G20大阪についての解説

G20声明文

6月28日から大阪でG20サミットが開催されました。

今回はその解説を行います。

G20 2019 JAPAN

https://g20.org/jp/documents/

引用元:内閣府

上記の声明文は、毎年サミットで採択されるものです。

この声明文に書かれている内容に参加各国は同意したという意味になります。

すなわち、ここで約束されたことは履行されなければなりません。

ただし、この声明文はサミットが開催される前に草案ができており、事前の報道から内容が漏れます。

大阪での本会議は一種のセレモニーであり、ただの歓談の場となるのが恒例行事です。

大阪サミットの勝者

大阪サミット終了後、ツイッターで「パーフェクト!」と上機嫌だったトランプ大統領

今年はお騒がせのトランプ大統領がトップ交渉と言い、会議当日に行われる米中首脳会談に注目が集まっていました。

その詳細は後述します。

このような交渉は異例であり、通常のG7、G20は、当日は単なるセレモニーになります。

本来は、各地方都市で行われていた事務方の交渉によって、その合意文書にサインするだけです。

サインをするということは、欧米の認識では約束という意味になります。

もちろん、中国や韓国はサインをしても都合が悪くなると破棄しますが、このサミットはサインをしたら履行義務があると考えてよいでしょう。

そういった意味で声明文を読んでいくと、今回はアメリカの完勝に終わったなという印象になります。

金に関係のある合意内容

現在、金は高値圏内での取引に終始していますが、これに関する合意がありました。

4.世界経済の成長は,足元で安定化の兆しを示しており,総じて,本年後半 及び2020年に向けて,緩やかに上向く見通しである。

https://g20.org/pdf/documents/jp/FINAL_G20_Osaka_Leaders_Declaration.pdf

引用元:G20 大阪首相宣言(内閣府)

共同声明文の第4項の「世界経済」の見通しについて、上記のようにG20は予測しています。

これは、弊社の予測とほぼ一致しており、年後半には景気が回復する見込みです。

景気回復について

景気回復については、以前も説明しました。

アメリカ経済の変調を日常のニュースから考える

今回は簡単にお話しすると、現在の景気低迷の原因は、貿易摩擦なんかではありません。

この辺を喝破する識者は、ウェブの世界にはまずいないことに留意ください。

現在の景気低迷は、去年の時点でわかっていたことであり、去年の年初からスタートしたアメリカの減税政策で可処分所得が増えたことによって、景気がよくなり過ぎたことが原因です。

良くなり過ぎた反動で現在、景気が悪くなっているように見えています。

マーケットは去年との比較で動きますので、去年よりも悪くなっているのに株価が上昇しているのをバブルと言っているだけです。

金も同様で、世界経済は去年同様拡大しているのですが、去年と比較すると、それほど成長していないという部分だけをフォーカスして、「悪い、悪い」と騒いでいるだけになります。

全体としては通常のペースで、アメリカも日本も、そして世界も成長しています。

ですから景気は悪くなんかありません。

去年と比較すれば悪いけど、今年は平年ペースの成長に戻っただけなのに、「悪い」というワードに凝縮しすぎなのです。

金の下落は7月、景気回復は10月以降

世界的な景気回復は秋以降に待っている!?

アメリカは去年の9月末まで劇的な成長を遂げましたので、9月までは「景気が悪い」という報道が続くでしょうが、10月以降は「過去最大の景気浮揚」などと騒ぐでしょう。

金の価格は景気が悪いと上昇する側面があり、結果として、この高値圏は「もうすぐ天井を形成するよ」という弊社の主張と合致します。

ただし弊社が「7月に金は高値を迎えるよ」と言っているのに対して、G20は秋以降に景気が回復すると言っているのが相違点でしょう。

この違いは弊社が金について言っているのに対し、G20は世界経済について言っているからとなります。

米中首脳会談

大阪サミットで最も注目されたと言えるトランプ大統領と習近平国家主席のトップ会談

サミット期間中に開催されたアメリカと中国の首脳会談にて、中国への追加関税の延期が決定しました。

この報道を小耳にはさんだとき、米中雪解けを匂わせるような報道なのでびっくりしましたが、たんに4〜5月の状態に戻っただけです。

制裁関税は継続して追加はやらないという話で、ファーウェイ(華為)の問題は完全に棚上げです。

ファーウェイ問題

ファーウェイ、ZTEの問題は、今回の声明文11に集約されています。

1.データ,情報,アイデア及び知識の越境流通は,生産性の向上,イノベー ションの増大及びより良い持続的開発をもたらす一方で,プライバシー,データ 保護,知的財産権及びセキュリティに関する課題を提起する。

これらの課題に引き続き対処することにより,我々は,データの自由な流通を更に促進し,消費者及びビジネスの信頼を強化することができる。

この点において,国内的及び国際 的な法的枠組みの双方が尊重されるべきことが必要である。

このようなデータフリーフローウィズトラスト(信頼性のある自由なデータ流通)は,デジタル経済の機会を活かすものである。

我々は,異なる枠組みの相互運用性を促進する ために協力し,開発に果たすデータの役割を確認する。

我々はまた,貿易とデジタル経済の接点の重要性を再確認し,電子商取引に関する共同宣言イニシアティブの下で進行中の議論に留意し,WTOにおける電子商取引に関する作業計画の重要性を再確認する。

文章で説明すると分かりづらいので、図式で表現します。

アメリカ   データの自由な流通
  ×
中  国   データの共産党管理(ファーウェイ)

という話です。

ファーウェイ問題の解説

ファーウェイのスマホにはデータ収集能力があり、管理しているのは中国共産党

ファーウェイ問題を説明していきましょう。

まず、中国や韓国国内でキャッシュレスが普及していることは、以前に説明した通りです。

要はスマホ決済なのですが、そのスマホにデータ収集能力があり、問題はそのデータ収集を本人の同意なく行っている点です。

これは知的所有権の侵害と言われており、国際社会で問題提起されているのです。

日本やアメリカなどの西側諸国では、このデータの収集を、そのアプリをダウンロードする際の同意文書に小さな文字で必ず書かれています。

そして同意すると、前のウェブページの検索結果から興味のありそうな広告が次回から表示されるという仕組みです。

中国では、そのデータ搾取が同意なしに行われ、しかもデータは共産党管理になっていることが問題視されているのです。

国際的な企業になったファーウェイは、アメリカ政府やそのほか西側諸国にも進出し、政府や政府系企業のコンピュターにも採用され、国家の機密情報が中国に盗用されていることがアメリカの怒りの根本です。

だからファーウェイは阻害されたわけです。

アンフェアなファーウェイとGAFAの関係

グーグル傘下のユーチューブも中国では視聴不可。にたような优酷(ヨウク)というサイトがある。ほかにフェイスブックなども閲覧不可だ

ファーウェイの会長が「中国向けにはそのデータ転送技術は搭載したまま販売をするが、世界向けには販売しない」と約束したのですが、アメリカは「信用できない」と言い、その履行を確認してから今回のファーウェイの一部制裁解除になりました。

ただし、中国共産党によるデータ一括管理はいまだに続いていますので、まだまだファーウェイへの制裁は続くとトランプ大統領は言っています。

問題は、アメリカのグーグルやアップルなどのGAFAは、中国ではデータの入手ができない、それではアンフェアだと言っているのです。

現実にグーグルやフェイスブック、アマゾンなどは中国への進出は断念しているのに、中国はアメリカに自由に進出している…。

これは誰が見てもおかしいじゃないか、と思えます。

知的所有権を侵害せざるを得ない中国の事情

ネットもリアルも中国は監視社会

中国各地には、共産党体制の打倒集団が点在しており、安全保障の観点からデータ管理を止められない状況にあります。

ネットによって不審人物の管理ができるので、グローバルスタンダートの仲間入りをしたい気持ちは必ずあるとは思いますが、国家の安全保障の観点からは自由なデータのやり取りは容認できるわけがないのです。

つまり知的所有権は、永遠に解決しない問題です。

今回の制裁解除によって安堵の声を聴きますが、とんでもない、事態はより悪化したと見るべきです。

中国がデータの解放などを行うわけがなく、結果として韓国と中国はデータ戦争に対して国際社会から疎外されることになるでしょう。

米中貿易戦争は進展したか?

貿易と投資
8.我々は,G20 茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合閣僚声明を歓迎する。

我々は,自由,公平,無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易及び 投資環境を実現し,我々の市場を開放的に保つよう努力する。

国際的な貿易及び投資は,成長,生産性,イノベーション,雇用創出及び開発の重要な牽引力である。

我々は,世界貿易機関(WTO)の機能を改善するため,必要な WTO改革への支持を再確認する。

我々は,第12回 WTO閣僚会議までの間も含め,他のWTO加盟国と建設的に取り組む。

我々は,WTO加盟国によって交渉されたル ールに整合的な紛争解決制度の機能に関して,行動が必要であることに合意する。

さらに,我々は,WTO 協定と整合的な二国間及び地域の自由貿易協定の補完的役割を認識する。

我々は,ビジネスを可能とする環境を醸成するため,公平な競争条件を確保するよう取り組む。

過剰生産能力
9.我々は,鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラム(GFSEC) がこれまで成した進展に留意しつつ,GFSEC の加盟国の関係大臣に対し,2019 年の秋までに,フォーラムの作業を進展させる方法について,探究し,コンセンサスに至るよう求める。

米中の貿易摩擦は5月の下旬以降、閣僚級、事務方レベルでの交渉も中断していましたが、今回の合意内容は、その事務方、閣僚級レベル交渉の再交渉を行うという話で、最高レベルの関税をかける話がなくなった以前に戻っただけです。

決裂したのを「また交渉しましょう」と言っているだけであり、ちっとも進展がありません。

中国の鉄鋼問題

中国にある鉄鋼工場内

今回の貿易問題は「3.過剰生産能力」の項目であり、主に鉄鋼の問題です。

中国では主に国営企業が鉄鋼の生産を行っており、競争が激しいために過剰生産になってしまいました。

その結果、中国の価格競争力が国際社会で優位に立ち、各国から非難が始まったのです。

これはトランプ時代に始まったのではなく、オバマ時代から始まっています。

中国は国際社会の非難に対して、鉄鋼会社の規模別制限を始めました。

中小、零細の鉄鋼会社が廃業に追い込まれると読んでいたのですが、現実に起こったことは、中小、零細の鉄鋼会社が一斉に合併したことによって、この規制逃れを行うことが当然になったのです。

その結果、中国の鉄鋼、粗鋼生産はまずます拡大し、中国の価格競争力がさらに増しました。

世界的デフレの元凶

操業が停止となった韓国全羅南道光陽市のポスコ製鉄所

現在、韓国の鉄鋼メーカーであるポスコが、住民訴訟によって高炉の操業停止を裁判所から命じられている状態です。

この状態はさらなる中国の寡占状況、そして韓国の没落を意味します。

この全世界的な安売り競争によって、世界経済がデフレに陥っているのです。

この鉄鋼を筆頭とする中国は、価格競争力によって貿易を拡大させることが今後はますます厳しくなると思われます。

パソコンや鉄鋼、太陽光パネルなど、価格競争力を背景とする中国製品の輸出には、今後大きくブレーキをかけられることは必至なのに、中国安泰論が喧伝されるのは本当に不思議です。

まとめ

せっかく日本で開催されたG20。ただのお祭り騒ぎで国民の記憶からさってしまうのはもったいない

今回は、サミットで皆さんが興味を持つことを解説したつもりですが、報道とは全く違った印象をお持ちになったと思います。

いかに、世の中に出ている報道がデタラメであるかを認識していただけたら幸いです。

北朝鮮に関しては、次回説明していきたいと思います。

せっかく日本で開催されたサミットですので、難しいでしょうが声明文を全文読むのにチャレンジするのもよいのではないでしょうか。


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