レアアースメタル
古い人にとっては、TOCOMのパラジウム市場の買い占めによる高騰を想起させるような最近のパラジウム価格になります。
今回は、パラジウム価格が今後どのように終焉していくかを過去の事例をもとに考察します。
上記は主なレアアースの価格推移です。
2010年の尖閣諸島の問題をきっかけに、中国がレアアースを禁輸処置にしたことから価格が高騰しました。
「レア」アースと言うくらいですから、非常に希少な金属でした。
その上、中国が大量生産によって他国が採掘不能になるまで価格を下げたため、世界中でレアアース不足が起こったのです。
チャートからもおわかりのように、約10倍の価格になってしまいました。
この結果、日本を筆頭としたレアアース需要国は中国をWTOに提訴し、これに中国が敗訴したことによって価格は以前よりも安くなってしまったのです。
オイルショック
あまりにも古い話なので、覚えている方は少ないかもしれませんが、象徴的な話はトイレットペーパーが店頭から消えてしまったことです。
原因は、一部の庶民の「中東からの石油が禁輸されることによって、トイレットペーパーが品薄になっているらしい」といううさわが根源です。
これがメディアで取り上げられ、庶民が一斉に買い占めに走りました。
のちに業界関係者や商社筋に聞いたところ、トイレットペーパーは品薄ではなく余剰の在庫があったといいます。
各種の震災
東日本大震災、今夏に起こった北海道地震などでは、コンビニやスーパーから食料や防災用品などが消える事態に陥りました。
これはオイルショックと同様、庶民の先々の不安からの買い占めによって起こったことと言えます。
パラジウム価格高騰の原因
そもそもパラジウム供給のひっ迫は、東南アジアをはじめとする新興国での自動車普及に伴い、深刻な大気汚染が発生していることが原因です。
大気汚染にはガソリンを改質ガソリンにすること、ないしは自動車のマフラーに有害物質を除去するパラジウムを触媒として設置すること、この2つが有用な対策であることが証明されています。
このうちマフラーにパラジウムを設置することが技術的、コスト的に改質ガソリンよりも有効ですので、パラジウムの需要が伸びているのです。
これらを踏まえてパラジウムに起こり得ること
現在のように価格高騰が起こった際、パラジウムの場合は触媒メーカーや自動車メーカーが手当てに走ります。
庶民ですとうわさに左右されて突飛な買い占めを行いますが、メーカーの場合はどうでしょう?
例えば東日本大震災の際、福島原発の防波堤が想定よりも低かったことから災害につながりました。
現在の裁判でも、想定の高さまで防波堤を築かなかったことが争点になっています。
15m以上の津波は想定されていましたが、現場の責任者はコスト的な理由か、現実性の問題なのか、真相は藪の中になりますが、低い想定で防潮堤を建設したのです。
その結果は記すまでもありません。
パラジウムも同じで、過去最高値までは企業が想定していることは確かでしょう。
リスクの管理として常識中の常識だからです。
そこから先は誰も見たことがない世界ですので、現実性を考えるとそのコストを払いたがらないものです。
現在のパラジウム価格の状態
上記はパラジウムの月足です。
現在は新高値を超えて、東電の福島防波堤が決壊した状態と言えます。
この新値を超えた時点で、企業は買い占めに走ることが容易に想像がつきます。
企業は今後1〜2年に使うパラジウムを手当てしている最中で、世界中でパラジウムの争奪戦争が起こっていると考えるのが妥当です。
つまり、争奪戦になっている最中、これだけ割高になったパラジウムが少しでも下がれば、皆が必死に買い付けるはずです。
ですから少しでも下がったら、当然すかさず買われます。
「この状態で下がるのか?」と思う方はほとんどいらっしゃらないでしょう。
ポイントは、買い占めはまだ始まったばかりで、過去の経験則によればこれからが値段急騰のピークになるということです。
この終焉の予測
冒頭でお話ししたレアアースの場合、中国が買い占めをしていましたが、これがWTOの調停によって放出せざるを得なかったのです。
しかし、オイルショックがあった1970年代は、まだWTOはGATTの時代で紛争調停機能がありませんでした。
東日本震災や北海道地震では、明日の食べるものがないという不安感が買い占めに走らせたわけです。
それぞれの買い占めにはそれなりの理由があり、そこから考えていくのが重要になってきます。
前回と今回のパターンの相違性
パラジウムはレアアースのように、中国が犯人として国際機関に提訴すれば供給が潤沢になるかと言えば、なりません。
1997年のパラジウム買い占め事件では、今と同じく南アフリカとロシアが主な生産国でしたが、専ら供給はロシアでした。
南アはアパルトヘイトの解放があったばかりで、国内政治情勢が非常に混乱していたからです。
では、ロシアが意図的に供給を絞っていたのかと言えばそんなことはなく、製品を成田空港にせっせと運んでいました。
当然、ロシアからの飛行機が成田に到着する度に価格が急落していましたが、すぐさま買われていたのです。
つまり現在のパラジウムの状態と一緒です。
もちろん、供給を絞って利益を上げていたことは間違いありませんが、その証拠がありませんでした。
中国の場合は明らかに禁輸をして、売り渋りをしている各種証拠があったのでWTO提訴で日本を筆頭に勝ったのです。
つまりロシアは狡猾なので、少しづつ放出してできるだけ高い価格で売ろうとしていたのです。
今回も、同じような戦法でくるでしょう。
南アの場合は鉱山の老朽化と労働者の賃金上昇で、コスト的に合わない側面もありますので、供給をこれ以上増やせないのは97年と同じだと思います。
つまりこのパラジウムの価格、どこまでいくかわからないということです。
前回の終焉と今後の展望
前回はTOCOMの流動性の枯渇によって狂騒曲が終了しました。
しかも買い占める側のメーカーは、従前の製品が製造できなくなる可能性があるのですから、不安は時間の経過に従って高まってきます。
もっと言えば、値段が上昇する度に不安は高まることでしょう。
つまり、供給不安が解消するまで価格は上昇します。
このヒント
日常生活に関係のないレアアースの問題を私たちがなぜ知っているかと言えば、メディアが大々的に報じたからです。
つまり、「パラジウムが大暴騰している」という話題がトップ記事やニュースになれば、全世界で犯人探しが始まります。
買い占めをしているメーカーではなく、買い占め屋や投機筋を見つけ出す機運が盛り上がります。
これらの人たちはそれまでに儲けているので、報道が出始めると徐々にわからないように放出し始めるのです。
なぜなら、買い占めが露見すると一斉にメディアから集中砲火を浴びて、意図しない値段で放出しなければいけなくなるからです。
つまりメディアの犯人探しが始まる前に、有利な価格でおそらくすべて放出するでしょう。
そして、価格のピークを迎える前にはすべて放出し終えているのが通常です。
ですから、パラジウム高騰劇の終了は新聞などで一面でパラジウム価格が報じられたときには、もう終わりが近いことを意味します。
終焉のタイミング
おそらく価格が7000〜8000円になったときに、そのような報道が出るでしょう。
現在4000円程度ですので、まだまだメーカーが不安感から買い占めを行っている最中だというのが、私の経験即で思うことです。
本音を言えば、ここからが一番カタイところでしょう。
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