【金相場テクニカル分析】他の金融市場に先行する金市場

金市場は、実は他のあらゆるリスク資産市場に先行しています。

今回はドル建て金のテクニカル解説から、そんな金市場の展望と他のリスク資産市場の成り行きを見ていきましょう。

ドル建て金相場のテクニカル分析

以下のチャートは、ドル建て金価格の週間足です。

移動平均線は10-15の1刻み(白線)、30-35の1刻み(黄色線)、100-150の10刻み(白線)、300-350の10刻み(黄色線)になります。

週間足なので、範囲が非常に広いことに注意してください。

移動平均線とは、トレンドを見るものです。

10-15、30-35はもはや完全に下を向いており、最近では100-150の10刻みの線も100-120までも下を向いている状態になります。

わずかに一番大きな線、300-350だけが全て上を向いています。

今回のこの下げは100-150の線のうち、100-120までが下を向いていることに起因していることがわかります。

これは、100-150が全て下を向いた場合、300まで下がることを示しています。

つまり現在300が1540くらい、350が1500くらいになりますが、セオリーでは1500ドルくらい、つまり350までは下がる可能性があります。

大事なことは、この100-150の白い線が上を向き始めたのは2017年頃からで、5年間も続いたアップトレンドが終了しているということです。

現時点ではあくまでも上記のチャートを見て、終了の可能性が強いことになります。

確定するのは150が下を向いたときです。

参考までに、300-350が上を向き始めたのは2019年でした。

100-150が転換するのに5年かかったということは、300-350がダウントレンド入りするのには5年以上かかる可能性の方が高いということになります。

つまり300-350がダウントレンド入りするのは2024年くらい、ということです。

その間は金がいつ高値を取ってもおかしくない、ということになります。

300から350が上を向いているということは、買い相場に転換する可能性を示唆します。

これが下を向けば完全に戻り売り相場になります。

100週とは1年間が52週なので2年、150とは3年であることが考察のポイントです。

つまり2年平均と3年平均は、なかなか時間が経過しないとダウントレンド入りしませんし、現在100-120がダウントレンド入りしているのがだまして上に行く可能性は、よほど値段が動かない限り可能性が低いということになります。

ファンダメンタルズとの整合性

ファンダメンタルズとは、

【1】ドルの上下動
【2】金利の上下動
【3】GDP(国内総生産)

のことです。

このうちドルと金利は大幅に上昇しているので、週間足のように金がダウントレンド入りするのは至極当然です。

金が二番天井を打ったのは3月でした。

ちょうどFRB(連邦準備理事会)がテーパリングに入ったのが4月、利上げを開始したのも4月です。

つまり金利高、ドル高を促進したのと同時に、金は頭を打っているのと並んでいます。

その後、6月から0.75の利上げを行っているのでドル高、金利高が促進されました。

チャートを見ると、6月から下げが促進されているのと整合します。

9月は今のところ、0.75の利上げとされているので、金の価格は現在、横並びのように見えますが、これから下がると予測することができます。

なお、次回のFOMC(連邦公開市場委員会)は9月21日・22日です。

現状のファンダメンタルズは金の下げを示唆

問題はGDPで、アメリカのGDP総額は、下記のグラフのとおりとなっています。

参照元:TRADING ECONOMICS

すでに2020年のパンデミック被害よりも大きく成長している状態ですが、2022年は低下が予測されています。

最新の統計では年率で1.6%のマイナスです。

つまりファンダメンタルズでは【1】ドルはネガティブ、【2】金利もネガティブ、【3】GDPもネガティブとなっており、金の価格は現時点では下がりやすい状態になっているのです。

ここで金を強気するというのは素人と言わざるを得ない状態になります。

ファンダメンタルズからの展望

現状は利上げ方向のFRBだが、インフレが収まり景気が上向けば利下げに転じるだろう

ファンダメンタルズからは、ドルからも金利からもまだ安いと言っているわけです。

ただしGDPは今年2022年はマイナス成長ですが、おそらくそのうちに今の金利高、ドル高のペースになれてプラスに転じてくるでしょう。

そうなると【1】から【3】まで弱気オンリーだったものが、【3】のみポジティブに変化をします。

【3】がよくなるということは、景気がよくなるということですので、その景気をよくするためには金利を下げなくてはいけません。

つまり今のインフレが終息すれば、FRBは必ず金利を下げるはずです。

そうなってくると金利の計算は「ドル×金利」になるわけで、ドルの価格も下がってくることになります。

結果、【1】から【3】まで金にとってポジティブな相場環境となり、金は買いに転換するでしょう。

金が上がるタイミングはいつ?

現時点で言えることは、【3】のGDPがマイナスのうちは金は反転しない、GDPがプラスに転じるのはFRBが金利を引き下げるか、もしくは去年との対比です。

参照元:TRADING ECONOMICS

2021年はコロナ禍がひどかった2020年との比較になるので、大きく成長しました。

ところが2022年はその2021年との比較なので、成長が鈍化します。

2023年はさすがに1.7%の成長に対して、これを凌駕できるかが問題です。

1〜3月期に3.5%の成長は難しいでしょうが、4〜6月の1.7%の成長は凌駕する可能性があり、早くて来年の4〜6月には金は底打ちになって上昇する可能性があります。

ただしウクライナ侵攻や米中対立のせいで、東西のデカップリングが余計に進行した場合はこの限りではありません。

東側諸国が自国通貨の信用性を持たせるために金を大量購入すれば、金相場は上記の【1】から【3】に頼らず、今の穀物のように需給相場に移行する可能性があります。

例えば、現在ひどい不振にあえぐ中国が復活した場合、金を大量に購入する可能性があるでしょう。

金はなぜ他の市場に先行するのか?

金はさまざまな金融商品の今後の相場を考える際の指標になる

ドル円や日経平均、ダウなどのチャートも金と同様に週間足を見てみてください。

いずれのチャートも週間足はまだ芯が残ったままの状態、つまり買い相場の状態が残ったままです。

金は最初は1時間足から崩れ、3月には完全に日足が崩れ、8月には週間足が瀬戸際に来ています。

ただし、300-350はまだまだダウントレンド入りする見込みがありません。

この状態ですと、金にはまだ買いの目が残っています。

ドル円や日経平均、ダウはまだ1時間が少し売りになった状態で、おそらく金と同様にこれから4時間や日足が売り足に変わってくるでしょう。

つまり、金の価格が1年後の世界を先行している形になっているのです。

この記事のまとめ

今回の記事では、ドル建て金価格をテクニカル分析すると、2024年までは金がいつ高値を取ってもおかしくないことがわかった。

一方のファンダメンタルズでこれを裏付けてみると、現状では【1】ドル、【2】金利、【3】GDPの3要因全てが金にネガティブであり、金を強気できるような状況にはないことがわかる。

現時点で、金価格が上昇に転じるきっかけとして考えられるのは、GDPがプラスに転じる、FRBが金利を引き下げる、前年との対比でGDPが上昇するという3要因。

最も現実的なのは、早ければ来年の4〜6月には金は底打ちになって上昇する可能性がある。

ただし注意しなければならないのは、中国を筆頭とする西側陣営からデカップリングが進行している国々の金買付け。

特に中国が現在の不振から復活し、この買付けが莫大な量に及べば、需給の観点から上昇に転じる可能性が高い!

こういう内容の記事でした。


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