ロシアの次なる戦略と金相場を考えた

ウクライナ侵攻に関して、ロシアは戦略を着々と進めている状況です。

今回はこのロシアの戦略と金相場について考えます。

ロシアの次なる戦略とは?

以前に値段の約定に関して解説しました。

円安が進行するメカニズムと金価格決定のメカニズム

値段は、買い方と売り方の双方が合意して初めて成立するものです。

人の社会とは合意があって初めて成立するものであり、言い換えればこれが民主主義ということになります。

そこに以下のような記事が出ています。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/168449

引用元:東京新聞

インドが武器やエネルギー代金の支払いにルーブル払いを検討する、とあります。

その場合、エネルギーの価格をディスカウントするとロシア外相は言っています。

これは明らかな西側の切り崩しです。

インドにしては経済は開発途上であり、隣国、中国との領土紛争もあるわけですから、願ったりかなったりでしょう。

ロシアは経済戦でも勝てると踏んでいる?

ルーブルは制裁によって逆に存在感を増した?

インドにとっては都合のいい話ですが、アメリカにとっては最悪な話です。

今までアメリカのドルが基軸通貨であった理由は、貿易やエネルギーの決済にドルを使っていたからになります。

アメリカがリーマンショックで倒産しそうになっても、ドルの基軸の立場は変わりませんでした。

ところがインドに対して、この報道は実質上、ドル排除を共同で進めようという提案にほかなりません。

このような条件を示せば、ロシアからエネルギーの供給をしているほかのアジアの新興国も希望するでしょうし、また要求をするでしょう。

アメリカはロシアのSWIFT排除や外貨準備の差し押さえを行いましたが、ドルを排除すれば経済は一時的にドローダウンしても、いずれ再開できると見るべきでしょう。

ロシアはLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の破綻によってデフォルトしましたが、その後、決済をルーブルに変更をしてからデフォルトの再燃疑惑はあってもそこまで至らない経済になりました。

つまりドル排除を進めていけば、この紛争、経済においても勝てると踏んでいる側面があります。

ドル決済からの決別の流れができる?

2019年にフランスのビアリッツで行われたG7サミットの風景

中国はその一歩を先に進んでおり、ドル決済をほとんどやめています。

南米やアフリカ、もちろんアジアもドル決済ではなく人民元決済と当事国通貨のスワップ協定を結んでおり、ドル離れを加速させているのです。

もちろん、ロシアと中国の決済もスワップ協定で双方の通貨で決済することを決めており、その際に中国にもエネルギー価格を大幅にディスカウントしています。

エネルギー価格が高騰している中、持っていれば値段が下がるドルを見て、こんな魅力的な取引はありません。

しかし先進国、G7は、安全保障を担保にアメリカにドル決済を強要されているような状態なので、ルーブル建てや人民元決済を大っぴらにはできない状態になっています。

エネルギー覇権を握りつつあるロシアに対してルーブル建て払いを約束すれば安い原油が入ってくる、こんな魅力的な話はないでしょう。

ところがG7諸国はアメリカが恫喝するので参加できません。

結果、エネルギー高から産業競争力が低下するというジレンマに陥り、安全保障などは自前でやり、ドル決済から決別するという流れができるのではないでしょうか。

ロシアがエネルギー覇権を握る日

2022年3月24日、ブリュッセルのNATO(北大西洋条約機構)本部で記者会見を行うバイデン大統領

中長期で見れば、少なくとも現時点では、アメリカの力が衰退していくと考えるのが妥当です。

それに対し、バイデン大統領はイラン核合意の妥結やベネズエラに対して一部制裁の解除と、原油価格の引き下げに必死になっています。

SPR(戦略石油備蓄)の放出にまた手を付けていますが、この方策は昨年11月に行われ、失敗したのは明らかです。

ここまでやって原油価格が下がらなければ、ロシアのエネルギー覇権の獲得に間違いなくなるでしょう。

なぜならドルを利用すれば高い原油、エネルギーを買わなければいけなくなるからです。

現時点でバイデン大統領の石油価格低下政策は、うまくいくように思えません。

欧州、日本、オセアニア、カナダなど西側の結束も、こういう状態になれば相当雲行きが怪しくなるでしょう。

そして中国が一方的に新興国やロシア原油の取引をアピールし出せば、西側の徹底的敗北は明らかになってきます。

これは値段で言えば、中国がインドの条件に成り行きで売ってくるということを示し、これをやってくれば売り方はロシアの一方的勝利となるでしょう。

ITや農業も…

アメリカ、カリフォルニア州サリナスバレーの農場の風景

アメリカの強さの源泉にはエネルギーもありますが、穀物も世界の中心にあります。

そのほかITなどの新技術もありますが、これらを見ていきましょう。

ITに関しては中国に制裁をかけています。

その理由は、アメリカが言うにはフェアでない、技術を盗んでいるということですが、実際はIT技術で中国に負けただけです。

では穀物生産高はどうなのかといえば、アメリカがその地位から陥落して20年以上たちます。

実際は一国単位ではアメリカが1位ですが、南米の生産量には負けているのです。

1990年代から2000年代前半にかけてその地位を回復した理由はバイオテクノロジー。

干ばつや冷害に強い品種を作るのに、バイオテクノロジーがアメリカは決定的に強かったのです。

農業覇権もおびやかされるアメリカ

一部の東南アジア諸国などでは好んで食べられる昆虫類だが…

農業の現状は、テクノロジーで生産は一時的に増えましたが、耕作地は年々減り、就業人口も減っています。

それに対して人口は増えています。

これでは食料価格が上昇するのは必然なのです。

インフレを避けられてきたのは、バイオテクノロジーのおかげでした。

その猶予期間が終わり、WHO(世界保健機関)はリーマンショック後から今後、人類は昆虫からタンパク質を得ることが主流になってくるであろう、と予測しています。

これはアメリカのバイオテクノロジー技術も限界だ、と言っているのも同じです。

その穀物の輸入も生産ナンバー1である南米は、ほとんど中国の支配下に入り、積極的に人民元と現地通貨のスワップ協定に参加している状態です。

アフリカもアジアも、そしてロシアもこれに加わります。

もはや欧米に有利なことなどほとんどない

ウクライナの小麦畑

小麦生産はロシアが1位ですが、そのほとんどが中国に行ってしまうこともわかっていることです。

ウクライナも高い値段で買ってくれる中国向けに輸出するのですから、実は西側にあまり関係がありません。

要は人間の欲求のうちの食欲もエネルギーもロシアと中国に抑えられ、アメリカに残るのは技術開発のみ。

それも中国に劣勢であり、今後の主要技術になる環境革命の資源も中国に奪われ、アメリカが有利なことなどほとんどありません。

戦力だけはアメリカがダントツの1位ですが、これも中国に負けそう。。。

となると欧米が食料・エネルギー・資源などで中露と買い競りを行っても、現状では勝てないと思うのです。

この記事のまとめ

今回の記事では、ロシアによるルーブル建てエネルギー安売り攻勢について確認。

エネルギー・資源・農業・ITの分野で覇権を握っていたアメリカも、今やその地位を中露に譲らざるを得ない状況。

そして中露による西側陣営切り崩しにますます拍車がかかるだろう。

インフレが続くか否か、こうした状況で金は高くなるか、低くなるか。

あきらかにインフレは続き、金は高くなるであろう。

こういう内容の記事でした。


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