前回は、金の未来の価格を知るのには前年比を見ることが大事と記しました。
この予測法は複雑ですが、これを身につければ株価や為替の問題も解消します。
今回は、実際にこの方法を使って未来の金価格を予測してみましょう。
今までの金価格予測法に欠けていたこと
今までは金の価格構成要件に準拠して価格予測をしてきました。
【1】ドル
【2】金利
【3】GDP(国内総生産)
であり、これは株価や為替の予測でも共通です。
また、これらを検証する際に参考にしていたのは、ほとんど前日比や前週比でした。
しかし前回も記した通り、一番大事なのは前年比です。
前日比や前週比でドルや金利の動向を見ておけば、ある程度の目先の予測はつきます。
しかしそれは1日の動きであり、1ヵ月後や3ヵ月後、来年といったマーケットの全体像を見ることができません。
日々パソコンに張り付いている投資家であれば、そういうことも必要でしょうが、ほとんどの方は仕事を抱えているでしょう。
NYダウを例に前年比予測法を説明
下記は、NYダウの1年間の動きになります。
上述のように、価格予測を前年比で測ることを念頭に置けば、去年と同じように株価は動くと考えがちです。
例えば、去年の10月末に大きく株価が下落していますが、11月に入ると急速に上昇しています。
そして2020年に出した高値をことごとく抜き、2020年の年末は過去最高値で終了しました。
となると今年2021年の場合、NYダウは10月末に急落し、11月には3万5000ドル以上になると予測するのが普通でしょう。
もちろん、去年は4〜5月にロックダウンがあり最悪な状況で、その後の正常化の過程で大きく経済が上昇したようなことには今年はならないと想像がつくでしょう。
だから去年よりも上昇は緩慢になると予想しがちです。
しかし、これは間違いの予測です。
なぜなら株価の構成要因は、金と同じく【1】ドル、【2】金利、【3】GDP。
つまり日々の金や株の価格は、主にドルや金利の動きによって決定されるのです。
では、具体的にはどうなっているのかを見ていきましょう。
前年比予測法のコンセプト
下記はドルの強さを表すドルインデックスの約1年間の動きです。
株価は11月から急騰と先述しましたが、ドルは11月から急落しています。
これだけの事実で考えると、株価が去年の11月から急騰したことがわかります。
なぜなら株価とドルは連動しており、ドルが急落すれば株価は急騰するからです。
しかし、弊社はこのドルの価格の比較を前年比ですべきだと言っています。
つまり、現在のドルの価格がこのまま続くとすれば、ドルの価格は2020年末には4%以上売られているので、現在のドルは今年の年末と比較して4%高いことになるのです。
去年と比較してドルが高いので、株価は年末と比較して安くなるという結論に達することができます。
では、去年11月からドルが急落していますが、今年は変わらずとすれば11月から株価は下がってきます。
これは金も同じです。
価格構成要件が今後あまり動かないのであれば、金は1年前と同じような価格で動くでしょう。
つまり去年の価格をベースにドル、金利、GDPを見ればだいたいの未来の金価格はわかるのです。
ドル価格の前年比による金価格予測
先ほど解説したように、今のドル価格が動かないとすれば、10月の金価格は横ばいになります。
ところが去年の11月にはドルが急落し、今年が動かないとすれば、金はドル高なので安くなります。
これは12月末まで下がることが想定されます。
そして、2022年の年初に底を打ちます。
なぜなら、去年はドルが上昇しているからです。
となると、現在のドル価格が維持されているれば、ドル高の幅は狭くなるので金の価格は上昇していきます。
それは上記のグラフでドルが上昇している4月まで続き、その後に下落ということになります。
来年の10月は、現在のドル価格の水準のままですと、ドルが去年より高いことになるので下落していることになります。
これは、ドルが現在の価格と同じ程度ということを想定して予測しています。
もちろん今後もドル価格は動くでしょうが、下記のコラムで説明した通り、ドルはアメリカの雇用とリンクしているため、失業保険の増額が取りやめになれば新規の就業者数は増えます。
つまり雇用が増えるのでドル高になるがゆえに、今のドル価格が維持される限り金価格は低迷することになるのです。
ただ先週の失業保険申請者数は増えているので、ドル安への懸念も和らいでいません。
ですから、金が弱いままとは現時点では言い切れないのです。
金利の前年比による金価格予測
以下のグラフは、2020年10月からの米国10年債の利率の推移です。
金利は、2020年の8月4日に史上最低を記録し、今年は8月5日に最低金利を記録したということは、マーケットが前年をベースに動いていることを示しています。
去年と比較して米財政は拡大し、物価も同様に5%も上昇している中、金利が低下することはないでしょう。
さらにドルと同様に去年の11月近辺から金利は上昇しています。
金利の上昇は金にとってネガティブな要因で、去年の11月から年末にかけて金利は横ばいでした。
つまり、ドルによる要因で金は年末まで弱いということができます。
しかし今年1月から金利が高騰しているので、現在の金利水準が続くのであれば、金の価格は来年1月以降にさらに下落することになるでしょう。
反対にドルは上昇しており、今年との差は縮小するので、価格は上昇傾向になります。
ドルと金利の前年比を総合すると…
ドルと金利を総合すると、来年4月の金利の天井を迎えるまで、金は弱い可能性が高いことになります。
しかし、あくまで現在のドル水準、金利水準が維持されるという仮定の下であり、この水準が変われば、マーケットの将来価格も変わります。
まだGDPの解説が残っていますが、ここまで一読して理解できる人はほぼ皆無だと思いますので、今後に譲ります。
本予測法は、従前にない考え方なので混乱するでしょう。
ドル安だの、金が高いだのといった表現をよく聞きますが、その比較対象は前年なのか前日なのかをきちんと考察する必要があります。
前日比だと高いけど、前年比だと安いなんてことはよくありますが、ほとんどの人は、金が高いというとそれに賛同してします。
値段というものは、数字は絶対値ですが、それは前年との比較によって成り立っているので、概念的には相対値なのです。
なおパラジウムや白金、石油、そのほかも全部、この比較によって説明ができます。
この記事のまとめ
今回の記事では、前年比をもとに未来の金価格を予測する方法を紹介。
注意点として、比較すべきは金そのものの価格ではなく、その価格構成要因であるドルと金利とGDPということ。
ドルの前年との比較による予測は、ドル高になるがゆえに、今のドル価格が維持される限り金価格は低迷。
ただし、ドルの高低を左右する米雇用のゆくえは注視すべし。
金利の前年との比較による予測は、今年1月から金利が高騰しているので、現在の金利水準が続くのであれば、来年1月以降に金の価格はさらに下落。
総合すると、金利が天井を迎える2022年4月まで金は弱い可能性が高い!
ただし、あくまでも現在のドル水準、金利水準が維持されるという仮定の下での話。
こういう内容の記事でした。
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