読者の方から「中国の債務が膨らんでいるが大丈夫なのか?」という内容の質問をいただきました。
確かに中国の債務は膨れ上がっていますが、それに対処する動きはさまざま出ています。
今回は、その対策についてと中国の金投資ブームの先行きについて解説してまいります。
中国共産党の強さの根源
中国共産党の指導部とは、習近平総書記を筆頭とする最高幹部から構成されています。
ただし、これをもって中国共産党というのではなく、全国津々浦々にも共産党があり、各自治体や企業には必ず共産党員が派遣されています。
その中で、鄧小平の主張する改革開放路線にのっとり、党中央の言うことをよく聞いて結果を残した当院が党中央に呼び込まれるのです。
この出世競争が共産党の強さの根源と言えるでしょう。
農地転売という中国共産党の錬金術
リーマンショックや今回の新型コロナショックのような大きな経済被害が出れば、共産党はその後始末とその後の経済拡大に勢力を注ぎます。
そして、その軍資金は実は農地になるのです。
中国は言わずと知れた共産・社会主義であり、私有財産は認められていません。
土地や不動産も国有です。
欧米や日本でいう所有権の概念とは違い、共産党から土地を借りているという概念です。
日本で言えば借地ということになります。
もちろん田畑も共産党の所有であり、その所有を農家から取り上げるのが共産党の仕事になります。
わずかばかりの保証金で取り上げたその土地を工業地帯にしたり、豪華なマンションにしたりするわけです。
そして、その転売益が各省や企業の元手となるのです。
膨れ上がる中国の借金
中国で腐敗とは、上記の利権を袖の下に収めることを言います。
自治体は共産党での出世争いのために莫大な借金をして、利益になるように土地を転売し、失敗しても痛手はありません。
なぜなら、実際は地方の共産党員がやっていても、それは国有企業が行ったことという手前で、借金の返済義務がないからです。
つまり共産党中央に呼ばれるために、ハナからできっこない計画を立て、できなければその借金は放置ということを繰り返します。
その結果、中国の借金は国に付け替えられ、下記の中国のGDP(国内総生産)に対する借金割合を表したグラフのとおり、膨れ上がっている状態です。
「共同富裕」という新しい指導綱領
習近平指導部は最近、新しい指導綱領として「共同富裕」という概念を立ち上げました。
この前段階には、改革開放の路線の中で、最初に沿岸地帯などの一部の人民を富ませ、その富を全国に押し広げるという鄧小平の構想があります。
同時に鄧小平は「能ある鷹は爪を隠す」、中国の発展が遅れている間は文句を言わず従うことを推奨していました。
最近の中国が以前と比較してかなり国際社会に対して無理な注文を付けるようになったのは、中国は1970年代のような後進国ではなく、世界に力を発信できるくらいの大国になったという自信の表れです。
すなわち、鄧小平思想を発展させる段階に入っているというのが習近平の認識だと思われます。
経済特区などの沿岸部は十分に裕福になったので、これを全人民が裕福になる「共同富裕」という発想に転換させるという、世界や中国人民に対するメッセージなのです。
恒大集団問題と借金問題
この共同富裕の方針が発表されたのと同時に、中国の巨大不動産グループ、恒大集団(エバーグランデグループ)の経営不振が発覚しました。
これは、上記で説明したような各省、各企業が自分の地域、企業を発展させるために、農家から取り上げた土地を元手にして開発計画を行うのはもはやご法度だと宣言したことと同義です。
この不動産の悪意のある取得によってあらゆる腐敗が起こっていることは明白ですので、習近平が総書記就任から行っている腐敗撲滅運動と合致するのは言うまでもありません。
また、同時に中国の借金問題にも手を付け始めているということでもあります。
ただし、そもそも借金の問題は国営企業のほとんどが赤字経営ということが根幹です。
中国の最大の関心事は国内の維持
赤字を抱える国営企業を整理すればよいというのが西側の発想ですが、それができれば中国共産党に苦労はありません。
国営企業に就職できた人民は、いわば一生を保証されたのと一緒。
それを解体、整理することは共産党の不信任につながります。
ここで注意すべきは、昨今話題になっている米中関係や台湾問題はあくまでも付属の問題であり、共産党は国内を維持することに一番の神経を使っている点です。
人民をもっと豊かにしなければ、共産党支配は続けることができないというのが習近平体制に批判的な共産党員でも共通している持っている認識になります。
農家の不満である土地の強制収容問題に習近平指導部が手をつけたのは、歴史的な偉業と言えるでしょう。
ただし、このままで中国が今までのような経済成長を維持できるかはまた別問題になります。
中国と金の切っても切れない関係
上述したように、中国では私有財産が認められていません。
西側諸国では不動産の個人所有は当然の権利として認められますが、中国ではいつ共産党に強制接収されるかわからない状態です。
では財産は何で持つのか、西側諸国ならドルを持てばよいですが、発足してたったの100年の共産党が発行する人民元が本当に末永く通用するのか、ほとんどの人は懐疑的です。
結果、残るのは金になります。
実際に共産党政府は金準備は増やしていますし、ビットコインのオーナーの9割は中国人で、そのほとんどは共産党員です。
人民が、懸命に財産の分散化を図っている党のトップたちを見て、何をするかは言うまでもないでしょう。
この記事のまとめ
今回の記事では、膨れ上がる国家債務や農民層の不満を背景に、中国共産党指導部は新たに「共同富裕」というスローガンを掲げたことについて説明。
しかしながら、肝心の赤字経営の国営企業へのメス入れは、共産党の不信につながるために着手できることはないだろう。
こんな中で人民が信じられるのは、結局のところ土地でも人民元でもなく金、ないしはビットコイン。
それが証拠に、共産党政府は金準備は増やし、またビットコインのオーナーの9割は中国人で、そのほとんどは共産党員。
こうした現実を知る人民たちも、やはり金買い、ビットコイン買いに走ることはやめないだろう。
こういう内容の記事でした。
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