アメリカの環境保護運動

ヨーロッパの環境運動の背景

先日、日本がIWC(国際捕鯨委員会)を脱退し捕鯨を再開するという報道がなされ、実際に捕鯨を再開しました。

前回はヨーロッパの環境運動を取り上げましたが、今回はアメリカの環境保護運動を考えていきます。

日本とヨーロッパ、アメリカの環境に対する違いを認識し、トランプ大統領はなぜ二酸化炭素排出に否定的な考えを示すかまでを考察します。

ヨーロッパの環境運動の背景には、産業革命により工場が乱立したことがあると以前に解説しました。

環境問題と投資、そして金

大量生産には、蒸気機関に代表されるようにベルトコンベアなどの動力源が必要になります。

今では電気が主流ですが、産業革命が勃興した18世紀のエネルギー源は薪だったのです。

結果、ヨーロッパの森林は破壊しつくされ、国土の70%の森林を失いました。

これによって土砂災害などが頻発し、自然保護運動が盛り上がったことがヨーロッパの環境保護運動の背景になります。

森林破壊とマツタケ

秋の風物詩、マツタケ

アメリカや日本でも、産業革命によって森林破壊が進行したことは事実ですが、自然保護運動への経緯は異なります。

例えば、秋の味覚の代表格であるマツタケは森林破壊の賜物であって、森林破壊が進行しなければマツタケが庶民に広く行き渡ることはありません。

国内でマツタケが取れなくなったのは、自然保護運動が進化した結果です。

現在は北朝鮮産のマツタケや中国産などが幅を利かせていますが、北朝鮮や中国産でも環境保護運動が高まればなくなることでしょう。

実はマツタケは、環境破壊によって生まれたキノコだったというと意外に思われる方も多いと思います。

マツタケの値段は上がることはあっても下がることはそうそうないことなのです。

アメリカの環境保護運動の起源

西部開拓時代を模した街

18世紀にイギリスで産業革命が勃興し、ドイツ、フランスに流れていきました。

イギリスの植民地であったアメリカでも、税収不足から産業革命が起こります。

つまり、独立当初の森林地帯を破壊しつくしたのです。

その結果、環境保護運動が起こったと考えがちですが、きっかけはそうではありません。

実は、フロンティア精神で西部開拓によって環境を破壊しつくしたことが起源になります。

ペリー一行と開拓者精神

現在の夜の日本橋

江戸時代末期に黒船来航のペリー当時の様子が文献に残っていますので紹介しましょう。

江戸はかなりの大都市であったのに、随所に森があり、日中でも日本橋の近くでフクロウの鳴き声が聞こえたという。

フクロウに限らず様々な野鳥や小動物が繁殖していたのである。

来航したペリー艦隊の乗組員は船に飛来する野鳥の多さに驚いた。

人間を恐れず、無数の鳥やマストに甲板にやってくる。

これなら簡単だとばかり乗組員たちは鉄砲で打ち始める。

それをみていた日本人は「なんて野蛮な人間どもだ」とあきれて、日米和親条約の付則第十条に「アメリカ人は野鳥をはじめ生き物を無闇に殺さぬこと」という条項が付け加えられた。

ペリーが来航した江戸時代末期の日本は、自然あふれる国であったことがよくわかるエピソードです。

ペリーを含め乗組員である当時のアメリカ人は、野生の動物を見るとすべて殺すというメンタリティーであったと想像がつきます。

西部開拓スピリッツに基づき西進していたとき、自然にある動植物を破壊しつくしていたことは想像に難くありません。

黒人に対する差別が残るワケ

銃はアメリカ人のアイデンティーと言えるが…

動植物に限らず、原住民であるインディアンを蹂躙し殺害していたことは、アメリカの歴史では多く語られていることです。

アメリカ人のアイデンティティーに、自分たちは開拓者、探検家で、未知の土地をたどるのであるから、身を守るために自分に危害を及ぼすものはすべて破壊、蹂躙してしまえという精神が宿っているということです。

わかりやすく言えば、地球を征服し、自分たちは世界で一番偉いという発想です。

ですから黒人に対して、制度が撤廃された現在でも差別が残るわけです。

また、銃はフロンティア精神の象徴になりますので、いくら規制しようとしても乱射による事件は減らないということになります。

銃は、よく言えばアメリカ人のアイデンティティーになりますが、悪く言えばアメリカ人の傲慢性や人を見下した姿勢、白人は優秀だけどそれ以外は劣等民族という意識にほかならないと言えます。

そうやって西進した結果、あらゆる環境を破壊しつくし、結果として大きな災害に悩まされたことが自然保護運動の高まりになっているのです。

国立公園に見るアメリカ人の打算

ヨセミテ国立公園

アメリカの自然保護運動は、世界にさきがけて国立公園を設立したことに代表されます。

例えばヨセミテ国立公園は、その美しさにはほれぼれします。

ただ、よく注意して見てほしいのですが、自然環境保護運動に携わる人間も観光客も、ほとんどが白人です。

わずかに日本人や中国人などの観光客をたまに見かける程度であり、黒人やヒスパニック系の人と出くわすことはあまりありません。

最近では、国立公園の自然保護プログラムを行う人(レンジャー)にもヒスパニックや黒人などを見かけるようになりましたが、そもそもアメリカの環境保護運動は白人中心の運動になります。

ヒスパニックや黒人がその仲間に入ってきた背景には、自然保護運動を全世界で展開するためには、黒人やヒスパニック、アジアなどを排除するのは都合が悪い、自然保護を使って利益を得るためには、差別があるのは都合が悪いという打算が働いていることも忘れてはいけません。

自然保護運動とお金

グリーンピースもお金のため!?

世界で活躍するグリーンピースという団体がありますが、これは日本でもよく抗議活動を行っています。

この人たちは、アメリカやフランスの核実験を停止させるために運動を立ち上げたのですが、最近では、活躍の場をさまざまな自然保護運動に広げています。

これだけ世界的な運動にするのには、運動費も尋常ではない金額が必要になりますので、各地でさまざまな抗議活動を行うことによってお金を集金しているという側面もあります。

これは、最近話題になっているヨーロッパで広がるムスリムの排斥運動にも関連します。

一方でムスリムや移民の排斥を叫びながら、進歩主義によって性的マイノリティーの差別をなくすことを要求します。

「人は平等だ」と言いながら、その平等を使い別けていると非難されても仕方のないことです。

これは自然保護運動と同様に、活動には資金が必要なのです。

その寄付金の多寡によって主張をしているだけの話で、なんだか見っともないことをやりやがってと思うのが普通です。

ただ、実際にこういった活動を行うには資金は必要なものであり、ある程度の理解はできますが、言っていることがちっともロジカルに感じないのはそのためです。

自然環境保護の問題点

夜行性で警戒心が非常に強いことで知られるフクロウ

上記のように、アメリカもヨーロッパも結局は自分たちで自然環境を破壊しつくしたことが環境運動の盛り上がりの原点になっています。

自分たちの自然破壊への後悔から保護を訴えるというのはとても崇高な理念のように見えますが、日本の自然保護とは一線を画すのです。

日本では、江戸時代末期に日本橋にフクロウがいたというのは信じられない話です。

なぜなら、フクロウは非常に警戒心の強い動物で、滅多なことでは人前に姿を現さないからです。

もちろん、綱吉の時代に生類憐みの令が発布されたことによって、日本では自然、動物と人間が共生した環境があったことは推察されます。

ですから、日本では欧米のように森林破壊は進行しませんでしたから、比較的に自然は豊かに残っています。

日本でも産業革命の進行によって多少の森林破壊は進みましたが、現在も国土の70%が森林という自然豊かな国です。

欧米と同じ行動をするのは話に無理があり、欧米のエキサイティングな自然保護活動に日本人が違和感を覚えるのは当たり前です。

日本と欧米の自然保護運動の違い

巨大自然環境保護団体であるWWF

日本と欧米の大きな違いは、自然環境保護団体の組織力です。

日本の環境自然団体は、日本野鳥の会という団体が現在会員数2万人前後で最大ですが、欧米は10、20万レベルは当たり前、400〜500万人で巨大な組織と見なされる傾向があります。

ただ、それだけ巨大な組織になってしまうと、活動費が莫大になり、寄付を受けるためにエキサイティングな広報活動が必要になってくるのが、たまに日本に現れる過激な活動家さんたちです。

自分たちの主張をアピールしているのか、単なる資金集めなのかわからないから困惑させられます。

弊社の意見を言えば、エキサイティングな活動はいらないから、もっと自然に地道にやってほしいと思います。

もちろん、自然環境を保護する活動には全面的に賛成です。

トランプは地球温暖化に否定的

エクソンモービルの元CEOでトランプ政権で国務長官を務めたティラーソン

トランプ大統領は、就任直後から地球温暖化防止策のパリ協定への加盟を拒否しています。

これは共和党の伝統的な考え方であり、前回のブッシュにしても、パパブッシュ、レーガンの時代も踏襲されています。

共和党の資金源が石油関連にあることが背景で、石油を燃やして二酸化炭素が発生すると石油業界からの資金が望めないということが背景にあると想像することは難くないでしょう。

トランプ政権の最初の国務長官にティラーソンが就任しましたが、彼はエクソンモービルというアメリカの石油会社の元CEOになります。

つまり就任当初からトランプ大統領は石油業界の意向をよく聞くと内外に示しているのと一緒です。

最近のイラン問題にしても結局、石油絡みの問題であり、パリ協定に同意すればアメリカの石油会社は大きく活動を制限されるでしょう。

自然保護と経済は不可分だが…

今やるか将来に回すか…。何もしなければゴミは減らない

このように欧米の環境活動というものは、ゼニカネの問題と本来の自然環境の問題を天秤に掛けている節があり、結局は経済効果に軍配が上がるのがいつものことです。

自然保護活動は、皆が必要であると思っていでしょう。

しかし、その方法論が経済と不可分ということから、欧米の活動に違和感を覚えるということをロジカルに考えたほうが良いと思います。

例えばゴミの有料化にしても、自然環境保護にはお金がかかるのです。

今、コストを払って将来を保証するか、ゴミを無償化して将来そのツケを払うかは個人個人で考え方は違うでしょうが、その対価は今支払ったほうが安く済むのは当然とも言えます。