今回は金の展望について、現在のインフレ懸念と来たるべきデフレを見据えて解説していきます。
トイレットペーパー騒動再び?
ここ最近、昨年のトイレットペーパー騒動が再燃しているとお感じの方はいらっしゃいませんか?
このトイレットペーパー不足が全国的に起こっていることなのか否かは定かではありません。
ただ言えることは、最近のテレビのニュースではインフレが騒ぎ立てられています。
これは、1970年代のオイルショックやトイレットペーパー騒動、昨年のマスクを想起させるものです。
このインフレ報道がなかったら、このような消費者行動は起こらなかったでしょう。
1週間株価が下がっているのはインフレの恐れがあるからと聞けば、本当かどうかはわからずに市民は信じてしまいます。
つまり、ウソも言い続ければ本当になるということです。
紙製品と石油価格はほぼ無関係なのに…
インフレ懸念に関しては、欧州の暖房需要からのエネルギー不足は深刻さを増しており、ウソではありません。
だからといって、トイレットペーパーなどの紙製品が店頭から消えるのは、なんだか変な感じがしませんか。
そもそも、紙製品と石油などのエネルギー価格とはほとんど関係がありません。
マスクや紙製品が店頭から消えた去年の騒動を思い出すと、そんなことがまた起こってはほしくはないですが、警戒するに越したことはありません。
まずインフレとは、一般的に物価上昇のことであると認識しているでしょう。
しかし専門的な解釈をすれば、通貨下落によって物価上昇が起こることを言います。
どういうことかといえば、新型コロナ禍によって経済が壊滅的な打撃を受けたので、政府・中央銀行はヘリコプターマネーというお金のばらまきを始めました。
お金が需要以上にばらまかれれば供給過多になり、お金の価値が減少します。
お金の価値が減少するということは、物価が上昇につながるというのは上記で説明した通りです。
つまり現状では、インフレの芽は常に存在します。
欧州のエネルギー事情とインフレの関係
今、ヨーロッパを中心にエネルギー不足が起こっている要因は、欧米の暖房需要は日本のように灯油ではないからです。
石油を燃やして暖を取ると、多くの二酸化炭素を排出します。
ヨーロッパは環境意識が強く、とうの昔に暖房エネルギーは灯油から天然ガスに移行しています。
特にドイツは東欧と西欧を結ぶ要所で、トラックの排ガスなどの環境汚染によって、ほかの地域よりも環境問題への意識が強い国です。
ですから、火力発電の全廃止や環境政治団体である緑の党などが隆盛しました。
9月から暖房エネルギーが高騰するのは、欧州の暖房エネルギーの消費は冬場の方が夏場より1割多いからです。
ただし、コロナショックによってエネルギーの需要が減少していたので、急に増やせといわれても増やせないのが事実です。
しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。
コロナショックによってエネルギー需要が減少していたのは昨年も同じなのに、2020年にはそんなことは起こっていませんでした。
実は世界の国が緩和をしすぎて、皆がお金を持っているのに買うモノがないから欧州で暖房エネルギーの買い占めが起こっているのです。
つまりスケールの差こそあれ、根本は日本のトイレットペーパー騒動とあまり変わりません。
これが欧州のインフレです。
ハイパーインフレは実際に起こりうるのか?
ハイパーインフレが存在したのは第二次大戦後の日本やドイツなどの物資不足の時代です。
お金は有り余っているのに、必要な生活物資がないことでハイパーインフレが起こるのです。
現代では、便利なものが開発されるとすぐに量産化され、必要なものはワンクリックで宅配業者が持ってきてくれるほど物資が豊かです。
つまり現状、ハイパーインフレは起こりえません。
現在の半導体不足や昨年のマスク不足によって、価格が高騰することもありますが、それが全体に波及する可能性は少ないでしょう。
今は物価上昇が起こっている段階ですが、部分的なものに留まります。
インフレよりも怖いものが来る!
今はお金はあり余って、金利も安いから商品を作りたい放題作れる状態です。
しかし、人は必要なものは全部買うことができるので、消費はなかなか伸びません。
一方で業者は、今は借金し放題ですので、もっといっぱい作って販売しようとします。
そんな状況下で起こることは、物資の過剰供給です。
すると価格が下がります。
しかし、人々は物資は潤沢にあるのでムダ使いをしようとしません。
そこで業者は再び価格を下げる、しかし売れないの循環になります。
この状態をなんというかといえば、日本が30年間苦しんだ「デフレ」です。
つまり目先のインフレに恐々とするよりも、将来のデフレを心配した方がいい状況なのです。
デフレは物価安だから歓迎という人もいますが、企業利益が上がらないので給料も下がります。
インフレ下の金とデフレ下の金
金の商品の特徴としてのは、金利がつかないことにあります。
今の政府の目標とする誘導金利は過去最低ですが、市場の金利は去年の8月に底を打っているので上昇しています。
いくら金を保有していても配当や金利がつかないので、金利の上昇局面では金の価格は下がります。
実際に今の金価格もだんだんと下がってきている状態です。
これがインフレが進行すれば、金利の上昇を意味するので、金の価格はますます下がります。
では、反対にデフレの進行は金利が下がることを意味しますが、インフレが通貨価値の減少を意味するように、デフレ下では通貨価値は上昇します。
つまり、金の価格は通貨価値の上昇によって下がるのです。
デフレ下で金は下がり、インフレ下でも金は下がるということです。
インフレに強い金とは?
「インフレに強い金」という格言は、ハイパーインフレの時に意味を持ちます。
つまり、通貨の価値が劇的に下がる局面で金は価値を持つということです。
通貨の価値が下がるとは、国家が潰れるような収拾のつかない状態を指します。
では、金が上昇するのはどういうときなのか?
それはGDP(国内総生産)の拡大です。
つまり今の金はインフレ、デフレに着目すると価格は下がりやすくなり、逆に株価の上昇など景気拡大局面には上昇します。
この記事のまとめ
今回の記事では、新型コロナショックを受けての金融緩和の影響で、お金あまりとなった欧州では暖房エネルギーの買い占めが起こり、エネルギー不足が叫ばれている。
これが欧州のインフレの原因。
「インフレに強い金」という格言が通用するのは、ハイパーインフレ下。
しかし、今のインフレがハイパーインフレへと発展するかと言えば、物余りの今の世の中ではそうはならない。
懸念すべきは、ものが余る、値段を下げる、それでも売れないのでさらに値段を下げるというデフレのスパイラル。
インフレが進行すれば、金利が上昇するので金価格は下がり、デフレが進行しても反対に通貨の価値が上昇するので金は下がる。
金が上昇する局面とは、すなわちGDPの拡大に尽きる!
こういう内容の記事でした。
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