凋落するビットコインと注目される金のこれから

かつては10万ドルまで上昇するなどともてはやされたビットコインが年間で50%以上の下落しています。

今回はこのビットコインの凋落について、金の価値とともに解説します。

半値、八掛け、五割引き

新型コロナ狂想曲前夜と言える2020年1月22日のマスクの販売風景

「半値、八掛け、五割引き」とは、株式市場でよく使われる格言です。

高値を打った商品は、このような価格形成をすることが多いという意味になります。

例えば、新型コロナウイルス感染拡大の当初、マスクは高いときには50枚入りで3500円もしました。

それが半額で1750円、その八掛けである0.8がけで1400円、さらに5割引きで700円になり、だいたい現在の価格になります。

また日経平均も3万6000円が史上最高値で、半値1万8000円、8掛け1万4400円、さらに5割引きですから7200円で、日経平均の最安値に近似しています。

そしてビットコインは高値が6万8000ドル、半値3万4000ドル、0.8がけは2万7200ドル、さらに5割引きだと1万3600ドル。

現在は1万9000ドルなので、まだ道半ばといったところでしょう。

参考までにドル円は360円、半値180円、0.8がけ144円、さらに5割引きが72円、円のピーク値に近似しています。

こうした事実を見れば、なぜ株式市場でこのような格言が残っているのかがわかりますよね。

ビットコインの需給と価格形成

ビットコインの製造工場のイメージイラスト

ビットコインの製造はほぼ電気で行われており、電気代の上昇はコストアップにつながります。

供給は、ビットコインは毎日のように分裂していくので、増えることになります。

ところが需要は、いくら供給が増えても猫も杓子もビットコインを欲しがった去年のブームでは、6万8000ドルという値段が示現しました。

JPモルガンのダイモンCEOが「ビットコインはネズミ講みたいなものだ」と語っているのは、言い得て妙でしょう。

親分が商品を販売し、会員がその商品を販売して、さらにその子会員が販売する、会員は子会員の取り分の数パーセントを回収することができる、ネズミ講の仕組みはまさにビットコインそのものです。

ビットコインの特徴

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-22/RIL3ZYT1UM0W01?srnd=cojp-v2

引用元:ブルームバーグ

ビットコインのシステムに採用されているブロックチェーンという技術は、かなりの先進技術です。

製造コストがほとんどかからない上に、クラウド上に記録を保管するので保管コストもありません。

しかも記録の書き換えはほぼ不可能であり、永遠に残すことができるということが画期的なのです。

JPモルガンのダイモンCEOはこの技術を評価しているので、同社では暗号資産のトレーディングデスクを持っています。

ただしビットコインは一時的に儲けさせてくれるので、トレーディング業務をやっているにすぎません。

産金コストが上昇した理由

一方、産金コストは1500ドルとも言われています。

実は20年ほど前は、800ドルくらいとも言われていました。

いくら電気代やエネルギー代が上昇したからといっても異常な値上がりです。

実際には、産金コストはほとんど変わっていないと思われます。

では、なぜコストが倍近くにまで上昇してしまったのか。

それは、ドルが下落したからです。

参照元:TRADING ECONOMICS

過去50年のドルインデックスの動きになりますが、金が一番安かった1990年代、ドルの価格は80ポイントくらいでした。

それが現在112ポイントくらいですので、約1.4倍になったことになります。

年初からは、100ポイントだったものが112ポイントですので、12%の値上がりです。

ゆえに金は年初から12%程度下落していると思われます。

年初の金は1830ドルくらい、その0.88がけは1610ドルくらいです。

現在、1643ドルとほぼ一致します。

本来「ビットコイン>金」なんて考えられない

とある金の採掘現場

よく考えてほしいのは、ビットコインの製造コストは電気代くらいなのに対し、金は鉱山から掘り出し、精錬して、消費市場に運ぶ運賃などのコストがかかりまくります。

その価格が1万9000ドルと1600ドル、重さが違うのかと思いますが、本来は金価格>ビットコイン価格とならなくてはならないのは誰でも想像がつくでしょう。

しかし、実際の価格はビットコイン>金なのです。

どちらかが高過ぎて、どちらかが安過ぎるのです。

おととし組まれたストラドル

この値段差をひっくり返すストラドルは、ビットコイン売り-金買いですよね。

下記は、ビットコイン(青線)とドル建て金価格(緑線)の1年間の比較になります。

参照元:TRADING ECONOMICS

去年の年末にかけて大きく上昇し、年初にはすでに下落が始まっています。

2020年に世界最大規模の投資信託会社・ブラックロックがビットコイン買い-金売りのストラドルを組んだので、金の価格は去年の9月から11月のまでの間、ビットコインと比較して安く抑えられていました。

ところが11月にビットコイン価格が大きく崩落したときには、金は反対に値を上げています。

この理由は、ビットコイン買い-金売りストラドルの解消でしょう。

すなわち、2021年11月からビットコイン買いのポジションは全く儲からなくなり、金売りも儲からなくなっていました。

結果的に反対のビットコイン売り-金買いになったのです。

そのポジションが解消すると、ビットコインは金と同じような価格形成、すなわち【1】ドル、【2】金利、【3】GDP(国内総生産)になっていくと考えられます。

東側陣営による金の保有拡大とビットコイン離れ

デジタル人民元アプリの画面

ところが金の場合は、ウクライナ侵攻前から米中の対立は激しくなり、バイデン政権になってからその対立は、台湾海峡に代表されるように激しさを増しています。

ウクライナ侵攻に対する制裁によってドル基軸から追放されたロシアは、ルーブル経済圏を組み立てようとしています。

中国も人民元の国際化のために、デジタル人民元まで発行しました。

人民元やルーブルの経済圏が出来上がりつつある中、この2つの通貨にドルほどの信用があるのかと問われれば、誰が見てもありません。

ですから中国やロシア、インド、トルコ、メキシコなどは、信用を補完するために金の保有量を拡大するのです。

最大の発行規模になると思われる中国は、ビットコインに代表される暗号資産の保有も流通も禁止しているのですから、東側には暗号資産が流れなくなり、自動的に金に行くことになるでしょう。

金とビットコインの今後

ビットコインが復活する可能性は当面ないものと思われる

ビットコインに2021年後半のような需要が発生するかといえば、現時点でありえません。

ビットコインの需要が高まったのは、ドルが記録的な安さになったからです。

人々は、どんどん値下がりしていくドルを売却して株式や不動産、ビットコインなどを購入しました。

つまりビットコインが上昇するためには、少なくともドルの下落が必須になります。

総括すると、ビットコインの1万9000ドルというのは「半値、八掛け、5割引き」からもファンダメンタルズからも、まだまだ買える水準にはないということです。

さらに今後は金の投資ブームが起こる可能性の方が高く、その場合、ストラドルは金買い-ビットコイン売りになるでしょう。

そうなると、ビットコインはますます売られる可能性が高いということです。

この記事のまとめ

今回の記事では、ビットコインの価格が株式市場でよく使われる格言「半値、八掛け、五割引き」のとおりになっていることを確認。

そもそも製造コストが圧倒的に高い金と安いビットコインの実際の価格が、ビットコインの方が高くなっていること自体がおかしなこと。

ブラックロック社のビットコイン買い-金売りストラドルの解消を受け、ビットコインの価格構成要因は、金同様に【1】ドル、【2】金利、【3】GDPになりつつある。

一方の金はと言えば、ドル基軸オンリーの世界経済から、人民元やルーブル経済圏が確立されようとする中、それらの通貨の信用の裏付けとして国家保有量が高まるものと考えられる。

一方のビットコインは、こうした東側陣営にとっては邪魔な存在でしかない。

つまりはビットコインはますます衰退し、金は投資ブームが起こる可能性が高いのでは?

こういう内容の記事でした。


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