アメリカが「景気後退」入り!? 金価格はどう変わる?

最近のマーケットで話題となっているのはアメリカがリセッション、つまり景気後退入りなのか否かです。今回は、これと金価格の関係を説明します。

リセッションの定義

一般的には、GDP(国内総生産)成長率が2期連続でマイナスになった場合に、リセッション入りと言われています。

下記のグラフは、アメリカのGDP年間成長率です。

参照元:TRADING ECONOMICS

最近では2020年のコロナショック、2008年のリーマンショックが2期連続のマイナスとなり景気後退局面だったことになります。

この2つは、誰にでもわかるような大事件が発生した結果での景気後退局面入りでした。

今回は、2月にロシアのウクライナ侵攻が起こりました。

しかし、リーマンやコロナショックのように直後にマイナスになるのではなく、時間をおいて不景気になったのは1990年代以来、約30年ぶりになります。

アメリカはリセッション入りしたのか?

下記のグラフはアメリカGDP成長率、前期比になります。

参照元:TRADING ECONOMICS

冒頭に上げたGDPの年間比では直近がマイナスにはなっていませんが、前期比だと直近がマイナス成長でした。

つまり今期、2022年4〜6月期もマイナスとなれば、リセッションの定義である2期連続マイナスに当てはまります。

今マーケットでは、アメリカが約30年ぶりに平時でも景気後退局面入りになるのかということが話題になっているのです。

イエレン米財務長官がリセッション入りを示唆

下記は、イエレン財務長官の発言になります。

https://jp.reuters.com/article/yellen-recession-idJPKBN2O222D

引用元:ロイター

この文面を読むと、イエレン議長は2022年4〜6月期のGDP成長率が前期比でマイナスになることを前提に話をしています。

この意味は、リセッションの定義である2期連続でのマイナス成長を意識したもので、すなわちリセッション入りは確定的と言っているのに等しいものです。

その上で、一口にリセッションと言ってもさまざまな局面があり、今回の不景気があまり大きく長引かない自信があると言っているのです。

そして注目すべきは、雇用の強化を図りながら今回のリセッションを克服すると言っている点です。

イエレン発言の意味とは?

「インフレ低下と堅調な労働市場維持は両立可能」と発言したアメリカのイエレン財務長官

一般的な経済学では、企業利益の減少はイコールの関係として雇用の減少になります。

この企業の利益が減る理由とは、今までは低金利によって資金を激安で集めることができ、儲けやすい傾向が出ていたわけです。

儲かるのであれば、企業は人をたくさん雇用してもっと稼ぐという行為に動きます。

ところが、今回のFOMC(連邦公開市場委員会)でサプライズの利上げ0.75を行い、そして前回は0.5、その前は0.25と今年だけで1.5%の利上げを行いました。

これでは激安の資金が調達が困難になるわけで、企業によっては儲からなくなり、結果、雇用が悪くなるだろうと言っているのです。

しかしイエレン長官は、この強い雇用を維持したまま、景気後退局面を乗り切る自信があると言っています。

FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長も同様の言動を行っていますが、イエレン長官同様に具体的な方策には言及がありません。

どう考えても中間選挙前の強がりとしか言いようがないでしょう。

金価格急落の可能性あり!?

イエレン財務長官の言葉のとおり事が運べば金は下がるが…

まず確定していることは、これからも金利は上昇するということです。

なぜなら、FRB議長自ら7月のFOMCでも政策金利の引き上げを言及しています。

場合によってはまた0.75の引き上げを行う可能性にも言及しています。

金の価格構成要因は【1】ドル、【2】金利、【3】GDPです。

【3】のGDPに関しては、イエレン財務長官が4〜6月期がマイナスになる可能性に言及しているので、金にとってネガティブ。

【2】に関しても、金利は引き上げになっていくので、金にはネガティブです。

そして不透明なのは、【1】ドルに関してになります。

ドルは雇用にリンクしており、イエレン長官が言うように今後も強い雇用を維持したままであれば、金の価格構成要因【1】から【3】までネガティブになってしまいます。

このような結果であれば、金は大きく下がります。

年間比で金の価格構成要因を分析

その雇用に関しては、今はなんとも言えない状態です。

理由は、企業の利益が減れば雇用も減るのが道理ですが、イエレン長官やパウエル議長はそれをさせないと言明しているからです。

そこで、年間比で金の価格構成要因を見てみましょう。

【1】ドル 年間 13.70%上昇(6/21引け時点)
【2】金利 年間 1.79%上昇(6/21引け時点)
【3】GDP 年間 3.5%上昇(5/26発表、ファイナルは6/29確定値)

目を引くのは年間13.7%も上昇している【1】ドルで、この1年間雇用が好調であったことを示しています。

金利は年間で1.79、GDPは3.5であり、ドルとは比べ物になりません。

つまり金の価格が上昇するのにはドルが下がればよく、下落してほしいのであればこのままドルが上昇すればよいことになります。

雇用が左右するドル建て金価格のゆくえ

景気後退で雇用が下がりドルもまた下がると考えるのが常識的

企業の利益が減って、雇用を維持するのはあまりにも非現実的です。

つまりある程度の雇用の悪化は企業利益が減った結果起こると、イエレン長官やパウエル議長は認めていると考えるのが妥当でしょう。

となるとドルが下落するということになります。

総合的に金利やGDPが今後下がっても大したことはないですが、ドルは年間で13.7%も上昇しており、下げ余地が大きいことになります。

3つの価格構成要因のうち、2つが金の価格下げを暗示しています。

残り一つのドルという指標は、【2】と【3】のそれぞれの数字、1.79と3.5を凌駕するような下げも期待できないことはないとも言えるでしょう。

今、ドル建て金価格が低迷なのは、イエレン長官がドルを下げさせない自信があるとし、ほかの見通しは金にとってネガティブだからです。

これでドルの下落がはっきりすれば、再びドル建て金価格が上昇することになるでしょう。

円建て金価格はどうなる?

長引く円安は終わりを告げる?

円建て金価格については、円の価値はドルの上昇以上に下がっており、ドルが上昇したときに必ず円が下がるというかたちになっています。

つまりドル円はドルの下げが鮮明になれば、自動的にドルの下げ以上に円が上昇する公算が高いでしょう。

なぜなら、日本は金融緩和をしたままなので国力の上昇が見込まれるのに対し、アメリカは金利が上昇、インフレが高騰しすぎで景気後退に入る可能性が非常に高く、円の上昇の方が大きいと考えるのが自然だからです。

ゆえにドル円は円高で、そのペースが早ければ早いほど、円建て金価格は下がることになると考えるのが合理的でしょう。

この記事のまとめ

今回の記事ではアメリカのリセッション、すなわち景気後退への突入はほぼ確実であることを確認。

金にとっての問題は、この景気後退によってドルの価値と連動しているアメリカの雇用がどうなるか。

イエレン財務長官やパウエルFRB議長は、強い雇用の維持を訴えているが、常識的に考えて景気が後退すれば雇用の減少は避けられない。

よって現在のドル高からドル安への転換が明白になれば、ドル建ての金価格は上昇するだろう。

また円建ては、相対的に円高になるペースに従い価格が下がることになると予測できる。

こういう内容の記事でした。


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