習近平政権の目玉政策「共同富裕」について、どういうものなのかわからないという方が多いでしょう。
最近になってはっきりしてきたので、これを解説するとともに金市場への影響も説明します。
毛沢東思想から改革開放、共同富裕への流れ
中国の創業者は毛沢東で、その思想を毛沢東思想と言います。
しかし、現実の政治では文化革命など数多くの失敗を犯しました。
その後、実権を握った鄧小平が提示した改革開放路線が今日の中国の発展につながっているのです。
そして今は習近平が実権を握り、中国の拡大路線を目指しているわけです。
この流れは中国を知る上で非常に大事なことで、実際問題として、この毛沢東と鄧小平時代にははっきりと境界線を引くことができるという認識でいれば現在の中国の方向性は見失わないでしょう。
毛沢東思想は現在でも中国で根強く残っており、各地に毛信者がいます。
しかし、毛沢東思想を信奉することは現実の中国とは整合性がつかなくなっており、ある時期から毛信者は忌避されている事実もあります。
当局も建国者である毛沢東の信者を徹底的に弾圧するわけにもいかず、実際に毛沢東を信奉するような団体や記念館の建設は許認可が下りにくい事情もあるのです。
毛沢東と鄧小平
実際の現在の中国は、鄧小平思想で運営されていると言っても過言ではありません。
鄧小平は毛沢東に何度も失脚させられましたが、最終的にはその才能を評価され、毛沢東からの信認で総主席に就任しました。
晩年の毛沢東は妄想癖に取りつかれている部分もあり、自分の死後に自らの功績をすべて否定されるのではないかという恐怖に取りつかれていたというような伝聞もあります。
実際に後継にふさわしいのは鄧小平以外にいなかったのですが、その才能ゆえに自分を否定するのではないかという猜疑心から、国家主席になることを何度も阻まれています。
その鄧小平は自分を主席にしてくれた、そして国内に多くの毛信者がいることを背景に、毛沢東を尊敬するような態度を取らなければならなかったのも事実です。
そのくらい毛沢東と鄧小平には思想の違いがあり、今、仮に太子党である習近平が毛沢東路線を取ると整合性が取れないことが多すぎる、かといって国内の毛信者から反感を買えば厄介なことになるので、毛沢東を邪険に扱わないように配慮をしているのです。
習近平と鄧小平
実質上の中国の基礎となっているのは鄧小平の国家観であり、その延長処理を習近平が行っているということになります。
ポイントは、鄧小平が改革開放路線を取る際に何度も言明したことにあります。
中国はまだまだ発展途上にあり全員をすぐに裕福にはできない、だから沿岸部から裕福にしていこう。
これが改革開放路線の始まりです。
その経済特区、福建省の初代の省長に習近平の父親である習仲勲が指名されています。
習仲勲は毛沢東によって地方に左遷されたのですが、鄧小平によって復権しました。
そのことを知っている習近平が鄧小平の思想に逆らうはずはありません。
習近平というと太子党だから毛沢東に忠実であると思いがちですが、そうではないのです。
むしろ鄧小平に近い発想の人であり、総主席になったときに真っ先に鄧小平ゆかりの地、上海を訪問したことからもその尊敬具合は類推できます。
共同富裕の本義とは何か?
鄧小平は中国を沿海部から発展させて、その人たちが豊かになれば、それを地方にまで拡大しようと言いました。
その第一段階を鄧小平は仕上げ、江沢民などの後継に任せたのです。
途中、江沢民が改革開放路線を中止しようとしたときに有名は南巡講話を行い、失脚をチラつかせて江沢民に改革開放路線の実施を迫りました。
つまり一般的に習近平一強だと言われますがそんなことはなく、中国国内、共産党の中には毛沢東派や鄧小平派、そして江沢民派などがおり、それらの意向を上手にまとめて反発させないようにできるのが習近平しかいないから、3期目の総主席就任が決まった側面があるのです。
要は、沿岸部の人民が十分に豊かになったのでこれから全人民を豊かにする、これを一言で表すと「共同富裕」ということになるのです。
共同富裕と中国の爆買い
中国14億人全体を豊かにするのであれば、食べ物が必須です。
中国国内で生産される穀物では十分ではなく、結果として輸入に頼らざるを得なくなります。
人々が豊かになっていけば電気も必要です。
中国ではかつて大慶油田という油田がありましたが、すでに枯渇しそうになっているので海外から買い付けを行っています。
つまり習近平の指針に沿って世界各地から資源や食料を集めている、これが共同富裕政策と認識すれば、今の中国による爆買いが収まるか自ずと答えが出るでしょう。
中国が豊かになればなるほど、中国はさらに爆買いを実施するでしょうし、こんなものが2、3年で終わるわけがないのです。
中国がオバマ時代のアメリカにG2を提唱して相手にされなかった時期にも、中国による爆買いが起こっています。
結果は南欧債務危機などで商品の高騰も終わり、リーマンショックの傷から癒えたアメリカドルも高くなったので、中国は商品を買い漁る原因がなくなったので収まりました。
今回の場合、今までアメリカがインフレになるときは常にドル安だったのですが、ドル高でもインフレが進行するという異常状態です。
昨年の2月、アンカレッジで報道陣公開の前で中国代表団がアメリカをこき下ろしましたが、アメリカに対して今の共産党が良いイメージを抱いているわけがありません。
アメリカがインフレで苦しんでいるときにその買い付けを見送るなどということはあり得ないでしょう。
トンガ沖の海底火山噴火も穀物にとって不安材料
前回解説したウクライナ情勢も、インフレにリンクした問題が発生しています。
この買い付けは何十年も続き、デフレから脱却したい日本にとっては晴天の慈雨になるでしょうが、逆に日本もインフレに苦しむ時代に突入する可能性もあります。
つまり今後は中国14億人がもっと豊かになっていくので、さらに資源価格が上昇する可能性が高いのです。
また先日起こったトンガ沖での海底火山爆発も1992年のフィリピン、ピナツボ山の噴火を想起させる不穏材料です。
この噴火後に冷夏が起こり、世界的に穀物が大高騰しました。
その影響は単年ではなく、1996年にも大規模な不作になり、日本でも明治以降に初めて米騒動が勃発したくらいです。
この火山噴火との因果関係は解明されてはいませんが、穀物価格には注目する必要があるでしょう。
北京オリンピック、そして金市場への影響
中国は、今回の北京オリンピックでも2008年の夏季オリンピックと同様、中華民族の結集を呼びかけるでしょう。
やはり経済を拡大させるためにはお金の問題が発生します。
つまり共産党は人民元をドルと並ぶ、あるいはそれ以上の通貨にしようと躍起になっているのです。
アメリカは世界最大の金保有国ですが、中国も世界屈指の金の保有国になることは間違いありません。
万が一中国の共産党に信用力がなくなったとしても、金の保有によって裏付けが行われれば人民元の価値は高まることになるでしょう。
目指すはアメリカと同等もしくはそれ以上の金の保有、つまり国際市場で中国筋の金の買い付けもまた凄まじいものになると予測されます。
この記事のまとめ
今回の記事では、中国の習近平主席が掲げる共同富裕という政策は、沿岸部を富ませることを優先した鄧小平の改革開放政策の発展形であり、全人民を富ませることを目的としていることを確認。
ゆえに現在のインフレの原因である中国の爆買いも、人民が豊かになるに従って必要となる食料や資源を買い漁っているということ。
そして目指すは人民元をドルと並ぶ、あるいはそれ以上の通貨にしようということ。
ゆえにその価値の裏付けとして、金保有にやっきになることは必然。
つまり金市場で中国筋の買い付けが凄まじいものになると予測される。
ただし、金の価格は主にドル、金利、GDPによって左右されているので、需給はほとんど考慮されないということを忘れてはならない。
こういう内容の記事でした。
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