金価格の3つの構成要因【1】ドル、【2】金利、【3】GDPのうち、アメリカの2022年4〜6月期GDPが7月28日に発表されました。今回はその結果を説明し、金価格への影響について解説します。
アメリカの4〜6月期GDPが示すこと
下記の棒グラフは、アメリカの2022年4〜6月期GDPの前期比です。
以前、景気後退の定義は2期連続のGDPマイナスと説明しました。
つまり今回のGDP発表で、アメリカ経済が景気後退局面にあることが判明したのです。
下記のグラフのとおり、過去にはリーマンショックやコロナショック、ITバブル崩壊など、大きな事件があると2期連続のマイナスで景気後退局面入りしました。
しかし今回は、大きな事件の直後にマイナスとなったわけではありません。
通常の経済での景気後退局面入りは1980年代以来約40年ぶりで、特筆すべき事態です。
約40年ぶりの通常経済での米景気後退局面の意味
下記の折れ線グラフは、アメリカの10年物国債利回りの推移になります。
1980年代以来、アメリカには通常経済での景気後退局面はありませんでしたが、金利のピークはその1980年代。
つまり1980年代以前の景気後退局面とは、金利高によって訪れていたことになります。
今回の景気後退も、2020年8月に金利が史上最低を打って上昇してから初めて景気後退が確認されているので、要は金利高不景気といえるでしょう。
参考として、以下の米10年物金利利回りとGDP前期比を対照したグラフをご覧ください。
1980年の前半、金利が上昇するとGDPがマイナスになっていることが確認できます。
2008年のリーマンショックは、金利が下がってもGDPがマイナスになった深刻な不景気でした。
またコロナショックも、金利低下での不景気になっていたことがわかります。
金利上昇の動向はどうなるのか?
日本を除いて、各国の金融政策当局は利上げの方向で舵を切っています。
ですから、今後も金利は上昇傾向にあると考えるのが通常です。
しかし、アメリカの金利動向をご覧ください。
アメリカ国債10年物利回りは、3、4月に利上げしたときには上昇しています。
その次に6月15日、0.75の利上げをしました。
6月は利上げをしたときがピークで下がり、今回7月27日の利上げも0.75利上げをしたときには反対に下がっています。
つまり政策金利は上昇していますが、反対に市場金利、つまり指標金利であるアメリカ国債10年物金利は下がっているという現象が起こっているのです。
なぜ政策金利と市場金利があべこべに?
この理由を説明します。
通常は、政策金利が上昇すれば市場金利も上昇するというように、連動しています。
ところが、モノの価格が上昇すれば売れ行きが鈍くなるのと同様、市場金利が上昇すると、資金を借りたい人が少なくなるのです。
つまり需給ギャップが生まれ、借り手が少なくなるので金利が下がることになります。
その典型が住宅ローンです。
下記のグラフからは、青棒線の住宅ローン金利が上昇するたびに、住宅ローン申請者が減っていることが確認できます。
つまり金利が上昇することによって、資金需要がなくなっていることが世界で起こっているのです。
FRBのインフレ対策とドルの価値
インフレとは、供給に対して需要が過剰にあるから物価が上昇することです。
この要因は、通貨が安くなる傾向があると、価格が下がっていくものを皆が保有したくないので、現金を消費して商品などを購入するから、需給がタイトになってインフレが起こります。
FRB(連邦準備理事会)はこの原因を精査し、まず通貨高、すなわちドル高を実現しました。
金利も引き上げる、つまりこれによって現金の価格を上げて、消費者にドルを持っていれば値上がりするから保有してくださいと呼び掛けているのです。
商品の製造業者は、作れば作るほど売れるので、借金をしても製造します。
その借金はゼロ金利だったので、無限に借金をするという構図です。
そして、金利が上昇すれば返済のコストが上昇するので製造しなくなります。
つまりドルの価値が上昇したので、商品を購入する意味がなくなったのが現在の状態です。
商品を製造するのには人手がいるので雇用をしますが、現在は売れないので解雇を優先し始めます。
人々はドルを持っている方が安全なので商品を購入しない、結果、売り上げが激減するという循環が現在の姿です。
だから、GDPが2期連続でマイナスになったのです。
そしてインフレからデフレへ
業者は、インフレが発生したときには生産を過剰にし、売れ行きが止まってから製造を止めます。
その結果、業者の倉庫は在庫の山です。
人々はドルを持っていれば価値が上昇するので、買い物を止めます。
ゆえに、その在庫が掃けるのにかなりの時間を要します。
これをインフレの反対、デフレといいます。
中央銀行はいつも通り金融緩和を実施すればいいのですが、今度はまたインフレが起こるので、できないという状態になります。
つまり、この2期連続のGDPマイナスは現在の情勢では長く続くということです。
GDP2期€連続マイナスの金価格への影響
まず、市場金利と金の価格は連動するので、金利安から金の価格は上昇します。
ところがドルが上昇、そしてGDPはマイナスなので、金の価格はトータルでマイナスになる可能性があるということです。
ですから今、金の価格が下がっています。
ただし、東西冷戦が再び始まり、中国を筆頭とする東側陣営が金を買い集めている現実があります。
下がるでしょうが、今後、この需給要因によって上昇する可能性があるといえるでしょう。
この記事のまとめ
今回の記事では、7月28日発表のアメリカのGDPが2期連続でマイナスになったことで、アメリカが景気後退入りしたことが確定。
しかもこの景気後退は、リーマンショック後やコロナショック後と異なり、特別なネガティブ因子もないもので、実に1980年代から40年ぶりのこと。
今後はFRBのインフレ抑制策、つまりはドル高への以降から、このインフレがデフレへと転じる可能性が大。
つまりはこの景気後退は長引くということ。
低下する市場金利は金価格の上昇要因ではあるが、残る金価格の変動要因であるGDPが下落し、ドルの価値も上がることから、トータルで金価格は下落する可能性あり。
しかし、中国を筆頭とする東側陣営が金を買い集めていることから、この需給要因を理由に金は上がる可能性も十分にある。
こういう内容の記事でした。
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