金の需要サイドのロジック
今まで、金と金利の関係は、金利が低下すれば金価格は上昇するという話をしてきましたが、これは需要サイドの話になります。
今回は供給サイド、つまり産金の話を主にしていきます。

金の需要サイドは、将来の不安や、お金の価値の低下や紙くずになるリスクに備えて金を買うのです。
もっと詳細にいえば、日欧で金利がマイナスサイドになっているのですから、国債などに投資をしても仕方がないという考えが蔓延した結果、金利のつかない金に投資をしても損はないという考えのもとに史上空前の金ブームになっています。
どこかでブームの終焉になるとは思いますが、この金利状態が続く限り、金のブームは終わらないでしょう。
トランプ大統領は日欧のマイナス金利を見て、FRBに対し「金利が高すぎる、下げろ」と恫喝しているのですから、この状態は続くでしょう。
日本も欧州もマイナス金利を止める理由がないので当面止めないでしょう。
金の供給サイドのロジック

金の供給国として有名なのは、オーストラリアでしょう。
中国は世界最大の生産国ですが、その金を輸出しないで国内に貯め込んでいます。
理由は明白で、人民元の国際化を目指すために準備金の増加を目論んでいると思われます。
人民元とは裏付けのない貨幣であり、世界に冠たる経済力を有してはいますが、軍事力は国内を平定するために持っているものであって、決して中国が最高の武力を持っているわけではありません。
アメリカのように、世界で衝突が起こればそこに軍隊を派遣して平定を目指す目的で作られた軍隊ではないということです。
アメリカが他国から攻撃にあった場合には全力で相手を叩くでしょうが、中国の場合は未知数です。
そうした実績がほとんどないに等しいので何とも言えません。
最悪の場合、他国に攻撃されても全く応戦能力がない可能性もあるのです。
そういった部分が通貨の価値にも影響します。
ですから、少なくともアメリカの準備金保有に肩を並べるくらいにならないと、人民元の信用は高まらないと考えていると思います。
ロシアやトルコ、インドなども同じような理由から準備金を積み立てています。
要するに、自国のために金を生産する中国やロシアなどと、オーストラリアのように外貨を稼ぐ国のように大別されるのです。
外貨を稼ぐために金を生産する国の根本的な考え方
今回は、外貨を稼ぐために金を生産している国の考え方を説明していきます。
グローバリズムは金の世界にも浸透しており、金の生産は国際的な企業、つまり多国籍企業によって経営されているのがほとんどです。
しかし、経営方法は今も昔も変わらず、資金の調達方法も1970年代ころから変わっていません。
金鉱山を掘るために銀行からお金を借り、その商品を売り払うと返済するというのは一般の企業と変わりがありません。
しかし、その担保能力を十分にするためにヘッジという行為を行っているのです。
このままでは、このシステムを説明するのにはわかりにくいので、以下に先物の相場表を添付します。

一番下の「Jun’25」月とは、2025年6月に取引の最終期限がくるという意味になります。
注目していただきたいのは、この値段なのですが、これは12月6日のNY市場の大引け価格なのです。
現在の金のスポット価格が1460ドルなのに対して、1576ドルになっていることなのです。
つまり、5年後に最終期限を迎える先物は1576ドルもしてしまっているのです。
金鉱山会社、産金会社は5年後に1576ドルで製品化された金を渡せばいいのですから、ここを売ります。
そして、5年後も金の価格が1460ドルであれば、産金会社は大きく儲けることができるのです。
産金会社の基本的なオペレーション

参考までに、この2025年6月の値段の計算式は以下のようになります。
現在のアメリカの5年債の金利を1.5%と仮定すると、これは年利1.5%という意味ですので、1.5の5乗を計算し、そこに現在の価格1460ドルを掛けるとだいたい1576ドル近辺になるということです。
つまり、産金会社は将来できる金製品を担保に先物を売っているのです。
そこで2025年6月に1460ドルで売り払うことができれば、トロイオンス当たり100ドルが儲かるというわけです。
このときに5年の金利が7.6ドルくらいになりますので、大儲けという構図です。
トロイオンス当たり92ドル儲かるのですから、こんな確実な商売はありません。
ですから、2年後、3年後の上記の価格表を見れば、だいたいこの値段になっているのがわかると思います。
5年後には1576ドルになっているのですから、この価格を2021年には超えてしまった場合は、産金会社は何をするか考えてほしいのです。
1576ドルを越えてしまった場合、その注文を取り消すために先物で買い戻すのです。
つまり、1576ドルから産金会社が買ってくるのですから、余計に上昇に拍車がかかることなになります。
2年後には1512ドル、3年後には1529ドル、4年後には1567ドルで産金会社は売っているのですから、この値段を越えてくれば産金会社は買い戻してくるのです。
すなわち、この値段をマーケットが明確に超えてくると産金会社は買い戻しを掛けてくるので急騰するということなのです。
産金会社は、もう一度売り直しをするために、取りあえず新規に買い、売る場面を探すのです。
以上が産金会社の基本的なオペレーションになります。
貴(き)金属の「き」は危険の「き」!?

一方で、金の価格が急落して、以前の35ドルまで価格が下がると産金会社が見通した場合、どうするかといえば、あらゆる手段を使って全速力で売ってきます。
そうなった場合、金の価格はどうなるかといえば、急落というどころの話ではなく、大暴落、歴史上にはないくらいの暴落になるのです。
貴金属の貴には貴いという意味がありますが、危険の「き」でもあるということです。
すなわち、金は一度下がり始めると止まらないというリスクも承知しておくことは非常に大事なことなのです。
ただ、一番申し上げたいことは、産金会社にとって、金利の低金利というのは儲けを無限にするものであり、これに先高観があれば、かつてのパラジウムのような売り惜しみが出てくる可能性があるのです。
この売り惜しみの傾向はまだありませんが、将来出てくる可能性があります。
基本的には5年先の1580ドル、ないしは区切りのよい1600ドルを越えてくるとおそらく産金会社は売り惜しみをしてくる可能性があります。
この辺は「パラジウム価格の終焉についての考察」で解説しました。
金の大ブームになったときは売り時になると思います。

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