アメリカがEUに制裁関税

エアバスとボーイング

アメリカが18日にEUに制裁関税をかけました。

今回はその動向を解説していきます。

日本のエアラインなどひと昔前まではほとんどボーイング社製のジェット機だったのが、最近はほとんどエアバス社です。

しかも、最近はほとんどエアバス社製に乗っている記憶しかありません。

わずかに新興国のエアラインになると、先進国の中古を買ったボーイングに乗るのみになります。

これだけ、エアバスのシェアが拡大しているのです。

引用元:スマートニュース(時事通信)

2004年からアメリカとEUとの飛行機を巡る争いが発覚しているのですが、この辺からやはり日本のエアラインはエアバスを採用しているように思われます。

制裁の背景

この背景は、先日、全米航空局から発表されたこのニュースになります。

ボーイングの新型機737MAXめぐり虚偽報告か 株価急落https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191019/k10012139761000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_005

参照元:NHK

このニュースによると、FAAはボーイング社に対して、ボーイング737MAX機の不具合を数ヵ月前から報告するように求めていました。

この不祥事の発表をボーイングのライバルであるエアバスへの制裁を発表する日にぶつけるのは単なる偶然でしょうか?

推測の通り、意図的にやっています。

過去もそういう経緯の事件は何度もありました。

ボーイングの不正が明らかにするのも公正の立場から先延ばしなどにできません。

アメリカは不祥事があった場合、できるだけすみやかに発表するという企業原則があり、不祥事の発表を意図的に隠したり、あとで発表したりすれば、株主代表訴訟の対象にもなりますし、行政処分によって巨額の罰金を払わなければいけません。

要は、ここ数年続いているエアバス社の攻勢に対して、アメリカはWTOに提訴していたのです。

ところが、エアバス社からシェアを奪取するために開発した後継機に致命的な欠陥が見つかりました。

そこでエアバスにシェアを奪われないために、制裁関税をかけたのです。

ほかの品目について

チーズなどの農産品などの場合、アメリカの酪農の保護があります。

たとえば、昨今の米中貿易戦争の結果、大豆価格が低迷し、共和党の票田である農家票の減少が見込まれました。

しかし、中国がアメリカ産大豆の輸入を再開したとたんに大豆は年初来の高値を更新しています。

シカゴ取引所大豆先物価格

ここでは、大豆の価格がいつから上昇したのか、注目して見てほしいのです。

日本のお米と同様、大豆の収穫期は秋です。

しかも、お米よりも遅く10〜11月にかけてです。

その時期をハーベストプレッシャーと言い、収穫によって値段が下がります。

通常は、9月からハーベストプレッシャーによって大豆価格は下がるのです。

ところが今年は、逆に米中貿易摩擦によって、収穫できない時期には大豆の値段が下がり、収穫期になれば大豆の価格は上昇しています。

農家からすれば「トランプさまさま」です。

中国との交渉は実質終わった

アメリカの農家のトランプ支持は安泰

今年の農家は大変なことになるだろうということで、トランプ大統領は農家に補助金の給付を約束しましたが、この価格によって、政府補助は払う必要がなく、この高い値段を出したことによって今年の農家は収入が予想以上になることが確定しました。

農家は先物売りによって、利益を確定できます。

この辺は先物のシステムを理解していなければできませんが、アメリカの農家は日本の農家と違い、上手に先物を利用して農業を営んでいます。

トランプ大統領にとってもアメリカの財政赤字を問題にしていますので、政府補助がなくなるということはそれだけ財政負担が少なり、おまけに農家の得票も期待できるとことなのです。

一石二鳥の万々歳で、これで中国との交渉は実質終わったと言っても過言ではありません。

ファーウェイなどの制裁は、東南アジア、アフリカ諸国がアメリカの制裁を受け入れませんので、実質、無効状態です。

ファーウェイ制裁を受け入れたのは、日本など数ヵ国だけなのです。

酪農家の得票も狙いたい

ニューイングランドの酪農家

大豆は、今回のことは関係がありませんが、同じく農業のチーズなどの乳製品の酪農家の得票も狙いたいという思惑があります。

この辺には9月に利下げを実施したNZなどが乳製品の主な輸出国になりますが、この辺もからんでくるので複雑な問題になります。

しかし、EUからも乳製品の主な輸入先になりますので、これで酪農家の得票も稼ぐことができました。

ついでに畜産農家は、日米交渉で牛肉の関税を下げることに成功しています。

トランプは交渉の天才

民主党の大統領候補のひとりであるバイデン

トランプ大統領は頭がおかしいという人が過半ですが、この交渉術は私から見れば天才にしか見えません。

特に大豆などは、もう時期まで決めてまとめ上げているのです。

正直、これを天才と言わずしてなんというのかと思います。

通常、時期を決めて交渉なんて無理です、相手があることですから。

要するに、民主党の候補がバイデンだろうが、ウォーレンだろうが、関係ないということです。

しかし、勝負師ですので徹底的にバイデンをつぶしにかかっているのです。

ウォーレンが候補になれば本当に楽勝の選挙になります。

とは言えトランプは賞賛に値しない

全日空機を製造しているボーイングの工場

最近はワインも北米産、南米産の品質もかなりよくなってきたという声が、世間一般で上がっています。

しかし、考えてみてください。

アメリカの産業は農業や鉱工業、ITなどが世界1位です。

飛行機などはやはりボーイングが不動の首位になります。

ワインってアメリカの有力な産業でしょうか?

データがありませんが、少なくともフランスでは有力な産業でしょうが、アメリカ産のワインは、経済規模が小さすぎるので聞いたことがありません。

つまり、世界中で貿易戦争を行っているトランプ大統領ですが、アメリカの有望産業でもないのになぜ、ワインを制裁リストに加えているのか意味がさっぱりわからない方も多いでしょう。

なぜ、だと思いますか?

これを聞けば、びっくり仰天するでしょう。

ワインの理由

カルフォルニアのワインの産地であるナパビレッジ

トランプ大統領はホテルのオーナーですので、観光業にまつわるゴルフ場やカジノなどを経営しているのは理解できます。

でも、実はワインもトランプマークで販売しているのです。

自分の会社のワインが売れるために、EUに制裁を課したといわれています。

ボーイング社や農家は、アメリカのためを思ってと言ってもよいでしょう。

でも、ワインは国内に保護すべき規模のワイン業者など存在しなく、自分の会社がワインを売っているからとの理由がもっぱらです。

もちろん、策士であるトランプ大統領ですから、指摘されたときに準備はしているでしょうが、この制裁リストの中のワインは、奇妙奇天烈な感じは拭えません。

今回の制裁は、ボーイングを守るために発動しただけの話であって、特段、驚くようなことはありません。

アメリカへの影響

アメリカ経済は絶好調そのもの

トランプ大統領は天才的と言われています。

この貿易戦争を世界中に仕掛けても、ちっともアメリカ経済は沈み込んでいません。

アメリカが不景気だとか言っている人は、実際にアメリカに行ってみると実感することになりますが、大絶好調です。

景気の良さに沸いています。

今の経済統計の数字は悪く出ますが、実態は違うのです。

貿易量などちっとも減っていない

2019年、オークランド港に入港した貨物船

日本や中国、アメリカなど戦争を行っている国々の貿易量などちっとも減っていません。

むしろ、増えています。

ですから、貿易戦争による不景気なんてウソっぱちです。

ただし、韓国やドイツなどのように貿易依存率の高い国は貿易量の低下によって不景気です。

トランプ大統領はその辺の匙加減をよく心得ていて、中国との関税報復合戦を延期したりするのは、やはり、これ以上関税を上げるとアメリカ国内の景気に悪影響を与えるのは事実だからです。

だから、交渉しているフリをして、関税の引き上げを避けていこうとしています。

つまり、この制裁をモロに受けるのはEUではドイツだけであって、そのほかの諸国は影響を受けません。

だから、どうでもいいのです。

ただ、ドイツ経済は復調の兆しが9月から見えています。

マーケットの影響

ボーイングの不祥事の発表によってNY株式が少しだけ下がっています。

この原因は、明らかにボーイングの問題になります。

なぜ、ボーイングが問題かと言えば、巨大企業ですので、全米に与える影響は甚大です。

特に雇用面については非常に重要な事件になります、

マーケットに関しては、ボーイングにお金を出す場合、今後もっと深刻な業績不振が予想されますので、ボーイング向け貸し出し金利が上昇します。

上記は、アメリカ国債1ヵ月金利です。

前日の折れ線が上昇しているように、ボーイング1社で金利を引き上げてしまいますので、この影響はいかに甚大かわかるでしょう。

ただ、これは、FRBのNY連銀が介入しているからこの程度の上昇で済みました。

FRBは、前回の金利引き下げ時に短期金利が急騰した関係で、公開オペを実施しています。

このオペは、FRB議長のパウエルも追認しました。

すなわち、短期金利の利下げオペレーションは継続するが、長期金利に関しては不透明と講演で述べています。

ただ、そのときは、長期金利と政策金利の乖離が縮小していましたが、現在は再び、乖離が開いていますので、次回のFOMCで利下げをすることが確実になります。

これを受けて金の動向

金はどうなる?

この場合、金は従前から述べているように、金利が下がれば上昇です。

また、FRBの短期金利の介入オペによって市場に資金が供給されていますので、ドルの需給は超過気味です。

ドルの供給過多になっているのですからドル安で、すなわち金が高いと思います。

ボーイングの不振報道や事実はまだ続くでしょう。

そのたびにFRBは、介入を繰り返すでしょうから、ドルの供給はダブつき、さらにドル安が進行します。

この場合のドル円レートは、日本は今回の台風19号によってまだ規模は未確定ですが、財政出動という緩和を実施しますので、円安です。

その規模が日本とアメリカ、どちらが多いかによって円安、円高が決まりますが、現状は日本のほうが多いと思われますので、円安は決定するということです。

つまり、金はドル建てでも円建てでも高いと予想されます。


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