ダイヤモンド史上最強のコントローラー「デビアス」
「A Diamond is Forever ダイヤモンドは永遠に」
20世紀最大のヒットコピーとも評価されるおなじみのデビアスの名コピーです。
このたった一文のコピーによって世界中の女性たちにダイヤモンドのエンゲージリングを夢見させたのが「デビアス De Beers」です。
そしてさらに
「スイートテン・ダイヤモンド」
「婚約指輪は給料3カ月分」
など、消費者心理をくすぐる巧みな広告戦術で「ダイヤモンド=デビアス」という刷り込みに成功しました。
そしてデビアスのもう一つの顔がロスチャイルド、オッペンハイマーらのバックアップのもと、長きにわたりダイヤモンド市場の支配者として君臨してきたという事実です。
現在では様々な状況変化によりデビアスの影響力は弱まりつつも、今なおデビアスがダイヤモンド取引市場のコントローラーであることに変わりはありません。
また新たな市場開拓にも貪欲さを失わず、2018年には合成ダイヤモンドブランド「Lightbox」を立ち上げました。
この記事では今なおダイヤモンド市場に多大な影響力を持つデビアス社についてご紹介します。
デビアスの創業から現在までの歩み
1世紀にわたってダイヤモンド帝国を築いてきたデビアス。
デビアスの歴史=近代ダイヤモンド市場の歴史といっても過言ではありません。
ここではデビアス創業から現在までを追ってみました。
デビアスの歴史はアフリカのダイヤモンド発見と共に始まった!
19世紀の終わりに世界の3つの地域で同時多発的にゴールドラッシュが起きたことをご存知でしょうか?
世界中の男たちが一獲千金を夢見た舞台はアメリカ、オーストラリア、そしてデビアス誕生の地となる南アフリカ共和国のラント地方です。
当時南アフリカ共和国はイギリスの植民地となっており、金を求めて植民地にやってきたイギリス人たちが大勢いました。
そしてこの地でゴールドではなくダイヤモンドに早くから注目し、見事採掘事業で巨万の富を得て首相にまで上り詰めたのがデビアスの創始者となるセシル・ローズです。
実はゴールドラッシュに沸き立つ少し前の1871年には、すでにグリカランド・ウエストの広大なダイヤモンド埋蔵地帯が知られていました。
首尾よくローズはデビアス鉱山(デビアスの名の由来となった農夫兄弟からタダ同然で買い取った)とキンバリー鉱山を手に入れることに成功しました。
そしてダイヤモンドよりも金に目を向ける資本家たちを説得し融資を引き出すことでダイヤモンド採掘に乗り出そうとしていました。
見事ローズはロスチャイルドから資金援助を得て、共同経営者であるチャールズ・ダネル・ラッドとデビアス社を立ち上げました。
デビアスをバックアップしてきたロスチャイルド・オッペンハイマー
デビアス創業期こそ資金援助をしてきたロスチャイルドですが、その後ローズの失脚などによって表舞台から徐々に身を引くことになります。
そして代わりに登場してきたのが、ロスチャイルド家と同じユダヤ一族という強固なつながりを持ち、現在も世界有数のユダヤ財閥「オッペンハイマー一族」です。
1926年に最大株主となったオッペンハイマーが経営権を握ってからは、デビアスを所有する鉱物メジャー「アングロ・アメリカン社(AAC)」の配下に置きオッペンハイマー一族支配体制を敷きました。
強力な資金力を武器にデビアスのダイヤモンド市場における影響力は飛躍的に強まりました。
選ばれし業者にのみダイヤを売り渡す
デビアスでは「サイトホルダー」と呼ばれる厳選された顧客だけに対して、比較的割安でダイヤモンドを販売してきました。
アフリカほか世界の有力ダイヤモンド鉱山の採掘権を独占し、サイト体制によって顧客囲い込みを行うことで、ダイヤモンド市場の取引をほぼ手中に収めることに成功しました。
なにしろ最盛期には世界のダイヤモンド市場の取引高の9割を独占!事実上ダイヤモンド原石の世界市場の支配者とみなされてきました。
新山開発とオッペンハイマー撤退
ダイヤモンドの原石を採算可能な一定量を採掘できる鉱山はごくわずかな地域に限定されてきました。
しかし近年では地質学研究の成果もあってダイヤモンドが産出される鉱脈が世界各国で発見されるようになりました。
すると割安でダイヤを購入できるというデビアスのサイトホルダーであるメリットが感じられなくなり、徐々にデビアスの顧客層は先細りし始めます。
続いてあまりダイヤ産業にうまみを感じられなくなったのか、オッペンハイマーは配下にあるアングロ・アメリカン社にデビアス社を売却することを選択しました。
合成ダイヤブランド「Lightbox」スタート
天然ダイヤモンド事業の再構築をはかる一方、主に若年層の宝飾品への価値観が変化に対応するため「合成ダイヤモンド(ラボグロウンダイヤ、人工ダイヤ、養殖ダイヤ、とも呼ぶ)」を使用した新ブランド「Lightbox」を立ち上げました。
「Lightbox」のコンセプトはあくまで気軽に楽しめるファッション。
そして紛争ダイヤ、過酷な採掘現場など心が痛む現実を想起させない合成ダイヤはまさにエシカルでありサスティナブル。
人々の共感を得る条件を備えた合成ダイヤは、若い世代を中心として好感をもって受け入れられています。
デビアスが所有する鉱山・ダイヤモンド原石の特色
新たな鉱山開発よりも、閉山・売却での話題が多い最近のデビアスですが、過去には多くの伝説が残る鉱山を所有してきました。
ここでは特にその名を知られる鉱山、そして今後が期待できる鉱山をあわせてご紹介します
プレミア(カリナン)鉱山(南アフリカ共和国)
プレミア鉱山は南アフリカ・トランスバール州にあります。
世界最大の3106カラットのカリナン・ダイヤモンドが見つかった鉱山で、2003年開鉱100周年の式典以降カリナン鉱山と呼び名が変わりました。
2008年デビアスはペトラ・ダイヤモンズに売却しました。
ブルーダイヤが産出される貴重な鉱山として名高く、10.10カラットのデビアス・ミレニアム・ブルーダイヤモンドは、特によく知られています。
そして2014年1月には29.6カラットのブルーダイヤモンドが発見されました。
ちなみに呪いのダイヤとして知られる「ホープ ダイヤモンド」もブルーダイヤです。
妖しく光るブルーダイヤには人の運命をも狂わせる不思議な力があるのかもしれません。
ガーチョ・クエ鉱山(カナダ)
2016年採掘がスタートしたカナダのツンドラ地帯にあるノースウェスト準州にあるダイヤモンド鉱山です。
年間平均450万カラットベースという予想を裏切り、2019年現時点では700万カラットに迫る産出量を誇ります。
まさしくデビアスの屋台骨ともいえる鉱山として期待されています。
ベネチア鉱山(南アフリカ共和国)
現在デビアスが南アフリカ共和国で採掘権を所有する最後のダイヤモンド鉱山です。デビアス直轄鉱山の中でも最高クラスの産出量を誇ります。
20世紀初頭にはダイヤモンドが採れることが分かっていましたが、ダイヤモンドを含むキンバーライト鉱脈が発見されたのが1980年。
現在では南アフリカ共和国の年間ダイヤモンド生産量の40%を産出する大鉱山です。
デビアスについてのトピックス!希少ダイヤモンド情報など
ダイヤの巨人デビアスに関するニュースは毎日のように世界中のメディアで発表されています。
稀少ダイヤ原石の発見からハリウッドスターにまつわる話題まで枚挙にいとまがありません。
ここではここ過去10年間のビッグニュース3つを厳選して取り上げました。
「デビアス・ミレニアム・ジュエルズ」コレクション
2000年ミレニアムの年に公開された「デビアス・ミレニアム・ジュエルズ」コレクションは過去類を見ない珠玉のダイヤモンドコレクションでした。
当時デビアス本社があったロンドンで1から12までナンバリングされたダイヤモンドは、すべてがミュージアムピース級の石であり、それらが一堂に揃った様はまさに圧巻!
なかでも「デビアス・ミレニアム・ジュエル4」と呼ばれる10.1カラットのブルーダイヤ「デビアス・ミレニアム・ブルーダイヤモンド」は、その後2010年にサザビーズのオークションで640万ドル、わずか6年後の2016年には約5倍の3180万ドルで落札されました。
次にオークションにかけられるときはいったいどのような金額で落札されるのか?予想もつきません。
海底からダイヤモンド!最先端のダイヤモンド探査船が登場!
ダイヤモンド鉱山はいつか資源が枯渇する日が来ます。
ダイヤモンド採掘企業は、常に有望なダイヤモンド鉱脈を地質学者とともに探査しているのです。
そんな中デビアスはナミビアの海底から世界最大かつ最先端のダイヤモンド探査船を使ってダイヤモンド原石を採掘しています。
海抜約120から140メートルに位置する鉱脈からは、現在年間100万カラット以上ものダイヤモンド原石が産出されています。
ちなみに探査船の名前は「mv SS Nujoma」。価格は1億5,500万ドルで販売されました。
2018年合成ダイヤブランド「Lightbox」スタート
天然ダイヤモンド原石の支配者として君臨してきたデビアスが合成ダイヤブランド「Lightbox」を発表したことは業界内外を驚かせました。
天然ダイヤのように再販価値はほとんどないながらも、1カラットあたり800ドル(0.25カラットごとに200ドル)で販売される完璧なカラーレス、またはピンクやブルーのファンシーカラーのLightboxダイヤモンドは若年層を中心に高評価を持って迎えられています。
もし同じクオリティの天然ダイヤモンドならば、間違いなく10倍もしくは数100倍の金額が必要となるでしょう。
Lightbox始動の原動力となったのが驚異的ともいえる中国の合成ダイヤ製造技術の向上にあります。
あまりにも天然ダイヤに近づきすぎてしまった合成ダイヤを「あくまでもファッション」「ジュエリーではなくアクセサリー」として楽しむことを提案することで、「自然が生んだ本物のダイヤモンド」と認識される天然ダイヤと差別化する意味合いがあるのです。
人生で最も意味のある瞬間、つまりはカップルが誓いを交わす結婚式などの場面にふさわしいのは合成ダイヤではなく天然ダイヤ。
消費者が選ぶエンゲージリングは「合成ではなく天然」のダイヤモンドをであることを承知したうえで、デビアスはLightboxを展開しているのです。
今後のデビアス社の展望を占う!
サイトホルダーからの購入キャンセル(以前ならまずありえなかったことです)が相次いでも、値下げには応じなかったデビアスも2019年11月にはついに平均5%の値下げを敢行しました。
ティファニーほか大手ブランドとの関係改善をはかり、販売・研磨に携わる中間業者の利益を確保し、宝飾業界全体の安定を保つために苦渋の決断を強いられた格好となりました。
折りしも合成ダイヤの一大生産拠点中国では、中国東北部の遼寧省など有望視されるダイヤモンド鉱脈が見つかっています。
また、2019年4月にはデビアスの親会社アングロ・アメリカンがインドの鉱物王アニル・アガルワルから敵対的買収を受けているという報道もありました。
ダイヤモンド市場の盟主デビアスといえども予断を許さない状況が続いています。
【ダイヤモンド採掘企業TOP5徹底解剖!】
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