第1回:合成ダイヤはダイヤモンドの価値を変える?販売サイドから見たダイヤの未来

本物と変わらない合成ダイヤが誕生するまで

地上で最も硬くそして強い輝きを持つダイヤモンド。

この輝くダイヤモンドが形成される場所は、地底の奥深く「地殻マントル」と呼ばれる場所です。

数百万年にわたる長い時間をかけて、マントル中のすさまじい高温と圧力がかかることで、あの輝くダイヤモンドは形成されます。

しかしいまやダイヤモンドが研究室のガラスケースの中で作られる時代となりました。

最新の鑑定機器を駆使しても、天然ダイヤモンドと判別されてしまうほどのハイクオリティ合成ダイヤモンドの生産が可能となっています。

 

キュービックジルコニアなど最初からダイヤモンドの類似石として合成されたものとは一線を画す最新の合成ダイヤモンド。

現在の合成ダイヤモンドはどのように進化したのでしょうか。

 

ここでまず合成ダイヤモンドの歴史をたどってみましょう。

 

世紀の発見!「ダイヤモンド=炭素」だった!

 

1796年に英国の科学者「スミソン・テナント」によってダイヤモンドが炭素の結晶であるという世紀の大発見がありました。

あの輝くダイヤモンドが、鉛筆の芯の材料である黒鉛(グラファイト)やランプの煤と同様に炭素だけで構成された物質にすぎないという事実は、当時の人々を驚かせました。

 

夢のダイヤモンド作りがスタート!

 

炭素からダイヤモンドを作るという見果てぬ夢は、錬金術に熱中した中世の人々同様、合成ダイヤモンドを作りだそうという人々の情熱をさらにかきたてました。

人々はこぞって煤や炭をダイヤモンドに変えようと躍起になり、ダイヤモンド合成の成功例もいくつか残されてものの、今日ではそのほとんどが懐疑的であると考えられています。

ついに成功人類初の宝石質の合成ダイヤ!

20世紀に入っても合成ダイヤモンドへのあくなき挑戦は続きます。

そして最初の成功という栄光を勝ち取ったのは、アメリカの発明王エジソン創業によるジェネラル・エレクトリック(以下GEと略)社です。

第二次世界大戦が終わって間もない1955年にダイヤモンドの合成方法を独自開発、そしてついに1970年には、ブリリアントカットが施せる宝石質レベルの合成ダイヤモンドを作り出すことに成功しました。

 

さらに進化する合成ダイヤモンド製造方法

1980年代には多くのメーカーが合成ダイヤモンド市場に参入してきました。

産業用ダイヤモンドだけではなく、宝石質レベルの合成ダイヤモンドの製造技術はさらに進化を遂げたことが要因です。

高圧高温によるダイヤモンド合成「HPHT」化学気相成長によるダイヤモンド合成「CVD」などの技術が生まれました。

 

すでにあなたのリングも合成ダイヤかもしれない!合成ダイヤfrom中国 

 

ジュエリーとして使用できるハイクオリティ合成ダイヤモンドが開発されて半世紀経ちましたが、まだまだ一般の人々に広く認識されているとはいえません。

無色透明、そしてカラット数の大きい合成ダイヤモンドは、まだまだコスト面から見合わないことが理由です。

とはいえ、2021年までにはダイヤモンド市場全体の1割近くを合成ダイヤモンドが占めるという予測も発表されています。

もしかしたらすでにあなたの指輪のメレダイヤモンドの一部あるいはすべてが合成ダイヤモンドという可能性もあるのです。

ここでは現在の合成ダイヤモンドの製造事情についてお伝えします。

 

アポロ・ダイヤモンド社の「CVD合成ダイヤモンド」

無色透明の宝石質のダイヤモンド合成には非常に高額なコストが必要です。

時として天然ダイヤモンドを上回ることは珍しくなく、長く産業用として合成ダイヤモンドは利用されてきました。

しかし宝石として通用するクオリティのダイヤモンドが登場してから問題は複雑となりました。

 

現在では「Scio Diamond Technology Corporation」に吸収されたアポロ・ダイヤモンド社が開発した高品質CVD合成ダイヤモンドが大きな物議をかもしたことがあります。

2004年同社が発表した「最も価値の高い無色透明クラス「タイプⅡ-a」のダイヤモンド合成をスタートする」というニュースに多くの宝飾関係者が衝撃を受けました。

さらには、「アポロ・ダイヤモンド社製のCVD合成ダイヤモンドは、従来の鑑別方法では合成ダイヤモンドと判別できない」との報道も相次ぎ、天然ダイヤモンドと区別がつかない合成ダイヤモンドが多数流入するという大きな誤解を生みました。

 

実際にはCVDダイヤモンドには合成過程で生じる特徴を備えており、識別する方法はあります

また、同社で2006年に販売された「Inventors Edition」シリーズの合成ダイアモンドにはシリアル番号(AD-IE1+7桁)がレーザー刻印されています。

 

なにより、販売ルートのしっかりした店からの購入ならば、「合成ダイヤモンドを天然ダイヤモンドとして購入してしまう」というようなリスクはまず起きえません。

しかし、「身元のはっきりしない」ダイヤモンドの場合は注意が必要です。

 

現在の合成ダイヤモンドの舞台は中国!

韓国の「イルジン・ダイヤモンド」アメリカのGE社が中心となって合成ダイヤモンド製造をリードしてきましたが、2010年代中期からは中国に舞台は移りました

1998年に上海証券交易所で上場し、現在では中国で最大規模の合成ダイヤモンド企業「河南黄河旋風股有限公司」をはじめ、多くの合成ダイヤモンド企業が生まれています。

コストの面から小さなメレダイヤの生産が中心ですが、まもなくセンターストーンに利用できるカラットの大量生産も可能になってきます。

また中国の合成ダイヤモンドは、ダイヤモンドの原石自体は中国で生産しても、研磨作業はインドなど他国に発注している事がほとんど。

インド側で天然ダイヤモンドの中に合成ダイヤモンドが混入する例が後を絶ちません。

そして往々にして「中国で作られた合成ダイヤモンド」という履歴が消費者には不鮮明である点も留意しておく必要があります。

 

 

最近の合成ダイヤ鑑定は超困難!信頼できる店を選ぶことが大切!

ここまでご紹介したように、現在の合成ダイヤモンドのクオリティは天然ダイヤモンドと全く見た目は同じ、鑑定も困難というレベルに達しています。

合成ダイヤモンドと知らずに購入してしまうことを防ぐためにはどのような点に注意すべきなのでしょうか?

 

グレーティングレポートに「天然ダイヤモンド」の記載を確認!

 

大粒で無色のダイヤモンドに関しては生産コストがまだまだかかるため、天然ダイヤモンドのほうがコストが割安という点から、センターストーンが合成ダイヤモンドである可能性は低いといえます。

しかし、小さなメレダイヤに関してはその限りではありません。

購入したダイヤモンドジュエリーにはGIAなど信頼できる機関のグレーティングレポートの有無を確かめましょう。

そして「天然ダイヤモンド」の記載を確認しておくことが重要です。

 

ダイヤモンド供給先を明記したショップ・ブランドを選ぶ!

自社ジュエリーに使用しているダイヤモンドの入手ルートについて明確にしているショップやブランドを選ぶことも良い方法です。

例えばデビアス社の「フォーエバーマーク」は天然ダイヤモンドの証明書といって過言ではありません。

また、ギンザタナカのように「鑑定機関2社に依頼し厳しい法の鑑定結果を採用」といった厳格な鑑定基準を設けている企業もおすすめです。

 

最新ダイヤモンドTIPS:ダイヤモンドの雨が降る星 

前述のとおり、ダイヤモンドは炭素という単一元素からできた宝石です。

このダイヤモンドの雨が降る!夢のような星が存在し、しかも太陽系内にあることが分かりました。

その星こそ天王星と海王星

ワシントンポスト紙によると、天王星と海王星に「ダイヤモンドレイン」が降る可能性についてここ30年以上天文学者の間で論争が続けられてきました。

炭素と水素からできたメタンに覆われた「天王星」「海王星」の総質量は、それぞれ地球の17倍と15倍。

地球の何百倍も強い気圧が海面にかかり、水素と炭素が融合が促進され、その結果としてダイヤモンドの雨が形成されるというこの仮説は、長い間実証する手立てがないままでした。

しかし、ドイツの研究者によるレーザーを使った実験(2種類のレーザー照射、さらに8500℃以上で加熱によって天王星と海王星の海上環境を再現)によって、ポリスチレン(プラスチックの1種)がダイヤモンドに変化したのです。

 

この発見をした研究者は、天王星と海王星で実際に形成されるダイヤモンドは「球形」「大きく成長を続けながら」、地殻に向かって降り注ぎダイヤモンドの層を形成していると予測しています。

 

今も天王星と海王星ではダイヤモンドの雨が降り注ぎ、ダイヤモンドの地層が厚みを増しているのです。

 

参考:https://www.washingtonpost.com/news/speaking-of-science/wp/2017/08/25/it-rains-solid-diamonds-on-uranus-and-neptune/?utm_term=.6c6db9c6d07e

 

合成ダイヤとの住み分けにより天然ダイヤの価値は変わらない! 

間違いなく今後合成ダイヤは想像以上のスピードで普及することになるでしょう。

ファストファッションに夢中なミレニアル世代以降の消費者は、本物のダイヤモンドと変わらないのに手ごろな合成ダイヤモンドに大きなメリットを感じるからです。

またこれまでジュエリーの購買層だった中高年層にも、単に高価な宝石やジュエリーを所有することよりも、ストーリー性のあるアイテムに価値を見出す消費者が増えています。

 

エンゲージリングは天然ダイヤモンド、ファッションとして楽しむには合成ダイヤモンド、それがダイヤモンドとの付き合い方の主流になるのかもしれません。

 

次回はそのような消費者動向を予測し、天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドの住み分けを模索する「デビアス社」の合成ダイヤモンドへの挑戦についてお伝えします。


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