このインフレの見通しと金の買い時

世間でも石油やら小麦などの価格が上昇しています。今回は今後のインフレの展開について見通しを示し、金の買い時を見定めます。

このインフレは続くのか否か?

高騰を続けるガソリン価格。2022年3月のペンシルベニア州エマウスのガソリンスタンド

西側の政権は9月、つまりこの秋くらいまではインフレが続くと見ているようです。

この根拠は、3月にバイデン大統領が再び各国と協調して行った石油備蓄の放出になります。

昨年11月に放出を行っても効果が出なかったので、今回は毎月継続的に9月まで放出します。

3月から9月まで放出とは、結局、消費者物価指数が経済指標の中でも遅行指標であり、上昇した原油やエネルギー価格が最終的に消費者物価指数に転嫁されるのは半年後、すなわち9月になるのがだいたいのセオリーだからです。

そのほか岸田総理は先日、小麦の政府引き渡し価格の9月までの維持を表明しました。

これは、日本の小麦の引き渡し価格は4半期ごとに決定しており、4月も7月も値上げを決定していましたが、それを撤回するという内容になります。

つまり今がインフレのピークであり、今後は下がっていく可能性が高いからやっているのです。

しかし当コラムは、この見立てには大きな誤りがあると現時点で喝破しておきます。

今回のインフレの特徴

ドルはここ数年の新値を取っている状態

インフレとは本来、通貨安から引き起こされるものです。

しかし基軸通貨であるドルは現在もアメリカの雇用好調を反映して高い状態です。

このようなインフレは過去に例がなく、つまり私たちが出会ったことのないタイプのインフレになります。

過去の戦後のドイツや日本のような不景気の対処法と違うのが必然ですが、当時と同じことをやっています。

現在の私たちの生活というのは物資にあふれ、モノや食べ物を大事に扱いなさいという教育です。

ところが戦後は食べたいものが食べられず、例えばの話、暖房油などの必要なモノも売っていない状態でした。

こういう時代であれば、不足しているモノを配給制にして需要や買い占めを抑え、供給を増やすという政策が有効になります。

ところが今回は必要な物資はあるとわかっているのに、現実的にはない状態でモノの価格が上昇していくというインフレなのです。

金利の引き上げとインフレの関係を見ると…

収まる気配がない円安

こうなった理由は、金融緩和のやりすぎの結果です。

お金が余っているので、今後値上がりしそうなモノを買い占める状態になってしまいました。

であれば、お金のばらまきをやめればいいという話になり、実際にFRB(連邦準備制度理事会)は、次回のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げと緩和の抑制を行うことになるでしょう。

しかし日本は金融緩和を維持すると言っているので、円で借金をしてアメリカを主とする外国に投資するというキャリートレードが活発になった結果、ドル円相場で大きな円安になりました。

インフレとはお金の価値が減価しているから起こる現象で、実際のドルは上昇していますが、それ以上に物価が上昇しているので人々はモノを買うようになっています。

そこに裕福な人や投機的な人たちは、その値上がり利益を期待して買い占めを行うということです。

つまりインフレを抑えるにはドルの価値を上昇させることがマスト。

しかし実際には金利の引き上げ(金利を引き上げるとドルは相対的に安くなる)を行うのですから、やっていることがアベコベです。

これは伝統的な方法で過去のインフレにおいては間違いがない取引ですが、現状では機能しない可能性が高く、つまりインフレは続くでしょう。

どうすれば金利を引き下げられるのか?

金利には、政策金利と市場金利があります。

今の政策は政策金利を0.25〜05%と低く誘導し、現在1.6%くらいの市場金利から乖離してバブルを誘発しています。

ですから現実の生活はよくないが、株価などは上昇していくという実態のない取引を行っていることになるのです。

金利でも政策金利を引き上げるのは有効ですが、反対に市場金利を下げていかなくてはいけません。

その市場金利は主に何で決まっているのかといえば、住宅ローン金利です。

下記のグラフは青棒線が住宅ローン金利、黒点線が指標金利である10年物国債利回りで、見事な相似となっています。

参照元:TRADING ECONOMICS

つまり市場金利を下げたければ、住宅ローン金利を下げればいいのです。

住宅ローン金利と市場の金利(米国債10年物利回り)が一致するのは、企業や政府も資金調達を希望しますが、借り手市場で最大の需要者は住宅ローンを希望する人たちだからです。

では、住宅ローン需要は今後どうなるのかといえば、今年に入って株式はおそらくGDP(国内総生産)の減少によって低迷するでしょう。

昨年、大躍進したビットコインも投機資金が逃げ出しているので難しいと思います。

残るは商品市場と住宅市場しか投資するところがありません。

ところがエネルギーや穀物などの市場は非常に小さいので、大きな資金が流れ込むと暴発するだけの話なのです。

ですから、まだまだ資源価格は上昇します。

0.5%の利上げなんて焼け石に水

金の買い時は?

問題の根幹はお金が安い金利で出回った結果、金利が付かないので投資商品や物品を買うほかないという状態になっていることです。

その対策としてFRBは5月3日に0.5%の利上げを決定しました。

しかし政策金利0.375%に対して市場金利1.6%と1.3%程度の金利差を、0.5%の利上げで乖離幅を縮小しても0.8%も残る、つまり物品の購買意欲は止まらないことになります。

次回でも0.5%の利上げを行うでしょうが、また市場金利が2%くらいになっているでしょう。

やってもやっても追いつかないから政策金利を一気に20%くらい上昇させて現金の価値を高める以外ないのに、小出しの政策ばかりをやっているのです。

日本も同じで、金融緩和を維持してバブルを助長しています。

こういう状況下で金が目先下がっても、下がったところが買い場になるということは変わりがありません。

この記事のまとめ

今回の記事では、今のインフレは基軸通貨であるドルが高いのに物価高になっている今までに経験したことのないインフレ。

これへの対応策が旧来どおりの利上げであるという現実は、このインフレがまだまだ続くことを示唆している。

すなわち、今しなければならないのは利下げ。

そのために必要なのは住宅ローン金利を下げること。

今のままでは金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はいつまでも貧乏という格差が生まれるのみ。

金は目先下がったところが買い場!

こういう内容の記事でした。


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