金価格はドルの上下動に連動していましたが、ここ最近はまた変化しています。今回はその解説です。
最近までの金の値動きとドルの上下動
下記のグラフは、ここ6カ月の金とドルの動きです。
青線がドルインデックスで左軸、緑線が金価格で右軸になります。
左軸のドルインデックスの値は反転させてあるので、下にいけばいくほどドルが上昇、右軸の金価格はそのままの見方です。
3月からドルが上昇すればするほど金の価格は下がっていることが確認できます。
つまり4月から6月までは、ドルが上昇すれば金の価格は下がるというセオリー通りの動きです。
ところが7月の中盤に入って、青のドルインデックスが下落しているのに、金は横ばいのままになっています。
10年物米国債利回りの最近の動きは?
上記の説明で、金の値動きはドルの上下動きから離れ、別の何かを基準に動き始めたことがわかりました。
セオリーでは金価格の変動要因は他に金利になるので、米10年国債の利回りと金相場の動きを見てみましょう。
下記のグラフは7月13日から7月21日までの1週間、緑線が金価格で右軸、青線が10年物米国債利回りで左軸を上下反転させてあります。
金が下がっているときは金利が下落していますが、15日近辺では金利が安いままなのに金は下がってしまっています。
これはセオリーにない動きです。
これでは、金の動きは主に金利やドルに相関しているという説明がつかなくなってしまいます。
米国債2年物利回りを見てみると…
しかし、下記の金価格(緑線)と短期標準金利である米国債2年物利回り(青線)のここ1カ月の関係を見てみてください。
なお上記のグラフ同様、左軸にあるの2年物利回りの値は反転させています。
7月に入るまでは、青線の2年物国債と緑線の金の関係は全く相関がありません。
しかし7月に入り青線の2年物国債が急騰すると、緑線の金価格が下がる関係が見事に確認できます。
次に挙げるグラフは、ここ1カ月の2年債と10年債の利回りの動きです。
7月の上旬までは2年債と10年債の動きはほぼ一緒でしたが、10日過ぎあたりから2年債が急騰し、10年債が横ばいになっています。
金の価格も10日前後を境に大きく下がっていることから、金の価格は現在2年債にリンクしていることがわかるのです。
米国債2年物金利の急騰とFOMCの関係
この原因は、7月の28日と29日に予定されているFOMC(連邦公開市場委員会)と考えられます。
次回のFOMCはFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が0.5の政策金利は予定通りで、サプライズで0.75から1.00までの利上げがあるかもしれないと示唆したところから、2年物金利が急騰しているのです。
参考までに、政策金利とはFFレートのことであり、その金利は1年物金利を指します。
国債の標準金利は10年物国債ですが、短期の標準金利は2年物国債を指します。
もちろん、アメリカでも52週(1年)物国債が発行されていますが、これは標準のものではなく売買が活発ではありません。
FFレートを上げることを表明すると、どうしても短期標準金利である2年物国債利回りが上昇しやすいのです。
つまり一般的には10年物国債金利が金の価格と連動していますが、次回のFOMCで政策金利の利上げが確実なので、より実態に近い2年物国債の利回りに着目して動いているのです。
この記事のまとめ
今回の記事では、2022年7月中〜下旬現在の金価格は、従来のドルや米国10年債ではなく、アメリカの短期標準金利である2年物国債の利回りに相関していることを確認。
その背景にあるのは7月の28日と29日に予定されている次回FOMC。
このFOMCでの政策金利、つまりFFレートの利上げは、当然の帰結としてアメリカ国債2年物の上昇につながる。
ゆえに結果として、2年債にリンクしている金は下がると予測できる。
こういう内容の記事でした。
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