独立記念日明け後のドル急騰と金価格への影響

7月4日の独立記念日明けのアメリカ、ヨーロッパ市場でドルが急騰し、ユーロは実質上の史上最安値を更新しました。今回は、この件について解説します。

ユーロの急落とその原因

下記のグラフは1960年からのユーロの足です。

参照元:TRADING ECONOMICS

実際にユーロが通貨として流通し始めたのは1999年からです。

つまりユーロ発足時のレートまで売られている状態で、実質、史上最安値と言っても過言ではありません。

この要因は下記のユーロドル、右軸に緑のドルインデックス、左軸を反転させたグラフをご覧になれば明らかです。

参照元:TRADING ECONOMICS

緑が最近かなり下がっている、つまりドルが急騰したからユーロが下がったのです。

ドル急騰の理由の前に…

インフレに見舞われ、どう考えても11月の中間選挙で苦戦が予想されるバイデン大統領

ドル急騰の原因を説明する前に、まずはインフレについて言及しなければいけません。

ヨーロッパもこのインフレに苦しんでいますが、アメリカも同様です。

なぜなら秋に中間選挙を控え、このまま行けばバイデン民主党は敗北必至な情勢になります。

ヨーロッパでは、イギリスのジョンソン首相が辞任を表明しましたが、イギリスはEUから脱退しているので、ユーロには関係がありません。

先日フランス大統領選挙が終了し、主要な選挙がない状態なので、今世界はアメリカの現政権を応援するようなかたちをとっています。

そしてそのアメリカは選挙に備え、インフレを鎮静化させるために必死なのです。

なぜドルは急騰したのか?

まずインフレとは、厳密に言えば物価上昇のことではなく、通貨安の結果として物価高になることを指します。

つまりインフレとはドル安が招くものであり、これが金の価格構成要因にもなっていることは今まで説明してきたとおりです。

現金の価値が下がれば相対的に金の価値が上昇するのは、誰でも価値の下がる現金よりも金を持ちたがるからです。

今回のインフレも、下記のドルインデックスのグラフのとおり、去年1年間はドル安でした。

参照元:TRADING ECONOMICS

2020年2月にコロナショックがあり、アメリカをはじめ世界は史上最大規模の金融緩和、つまりばらまきを行いました。

お金をばらまいたのですから、需給が緩和してドルの低下が2021年まで続き、その後は経済の回復に伴いドルが高くなったのです。

そして、2022年に入るとさらにドルが上昇しました。

ドルが高くなると現金の価値が高くなり、金や株などのリスク資産の値段が下がります。

そしてその上にFRB(連邦準備制度理事会)は3月から利上げを開始し、6月からは金融緩和の縮小を開始しています。

ドルをばらまくのやめたと言っているのですから、ドルの価値が上昇するのは当然と言えるでしょう。

ドル急騰と米中間選挙の関係

下記のグラフのとおり、3月から利上げ開始でドルの価格が上昇し、6月から保有資産の縮小を開始してまたドルが上昇しているかたちです。

参照元:TRADING ECONOMICS

FRBは、バイデン政権を次回選挙で勝たせるためにドルを高くして、インフレを抑え込もうとしていることがわかるでしょう。

ドルが高くなれば、株価も原油も金も下がります。

以下は、原油価格のグラフです。

参照元:TRADING ECONOMICS

原油価格は、3月に利上げをしても2月24日のウクライナ侵攻で価格が下がらず、6月1日のQT(保有資産の縮小)によってようやく下がり始めました。

ドルに連動する米雇用を見てみると…

以前解説したようにドルの価格はアメリカの雇用と相関しています。

現在の金相場は米新規雇用者数の良し悪しに注目!

以下はアメリカの失業保険申請者数ですが、6月に入って急増していることがわかります。

参照元:TRADING ECONOMICS

この現実はドルを安くする効果があるので、今はドルは急騰していますが、7月7日のADP雇用統計や7月8日の雇用統計、失業保険申請者数を見れば下がってくることはわかります。

となるとまた、株価や原油の価格が上昇し始めます。

また、ドルが高くなるということは裏返しとしてユーロが下がることになります。

史上最低値のユーロ圏では、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー危機が起こっています。

アメリカではエネルギー価格が下がりますが、反対にユーロではエネルギー高騰が再燃することになるでしょう。

つまりインフレがユーロ圏で活発化し、冬にはまたアメリカに飛び火するということです。

金価格はどうなるのか?

サプライズのユーロ急落、ドル急騰でした。

ドルが急騰すれば金の価格が下がる一方で、金利が下がることにもなります。

参照元:TRADING ECONOMICS

6月の中旬から金利が下がっていることがわかるでしょう。

つまりドル高で金の価格が下がっていますが、金利も下がっているので、金価格はまた上昇するという推測が成り立つのです。

この記事のまとめ

今回の記事では、7月4日のアメリカ独立記念日明けにドルが急騰し、ユーロが急落した背景には、インフレを抑えて来たる米中間選挙でバイデン政権を応援したいFRBの思惑がある。

これにより相対的に価値が低くなるユーロ圏では、再びエネルギーの高騰に見舞われ、それが冬にはアメリカに波及するだろう。

金価格について言えば、ドル高で価格が下がっているが、金利も下がるので、再び価格が上昇するという推測が成り立つ。

こういう内容の記事でした。


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