フィリピンのドゥテルテ大統領は本当に殺人鬼なのか?

フィリピンの麻薬に対する意識

アメリカのトランプ大統領に先駆けて誕生したフィリピンのドゥテルテ政権は、麻薬犯罪者は逮捕、裁判にかけることなく殺害するなど、およそ民主国家にはあり得ない政策を発表し、実際にそれを実行しています。

「第二のトランプ」と言われるドゥテルテ大統領、今回はその背景を探ってまいりましょう。

イギリスと清の間で行われたアヘン戦争

フィリピンはスペインの植民地として近代史がスタートし、その後、アメリカから日本、再びアメリカへと宗主国が変わりました。

結果として、日本とアメリカには大変理解があります。

一方で中国に対しては、近代以前から移民の流入が始まっており、ほかの東南アジア諸国同様、華僑と呼ばれる中国人が多数います。

中国はご存知の通り、イギリスとのアヘン戦争で国体をボロボロにされた経緯があり、鄧小平の改革開放政策と同時に麻薬撲滅対策も行われました。

国内では麻薬に関わる犯罪すべてに重罪が課されられ、中国で麻薬ビジネスに手を染めることは、リスクとリターンを勘案すると、全くメリットがないことになります。

ところがフィリピンは、アメリカ、日本が宗主国であったことから、麻薬に対するアレルギーの少ない国でした。

もちろん、日米双方にも麻薬犯罪に関しては厳罰を課しますが、中国のように麻薬によって国体をボロボロにされたことがないので、相対的には軽いと言えるでしょう。

日米中比の麻薬の罪の度合い

中国では麻薬犯罪は終身刑か死刑が必至

フィリピンの歴史を見返した場合、麻薬によって国体が乱れた経験が一切ないことから、麻薬関連ビジネスに手を染めたとしても、その罪は中国はもちろん日米と比較しても非常に軽微になります。

もちろん、日本でも麻薬関連の犯罪で芸能人がよく逮捕されるように、重罪であり、やってはいけないことになりますが、中国に比べれば罪は軽いです。

日本の芸能人は麻薬犯罪を行っても数年経てば復帰できますが、中国では間違いなく終身刑か死刑となるでしょう。

アメリカでも、メキシコなどの中南米からの麻薬の輸出によって一時期、相当な問題となりました。

アメリカの麻薬と国境の壁

トランプ大統領の主張する国境の壁も、麻薬との関連を考えると全く理がないとは言えない

トランプ政権誕生前後に40代白人男性の死亡率が急上昇しましたが、これは麻薬との関連が濃厚になります。

すなわち麻薬の常習によって、死亡率が拡大したのです。

トランプ大統領の主張するメキシコとの国境の壁の建設は、荒唐無稽な政策ではなく、麻薬関連犯罪やビジネスの撲滅を考えると、一定数の支持があるのは当然になります。

ただし、現在では麻薬は海上からの流入が80%以上で、国境警備の厳格化で国境からの輸入が減っている事実からすれば、疑問符がつきます。

中国の歴史的事実や、日本やアメリカでも麻薬が社会にはびこることによって国体が維持できないようなことになる可能性がありますので、撲滅は喫緊の課題となるのです。

背後に見えるチャイナマフィアの影

フィリピンで麻薬が蔓延した背景にある中国人マフィアの暗躍

ドゥテルテ大統領はなぜ、フィリピンにラジカルな政策を導入したのでしょうか。

世界標準に比べて麻薬犯罪に対してのペナルティーが低い、つまり麻薬関連の犯罪で逮捕されても、その罪は日米中と比較して非常に軽微となること、そして覚せい剤の主原料であるケシの花に適した気候であることが、フィリピンが麻薬天国になった理由と思われます。

そこに、中国人マフィアが目をつけました。

中国国内では摘発が厳しく、死刑や終身刑になるようであれば、リスクを冒してまで麻薬ビジネスを行う必要性はありませんが、フィリピンに拠点を持ち中国に逆輸出すれば、非常に大きな儲けになります。

つまり中国人マフィアは、フィリピンを麻薬の製造・輸出の拠点として利用したのです。

この結果、麻薬によって中国がアヘン戦争でズタズタになった歴史を勘案すれば、ドゥテルテ大統領が国際的な非難を無視してまでも、麻薬に関わる者は逮捕、拘束することなく殺害するというのは、それなりに合理性があるのです。

フィリピン司法の実態

賄賂で司法が機能していない状況ではドゥテルテ大統領の超法規的措置も理がないとは言えない

ドゥテルテ就任前のフィリピンの司法は、実は中国人マフィアによってズタズタにされていました。

例えば逮捕されて法廷で裁判を受けているとき、中国人マフィアは証拠がすべて揃っていても、無罪を主張し、その上に保釈を申請するという太々しさだったのです。

さらには、すべて真っ黒な証拠が提出されているのにもかかわらず、審理が終了したり、無罪放免になっていました。

これは、フィリピンの司法関係者のほとんどが中国人マフィアからの賄賂などによって買収されていたからです。

中国人マフィアは、フィリピン国内で麻薬関連ビジネスを行い逮捕、拘束されてもほぼ無罪のようなものですから、やりたい放題にやっていたという現実があります。

中国人マフィアの息がかかった麻薬犯罪者は、逮捕など怖くもなく、自由に麻薬ビジネスを行っていたのです。

国家の司法が完全に機能していない状態で、麻薬が蔓延し放題という現実を見れば、決してドゥテルテ大統領のやっていることは無法者のやることではなく、合理的な判断でもあると評価することができるでしょう。

しかし、その方法論になると、国際的な批判を浴びても仕方がないと思います。

ドゥテルテ大統領の本音

麻薬撲滅は喫緊の課題だということを強く意識し、実行に移しているドゥテルテ大統領を「殺人鬼」と呼べるか!?

国内に麻薬がはびこった結果、中国の清が滅びてしまった事実を見れば、蔓延は絶対に止めなければいけないことだとわかるでしょう。

事実、アメリカも中米のプエルトルコなどと苛烈な麻薬戦争を行っており、それくらい麻薬の蔓延は、国家にとっての脅威となります。

とても司法、警察関係者を全員粛正して、新しい制度を作る時間がないというのがドゥテルテ大統領の本音でしょう。

国際法的には問題がありますが、フィリピンの経済が不安定になり、その結果、世界にその不安定さをもたらすこととなれば、世界の苦しみとなります。

また為政者としては、治安の維持が自身のクビを守る結果となります。

どこの国でもそうですが、暴動やデモが拡大すれば、その暴発が国家の解体を迫るということは過去の革命や戦争を見ればわかるでしょう。

国家の不安定は世界の不安定

麻薬はその身のみならず国家をも滅ぼす

麻薬は一瞬の快楽をもたらしますが、体をボロボロにするという教育は皆さんも受けたはずです。

その麻薬に国民の10%も汚染されれば、働き手がいなくなり国は没落、経済もズタズタになります。

ドゥテルテ大統領は殺人者、日本はフィリピンに援助すべきではないという声をよく聴きますが、それは一面では正しく、一面では間違っているということです。

人道的に間違っていますが、長期的には、非常に残酷な言い方ですが、正しいことだと思います。

国家の不安定は、世界の不安定です。


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