平がいくら勇ましいことを言っても、損得勘定を考えれば台湾侵攻などあり得ない選択です。
ただ実際に台湾が独立するとなると話が変わりますが、蔡英文総統にはその意思はないでしょう。
台湾も独立することなどメリットがないのです。
アメリカのGAFAと中国のTiktok
今の日本では、アップルのスマホでツイートを行い、アマゾンで通販をし、フェイスブックで自己紹介し、ユーチューブで動画を見て、インスタで写真を見る、これが若者の典型的な行動です。
これがパナソニックのスマホで、楽天の通販を行い、LINEでつぶやき、ミクシィで自己紹介を行うなんてやったら、今ほど日米同盟は近い距離になったでしょうか?
中国はこれを全部自前で行っています。
だから対立が先鋭化すると考えれば、アメリカの意図していることはわかりますよね。
日本の世論はアメリカの方が正しいという方向に傾いていますが、この行動を見ればアメリカが正しいというのは当然の帰結です。
Tiktokをアメリカで禁止するのは、中国製だからです。
こういう現実の話を聞いて、アメリカの話をまともに聞く気が起こるでしょうか。
思い起こされる日米貿易摩擦の時代
中国では上記のもの全部、中国開発のものしか認めません。
日米貿易摩擦が続いた頃、世界の関心事は自動車でした。
量産型の自動車を開発したフォードが全盛の時代でしたが、日本では燃費の悪いアメリカ車は人気がなく、こぞってトヨタやホンダ、日産の車に乗ったものです。
電話はNTTかIDOであり、アメリカのテレコムなど使う気も起こりませんでした。
だから日米貿易摩擦が起こったのです。
今のアメリカは人権だの自由だの民主主義だのと言っていますが、結局のところはお金です。
思ったように中国市場で儲けられないから文句をつけているだけの話なのです。
なぜ日本人は中国を理解できないのか?
上記のように、これだけアメリカのサービスに依存していれば、アメリカのことは理解できても中国のことは理解できないでしょう。
習近平のやっていることはそれなりに合理性があります。
なぜ私たちに理解できないかといえば、中国が儒教の考え方で統治を行っているからです。
そこには人権という発想がないので、日本人には中国が理解できないのです。
人権と社会の安定は相反するものであり、どちらかを立たせればどちらかは立たなくなるシステムです。
合理的に考えれば、習近平の目指していることはそれほど悪いことではなく、ジェノサイドと聞くと身の毛がよだつような感覚がありますが、統治のために人権を取るか否かの問題なのです。
中国共産党の崩壊までは望んでいないアメリカ
アメリカは共産党の崩壊までは望んでいません。
なぜなら共産党を崩壊させて、誰が統治するのか。
かつてイラクでフセイン政権を壊滅させて、混乱だけを残したアメリカが同じことを望むわけがありません。
体面では習近平政権を非難しますが、心の中では共産党政権には続いてほしいのです。
しかし、お金を寄越せと言うのはあまりにみっともないので、自由だ人権だ格好のいいことを言っているにすぎません。
この終戦は、日本のようにアメリカのサービスを思う存分に使うようになればいいだけです。
はっきり言って、アメリカには世界1位の大国になるという欲望はあまりないでしょう。
なぜならば、1人当たりのGDP(国内総生産)は依然としてアメリカは世界1位で、それを揺るがす国は絶対に現れないからです。
中国がいくら発展しても、アメリカのように豊かになるのにはまだ後100年は必要になります。
この記事のまとめ
今回の記事では、日本人が中国を理解するためには、そもそも日本と中国は根本の考えが全く違うことから理解しなければならないことを確認。
すなわち自由、人権、民主主義に立脚して考えを巡らしても未来永劫理解できない。
なぜなら、その後ろにあるものはどうやって効率的に儲けるかの打算だから。
そして、日本人やアメリカ人のほとんどはその崇高な理念にダマされているだけ。
自由、人権、民主主義はあくまで建前であり、アメリカはアメリカの企業が儲かれば文句は言わない。
こういう内容の記事でした。
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