インフレの背後に見える中国の爆買いとその原因

今、インフレが騒がれていますが、世間はその原因を見誤っています。

金融緩和による買い占めも一因ですが、主因は中国の爆買いによるものと考えられるのです。

今回は、その説明になります。

資源価格の推移と現状

下記のグラフはコモディティー・リサーチ・ビューロー(CRB)社による世界の資源価格の指数、CRB指数の25年にわたる推移です。

参照元:TRADING ECONOMICS

リーマンショック前の2008年まで大きく上昇しましたが、この原因は主にドル安によるものになります。

資源価格とドル価格の関係性

以下は、上記のCRB指数に緑の線でドルインデックスを加えたグラフになります。

参照元:TRADING ECONOMICS

ご覧のように2000年ごろ、緑の線のドルインデックスがピークを迎え、それ以降ドルが下がり続けることで青線のCRB指数が上昇しています。

2014年くらいまで緑の線のドルインデックスが安いままでしたが、上昇すると青線のCRB指数は下がっていきました。

すなわち2020年くらいまでの原油や穀物、金属などの原料素材価格は、ドルの上下によって価格が変わってきたのが、2020年以降、つまりコロナショック以降はドルがほぼ横ばいなのに対し、CRB指数は上昇してきています。

これはドル価格の上下によってエネルギー、穀物、金属などが上下してきた従前とは違う動きになります。

資源価格高騰の原因と米中対立の根幹

この資源価格、CRB指数はなぜこれほどまでに上昇したのでしょうか?

以下のグラフは、上記のCRB指数(青線)とドルインデックス(緑線)に、茶色の線でドル人民元レートを付け加えました。

ドル人民元はドル円レートと同様、下に行くほど人民元高、上に行けば人民元安を表現します。

参照元:TRADING ECONOMICS

人民元相場が大きく元高になった2006年、CRB指数(青線)がピークを迎えました。

その後、人民元相場が高止まりしているときは、CRB指数は上昇していることがわかります。

そして2014年くらいに元高から元安に移行すると、CRB指数は急落していることがわかるのです。

わかりにくいので、直近のチャートを見てみましょう。

参照元:TRADING ECONOMICS

2020年2月のコロナショックで青線のCRB指数が下がり、同時にドル安が進行しました。

ドル安なので、青のCRB指数が上昇するのは言うまでもありません。

と、同時に人民元高も進行しました。

つまり2021年くらいまでCRB指数が急騰したのは、ドル安に加えて人民元高が進行したからです。

ところが2021年中葉からドルは上昇していくのに、CRB指数は上昇を止めません。

もちろんCRB指数はコロナショック、2020年2月よりも上げ足は鈍くなっているのですが、その歩みを止めていません。

これは2021年中葉からさらに茶色の人民元が高くなったことで説明ができます。

つまり今までドルの上下によって説明できた金や白金、パラジウム、エネルギー、穀物などが、コロナショック以降はドルに加えて人民元の上下も影響を与えることがわかったのです。

そして今の米中対立の原因の根幹がここにあります。

世界の基軸通貨であるドルの地位が人民元に脅かされている証拠だからです。

すなわちコロナ後に中国がものすごい勢いで台頭してきているのです。

人民元高だとなぜ資源が買われるのか?

ニューヨークに立つロックフェラーセンター

日本のバブルが華やかなりしころ、三菱地所がロックフェラーセンターを買収する事件が起こりました。

ソニーがコロンビア映画を買収したのもこのころです。

そしてこの背景にあったのは、円高になります。

現在のドル円は110円くらいのレートですが、その当時は100円を割り込み、90円台でした。

この円高が日本の海外進出を促進し、アメリカを象徴するような場所の買収を可能にしたのです。

円高になれば海外旅行が割安になり日本人の海外旅行者が増えるように、日本企業の海外資産の買収も顕著になります。

また円高だと輸入商品の価格が大きく下がり、円安だと輸出が促進されるものです。

この中国版が現在起こっているのです。

人民元高こそがインフレの原因

コロナショック後の世界で人民元は想像以上に影響力を持つ!?

日本のバブルは、大規模な金融緩和によって誘発されたのは疑いようのない事実ですが、現在の中国も大規模な金融緩和を繰り返し借金大国になっています。

参考までに、日本は1970年代までほとんど国家債務はありませんでしたが、1972年のオイルショックを境に借金が膨らんでいきました。

1992年のバブル崩壊の際には、すでに借金が巨額に上っている状態です。

現在の中国もリーマンショック以降に借金を続け、債務が膨大になっており、この辺の状況は日本と同じ。

それに付け込みアメリカは日本経済を弱体化させたと一般的には言われますが、中国も同じ轍を踏むのかは様子を見なければわかりません。

つまり人民元高になると中国の資源や資産の買い付けが大量に行われ、結果としてインフレが起こっているのが現在の社会情勢なのです。

人民元高の原因とは?

2019年7月、アメリカ政府によるファーウェイ禁止を受けて、ニューヨークで手書きのファーウェイロゴを持ち抗議する市民

アメリカはトランプ政権時代から人民元を輸出有利に安く誘導する、為替操作国の認定をすると脅し、中国の人民元安誘導を阻止していました。

今はアメリカの言い分通りに人民元高です。

今さらバイデン大統領やブリンケン国務長官のコンビが人民元高を止めろとも言えません。

もしアメリカ政府が中国共産党にそんなこと要求すれば、末代までの恥となるでしょう。

もっとも裏交渉や下交渉ではそういう協議は間違いなく行われているはずです。

そういうときに日本の企業がどうなったかといえば、当時の大和銀行や第一勧銀がNY市場で不正取引を行い、巨額の罰金を支払っています。

今はティックトックやファーウェイがその適用を受けていますので、アメリカは虎視眈々と遅れを取り戻そうとアメリカ本土での摘発に躍起となっている状態だと考えられます。

人民元高と北京オリンピック

この人民元高は一時的な要因である側面があり、それは2月から開催される北京オリンピックになります。

東京オリンピックで円高が進行した原因を当コラムでも解説しました。

東京オリンピックの開催がマーケットに与える影響

多くの外国人の入国、そして資金の流入が行われて円が高くなったのです。

そして株価はたいていのオリンピック開催国ではその開催の1ヵ月前に高値を迎えます。

その後2〜3年停滞したのち、再び高値を迎えるのです。

中にはアテネオリンピックのように、その後のギリシャが破綻寸前まで追い込まれたことは言うに及びません。

たいてい過去の五輪というのは同じような形を辿っています。

今回の五輪が特殊なことは、東京オリンピックでもそうでしたが、パンデミックの中での開催、加えて共産国家で開催される冬季五輪ということです。

共産国家である中国では、為替相場や株式相場は共産党の管理下にあり、その動きは資本主義国家群と同列に扱うことはできない可能性があります。

しかし、オリンピックとは世界的なお金儲けの場所でもあるわけですから、世界中の人やお金が北京に集まるという事実は変わらず、そして閉幕後には一斉に人やお金は離散するということです。

一方的な人民元高はいつ収束する?

北京オリンピック開催前後は、競技のみならずマーケットからも目が離せない!

そういった意味でバイデン大統領や岸田首相が政治的ボイコットを行い、北京に人が集まらないように細工をしたということはあると言えるでしょう。

しかしパンデミックでの開催、そして企業が儲からない状態ですから、お金や人が北京に集まることは避けられないでしょう。

つまり今の人民元高は、オリンピック開催が原因の一つとしてあるわけです。

そしてこの一方的な人民元高は、オリンピック開幕か閉幕後には一段落する可能性があるということになります。

前回の夏の北京オリンピック開催のあとにリーマンショックが起こったのも、結局、中国が人民元高を背景に資源、エネルギーを爆買いした結果、崩落が先延ばしされ9月に急落したという意味もあるでしょう。

どちらにしろ、オリンピック開催から閉幕までマーケットは要警戒ということになります。

この記事のまとめ

今回の記事では、2020年のコロナショック以降、今までドルの上下によって説明ができた資源価格が、人民元の上下にも影響されていることを確認。

すなわち人民元が上がれば資源価格が上昇し、その逆もまた同じ。

つまり、現在のインフレの背景には人民元高を背景にした中国による資源や資産の爆買いがあるということ。

この人民元高の背景には、トランプ政権による人民元安誘導を阻止があるのはもちろん、来たる北京オリンピックも一因になっていると考えられる。

多くの外国人が中国に入国、そして資金の流入が行われて人民元が高くなっているということ。

ゆえに北京オリンピック開催から閉幕までは、マーケットから目が離せない!

こういう内容の記事でした。