金の値動きとドルの上下動についての復習
金の値動きにはさまざまな法則があり、その中でも一番重要なのは、金の価格はドルの上下動によって動きやすいということだと今まで何度も申し上げてきました。
要するにドルが高ければドル建ての金の価格は下がりやすく、逆の場合もドルの価格に反比例しているということです。
それでは、まずドルの価格が下がると金の価格が上昇をするメカニズムを改めて説明していきます。
紙切れは政府の信用を以て生を成す
アメリカドルの発行者は、アメリカ政府および中央銀行に当たるFRBですが、ドルの価値が下がるということはアメリカ政府に信用がないということになるのです。
アメリカドルは皆さんも一度は見たことがあると思いますが、その紙切れそのものに価値はありません。
では、皆さんがなぜお金を大事に持つのでしょうか。
アメリカ政府が信用保証している紙切れだから紙幣価値として成り立っているのです。
「この紙切れに1ドルや100ドルの価値がありますよ」とアメリカ政府が認定しているから価値があるのです。
ですからアメリカドルの値段が下がれば、イコールの関係としてアメリカ政府の信用がなくなったことになるので、反対に存在そのものに価値がある金が上昇する、ということになります。
円高および円安と金の値段の関係
日本の場合ですと、日本円の価値が下がれば、円建ての金の価値が上昇することになります。
この辺の説明は非常に難しいのですが、日本円の価値の下落は円高を指します。
この辺を大きく勘違いしている人が多いのですが、円高は円の価値が下がるという意味ですから、数字が減っていくのが円高であって、数字が増えていくのは円安になるです。
本当に日本の価値が減っているのは円高の局面で、ですから円高は国を亡ぼすと言えるのです。
反対に円安によって国が亡ぶと錯覚している人が多いのですが、円安は日本が豊かになっていることになります。
今年の年初は1ドル113円でしたが、3月24日ごろには104円まで円高になり、6月8日現在は109円くらいですので、政府の宣伝通り景気はいいと判断できます。
国が亡びる可能性があると金が急騰する!
現在、トルコ、アルゼンチン、ベネズエラなどの新興国が債務危機に陥っています。
簡単に言えば、「借金漬けでその返済の目途が立たない可能性があるのではないか?」という観測があり、ここに先週からイタリアが加わっているのです。
先の章で解説したように国家が借金を返済できず、そして追加での借金ができなくなったら、政府に信用がなくなるのでその国の通貨は大幅に売られます。
つまりその反対の現象で、その国の通貨建ての金価格は急騰することになるのです。
なぜなら、自分の持っているお金の価値が減っているのに、ただ指をくわえて見ている人は少数で、多くの人は手持ちのお金をほかの何かに変えようとするからです。
その代表格が金であり、最近では仮想通貨も買われる傾向にあります。
仮想通貨が注目されたのは、キプロスという国が破産しそうだと報道されたときに国民が仮想通貨を購入し、インターネット経由で海外に送金して自分の財産を守ろうとしたことがきっかけです。
こういうロジックで国が存亡の危機になると金の価格は上昇するのです。
イタリア経済危機のインパクトは別格
ここ数年、存亡の危機に立った国は先のキプロスなどがあり、中でもギリシャは皆さんの記憶にも新しいことでしょう。
金融関係者やギリシャに投資をしていた人たちは、あの騒動のおかげで眠れない夜を何度過ごしたことでしょうか。
しかし、今回のイタリア危機は別格です。
経済危機が発生した2010年当時、ギリシャは名目GDPで世界第32位程度の経済規模でしたが、イタリアは2017年に同9位で、先進国首脳会議(G7)に参加するほどの経済大国であり、ギリシャとの経済規模での比較ではお話しになりません。
引用元:GDPランキング・国別順位(2010年) – IMF – https://goo.gl/gxrVQR
引用元:世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF)-Global Note-https://goo.gl/GVHeF8
ただしイタリアはG7の中では最下位クラスの経済規模であり(イタリアのG7からの除外も現在議論の俎上に上がってはいますが…)、仮にデフォルトとなった場合のインパクトはギリシャ危機とは比較になりません。
債務の多い国で金の価格はそれほど上昇していない
今、トルコ、アルゼンチン、ブラジル、ベネズエラなど債務の多い国の経済危機が叫ばれていますが、これらの国の経済規模とイタリアの経済規模を比較しても、そのインパクトは雲泥の差となることは皆さんでも想像ができるでしょう。
これらの債務の多い国には、借金返済の目途が立たない可能性もあることにはあるのですが、では実際、国際的に金の価格は上昇をしているのでしょうか。
実は、債務が多い国の通貨が売られ、金利も急騰してはいるのですが、金の価格はそれほど上昇していないのです。
つまりイタリアの人々が本当に国の経済がつぶれると考えて金の販売所に殺到をしているのであれば本当に大問題ですが、騒いでいるのは金融関係者のみで、実際にはそんな事態は起きていません。
おまけにドル建ての金価格は、普段需要がない国々で大規模な需要が起これば当然上昇しますが、相変わらずいつか見たような値段で推移しています。
つまり債務の多い国の人たちは、実際はのんきに普段通りの生活をしていて危機など起きてもいないのに、報道や金融マーケット関係者が騒ぎ立てているだけという状況がよくわかると思います。
要するに新興国危機やイタリア危機が報道されていますが、そんなことが起きるわけもないのに金融関係者や報道関係者だけが右往左往し、「イタリアの債券が急騰した」と騒いでいるだけなのです。
もちろん、イタリア危機が現実のものとなり、ギリシャ危機どころではない被害が出る可能性もゼロとは言いません。
金相場を見ていればそのニュースがフェイクかどうかわかる
国家の信用がなくなれば、その国の通貨の金利が上昇するのは当然です。
なぜなら、「あなたは今まで借金をきっちり返してきた人と、いつになっても返さない人のどちらを信用しますか?」という問題で、通常は借金をきっちり返済している人を信用するからです。
その人にはあまりリスクが存在しないので金利は低く、逆にきっちり返済しない人や借金の残高が多い人には返済できないリスクがあるため金利は高くなります。
イタリアの債券金利は、そのリスクがあるから急騰したのですが、マーケットは常に正しいわけではありません。
その国の債券相場には、流動性を担保するために先物取引が多く存在し、この空売りの手仕舞いなどが増加すると、一時的に金利が急騰する傾向にあるからです。
今回のイタリア国債の急騰は、これが理由だと考えられます。
イタリア危機の可能性は現時点ではない
金の場合も先物取引は行われていますが、こちらは実際の金の販売量に比例することが多く、実際に金の販売量が増えない限り値段は急騰しません。
なぜなら本当に金の価格が急騰した場合は、金の現物を保有している人がその値段が高過ぎることを理由に大量に売ってくるからです。
本当にイタリアがつぶれる可能性があれば、金の保有者は値上がりを見込んで売ってきません。
つまり誰もがつぶれる可能性が現時点ではないと判断しているのに、金融や報道関係者が勝手に騒いでいることこそが、今回の真相になると思います。
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