世界の紛争問題
今回は、10〜12月期にマーケットがどのように動くのかの話をしていきます。
主にファンダメンタルズを中心とした解説です。
今年の前半から中盤にかけて大きな紛争がありました。
これらの問題がどう解決していくか説明します。
北朝鮮問題
今年2月にベトナムのハノイで米朝首脳会談が行われました。
そこでのサプライズは、会談が物別れに終わったことです。
原因は、北朝鮮の主張が「国体を護持するためには核開発は必要」、対するアメリカの主張は「核開発をやめよ」ということです。
ここに妥協点はなく、その結果、物別れに終わりました。
最近になって北朝鮮がミサイルをたびたび発射していますが、その意図は、核開発は中止するけれど、ミサイルの発射は双方に合意していない。
つまり、核開発をやめるポーズをしておけば、アメリカはけん制しないということになります。
北朝鮮問題の展望
実際にトランプ大統領は金委員長を「紳士的な男だ」と持ち上げており、ミサイル発射をけん制したり、非難することもありません。
ハノイ会談は物別れに終わりましたが、双方、核制裁に関する合意はできていると見るのが妥当であり、これ以上、米朝関係が悪化することはなく、年末に向けて暴発することはないと見るのが妥当な判断だと思います。
ただし、米韓軍事演習など、北朝鮮を脅かすようなことがあれば、いくらでも暴発するということです。
来年については、オバマ政権末期に北朝鮮が暴発したように、もしもトランプ大統領が再選されずに新大統領となった場合、おそらくまた挑発的な行動に出てくるでしょう。
そのほか、過去にアメリカの経済指標が良いときに北朝鮮は暴発しています。
この辺が注意が必要でしょう。
韓国問題
韓国の問題は、根本的には従軍慰安婦の基金が韓国政府に解散させられたことに端を発しています。
韓国政府の対応は、前政権の朴槿恵政権が大規模なデモによって倒閣されたことに恐怖を抱いており、その中には従軍慰安婦問題も存在します。
極端に親日的な政策を取ると逮捕されるという意識が政治家と官僚の中にあり、実際に最高裁判所長官、複数の国会議員、官僚などが逮捕されました。
この結果、現在の政権は極端に日本との会談を控えるようになっています。
もし、市民に日本の首脳と仲良く歓談している様子を見せれば、自分も逮捕される可能性があるという認識から、従軍慰安婦基金を解散した後からそれが強く残り、実際に政治家レベルはもとより、官僚の事務方レベルから協議が途絶えたことが発端です。
去年12月の自衛隊機へのレーザー照射問題も、本来なら事務方の協議によって解決するはずだったのですが、そうした協議も韓国側の政治家、官僚が市民の抗議を恐れて行わなかったため、現在の状況に至っているのです。
韓国問題の展望
アメリカの圧力により、夏からこの事務方の協議も再開されており、これ以上、日本における韓国問題は悪化しないと思われます。
問題なのは韓国の法相スキャンダルで、一部には擁護する意見も韓国国内にはあるようですが、これは進歩派の人間が支持しているだけの話であって、保守派からは厳しい意見が相次いでいます。
もし、今後も法相にスキャンダルが発生するようであれば、問題が韓国全土にわたる可能性を秘めています。
現政権はまだレームダック化していないから大丈夫という意見もありますが、韓国は貿易不振によって食えなくなっている人が非常に多く、その不満がどこに向くのかわからないような情勢です。
日韓問題は解決に向かっていると思いますが、韓国国内が相当に不安定になっているので予断を許しません。
イラン問題
核開発疑惑は北朝鮮と同様に存在をします。
イランは、何度も言うように建国の精神がイスラエルのせん滅にあります。
ここはアメリカと相容れないところです。
イラン政府とその最高指導者とは別機関であることから、イランはサウジアラビア攻撃やタンカー攻撃には関わっていないと言明しています。
しかし、それは詭弁であり、イラン政府は確かに関わっていないでしょうが、最高指導者のほうは関わっている可能性は濃厚です。
欧米は、この最高指導者もイランだという認識で、可能性が高いと言明しているのです。
イラン政府が関わっていないのは決してウソではないのですが、外から見れば政府も最高指導者も一緒なだけの話です。
イラン問題の展望
先週、ここに動きがあり、特に攻撃されたサウジ側に宥和的な動きがあります。
皇太子であるMBSがトルコのカショギ氏殺害事件に関して「責任は私にある」と言明し、またイエメンの内戦への介入も停戦に合意しました。
おそらく、イスラエル情勢が落ち着いたことにより、イランと敵対的な行動を取っていても仕方がないという思惑があると思われます。
ところが、最高指導者のハメネイ師はG7の共同声明に対して「ヨーロッパは信用ができない」と言明しています。
これは宣戦布告と言うと言い過ぎですが、テロ攻撃の対象だと言っているのです。
イランの立場は、欧米が制裁を解除しなければウラン濃縮活動を強化し、協議にも応じないという姿勢は鮮明です。
ここに妥協点などはありませんが、サウジの動きを見ていると欧米側の動きに軟化が観察されています。
根本的には絶対解決しないでしょうが、年末に向けて、沈静化の動きになると思います。
香港問題
中国政府が武力介入に乗り出すと世間は騒いでいますが、現時点でありえません。
デモ隊側は国境条例を廃案にするという要求が行政府に受け入られ、事実、廃案になりましたが、その後も民主化を求めてデモが続いています。
中国は体面を気にする国家であり、「香港返還から50年間は一国二国制度を認める」と全世界に公表したことを守るでしょう。
裏を返せば、50年後には中国に編入するよと言っているのです。
デモ隊の要求は飲むことができませんので、デモは今年も続き、来年も続くでしょう。
つまり、どうにもならないことです。
中国政府のデッドラインは、これが本土や台湾に飛び火することであり、その場合は躊躇なく武力介入になるでしょう。
世界の恐怖は、北朝鮮などの独裁国家に、ジャスミン革命のように飛び火することです。
世界で起こるポピュリズム
現在の世界は中間層が消え、ポピュリズムが起こっています。
これは世界の懸念で、この年末には可能性は少ないですが、経済情勢によってはさらに活発になるでしょう。
特にドイツなど経済が下向きになっている国では、より一層その活動が活発になり、極端なポピュリズムの発展につながる可能性があります。
そのほか、ベルギーなども可能性があります。
トランプの弾劾問題
これは民主党のペロシがこぶしを上げていますが、今年のうちは大問題になりません。
そして、来年も問題になりません。
問題は、大統領が新任か再選になるかで決まってきます。
つまり、再選の場合は上下院とも民主党になっている可能性が高く、弾劾が成立します。
そのことを読んで、ペロシが今回のこのような行動をとっているのであれば称賛に価しますが、民主党の若手と中堅の間に避けがたい溝ができており、結果として党内をまとめるのに苦労しているのが実際のところです。
その結果が民主党のウクライナ問題における弾劾問題の発生です。
民主党支持者にこの騒動がバレないように、弾劾問題を取り上げたというのが真相でしょう。
米大統領選挙の展望
実際、どこをどう見ても、民主党の候補はバイデンになる可能性が高いと思われます。
しかし、トランプ大統領の対抗馬としては、前回のクリントンのようなインパクトはなく、知名度からいえば世論調査の数字がいくら高いとはいえ、無理筋な候補だと個人的な考えになります。
民主党の若手は左派が多く、乱立していますが、バイデンは中道であり、そこで分裂が起こっているのをまとめるために伝家の宝刀である弾劾を持ち出しただけの話です。
誰が出てもスターのいない民主党は勝ち目がないでしょう。
現在のアメリカの経済状況を見れば、トランプ再選が濃厚です。
ブレグジットのゆくえ
以前に解説しましたが、ブレグジットは、次なる市場のターゲットをどこに絞るかの話ができておらず、まだまだ混迷を続けるでしょう。
国民投票で離脱は決まっていますが、そもそもEUに加盟したのは、世界の植民地市場を失い迷走を続けたイギリスが新たな市場としてEUを見つけたから加盟しただけの話です。
いくらジョンソン首相が離脱を表明しようとも、次の市場のターゲットがないので、議会は混乱するだけです。
ジョンソン首相は豪胆に見えますが、それほど豪胆でもなく、結局、イートンからオックスフォードに進学した超のつくエリートには、無難な決断しかできないでしょう。
今年中の解決などないということです。
しかし、時間はわかりませんが、離脱はすると思います。
米中貿易戦争の展望
トランプ大統領にとって、米中貿易戦争こそが一番解決したい問題でしょう。
一方の中国は、知的所有権やら資本の自由化問題は、いずれ解決しなければいけない問題ではありますが、早急に解決する気など毛頭もありません。
トランプ大統領にとっては、大統領選挙に向けて成果が欲しいので焦りまくっているだけの話です。
時間をかければ解決するでしょうが、今年中など絶対無理な話です。
G20後に麻生副総理がコメントしたように、アメリカの思惑は「今年は貿易、来年は選挙」という方針がはっきりしていると思います。
今年中に国民にアピールできるような成果を出したフリをして妥結するというのが一致した見方になります。
ただし、中身は何もありません。
まとめ
どの問題も解決の方向には動いていますが、それが今年中にということにはならないでしょう。
金にとってはこういった事件性、ファンダメンタルズの問題よりも、年後半は経済事情の問題、特に金利問題が値動きの中心になるということです。
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